第25話
「お兄ちゃん、今までごめんなさい。」
いきなりの謝罪だった。しかし何か謝られるような事をされた覚えはない。何について何のだろう。
「頭を上げてください。いきなりどうしたんですか、謝罪なんてされて。何か謝られる事をされた覚えなんてありませんが。」
俺は疑問に思って尋ねる。
「ううん、したよ。あの時から今までずっと。私の態度がお兄ちゃんを傷つけ続けた。」
彼女はそう答えた。確かに俺はあの時傷ついたのかもしれない。けれどそれは俺のせいだったのだから仕方ない事だ。
「あれは俺が悪かったんです。だから貴方達が言った事は全てその通りなんです。だから謝られる事をなんてありません。」
俺はそう答える。彼女達が俺を責めたのは正当な権利だったはずだ。
「違う!あれはお兄ちゃんのせいなんかじゃない!お兄ちゃんは何もしてなかった!何も悪いことなんてしてない!」
彼女はそう言った。そんな事はない。俺があの日買い物なんか行かなければ。電話に出ていれば。早く帰っていれば。あんな事は起こらなかった。
「それは違います。俺が父さんに心配させたから。全て俺のせいです。」
俺は否定した。全ては俺のせいなんだから。
「話はそれだけでしょうか。でしたら部屋に戻らさせていただきます。」
久しぶりにあの時のことを思い出して胸が張り裂けそうだ。けれどこれは俺への罰だ。俺なんかのせいで大事な人を亡くさせてしまった義家族からの…
「…お兄ちゃん……ごめんなさい………」
そんな俺の姿を見て彼女がポツリと言葉を漏らす。その謝罪が俺の耳に届く事はなかった。
部屋に戻った俺は暗い気持ちでベットに身を投げ出した。全て俺が悪い。そうわかっていても義家族と思っていた人たちから責められるのはとても辛かった。あの時の記憶が蘇る。
「お前が!お前のせいでお父さんが死んだんだ!」
お兄ちゃんと慕っていてくれた妹からの憎悪の視線。
ごめんね、俺なんかのせいで大切な人を死なせて。
「あなたが電話に出てさえいれば!あなたのせいで!あの人を返して!!」
優しかった母さんが悲しんでいる。ごめんなさい、母さん。俺が代わりに死んでいれば。
「お前みたいな犯罪者は家族なんかじゃない!この人殺し!!」
いつも気にかけてくれていた姉さんが鬼の形相でこちらを睨んでいる。ごめんなさい、俺なんかが家族になって。
「うぅぅ。…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
俺には謝ることしかできない。俺はベットの上でただただ謝罪の言葉だけを漏らしていた。
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