第23話
私はユウに謝ると共に身の潔白を証明しようとした。遭遇した場所がホテルの前だったため、彼に余計に浮気だと思われている可能性があるからである。
彼に私が浮気してなどいなかった事を証明して、彼ともう一度楽しく幸せな時間を取り戻そう。私はそう決意し、彼を私の家へと呼んだ。
放課後になり、私は一足早く家へと帰った。彼には準備が出来たら連絡すると話しておいた。家に帰り部屋を見回す。すると私の部屋の惨状が目の当たりになった。
あの日、彼に浮気だと思われた後家に帰り、部屋中のものにあたったままだった。それでも、彼との思い出の品々だけは綺麗なままだった。それがもう一度彼と素晴らしい日々を過ごせるようになる事を暗示しているような気がして勇気が出た。
部屋を片付けて彼を部屋に呼ぶ。私は服を全て脱ぎ去って彼を待つ。彼が部屋へとやってきた。私が何も着ていなかったためたいそう驚いているようだ。
彼を部屋へと招き入れる。私の体のことどう思っているかなと彼の表情を伺うが、彼は至って冷静なようだ。それに私は酷く傷ついたが、何はともあれ彼との仲直りが先決である。彼に謝罪し、赦してもらうために彼と向き合った。
私は謝罪した。そして彼は私を赦してくれていた。
これは違う。
謝罪とは和解するためのものだ。加害者側が悪い事をした。被害者側はその事で傷ついた。加害者が被害者に謝罪することにより、被害者からの本音をぶつけて糾弾し、罰を与える。それによってわだかまりを解消し、ようやく和解できる。
けれど彼は初めから私を赦していた。例え私が浮気をしていなくても彼には糾弾する権利がある。けれど彼は赦しているため謝罪してそれで終わってしまう。何度謝ってもそこで終わってしまう。だから和解することができない。
そうして時だけが過ぎた。私はことの経緯を説明することにした。
そうして説明しているうちにある違和感に気づく。
(あれ?何で私はそんな行動をしていたの?最初は私を更に好きになってもらいたくて私の価値を高めて好きになってもらおうとしていた。それなのにいつから彼の価値を貶めて相対的に彼の中での価値をあげようとしていたの?)
怖い怖い怖い。私の中でいい知れぬ恐怖が沸き起こる。私はいつからそんなふうになっていたのだろう。
そう感じていると彼が心配して声をかけてきてくれた。
ああ、やっぱり私には彼しかいない。そもそも他人を信じたからいけなかったんだ。私はそう思った。
そうして続きを説明する。そして話終わると彼のことを伺う。すると、彼はもう私を恋愛対象として見ていなかった。私は酷く傷ついた。自然と涙が出てくる。そして気づくと彼はすでにいなかった。彼の言葉を再確認する。
私と彼とでは釣り合わないという。そんな事はない!
誰が何と言おうと私には貴方しかいない!
彼は必要以上に自分の事を貶めるようになってしまった。今回の事で彼の傷が深かった事を改めて思い知る。
けれど私には彼しかいない。今日も傷つけたはずの私なんかの事を心の底から心配してくれていた。
もう誰も信じない。私には彼が全てで彼だけで充分だ。
ならば彼に再び好きになってもらうよう努力しよう。私がつけた傷は私が癒す。他人がつけた傷も私が全て癒す。
彼と私が釣り合わないというのならそう思っているやつは全て排除しよう。
彼が私を高嶺の花だと思っているのなら私が堕ちよう。私が彼を引き上げよう。
そうして再び今度こそ永遠に彼と素晴らしい日々を過ごすんだ。
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