第22話

彼女から聞いた話は俄には信じられないものだった。


「ごめんね、ユウ。貴方を傷つけて。そんなつもりじゃなかったの。ただ貴方に私を見て欲しくて、それだけだったの。」


彼女が嘘をついているようには見えない。けれど彼女が彼とホテルから出てきた所を俺が目撃しているのも事実である。


「話はわかりましたりだからそろそろ服を着てください。」


とりあえず話を聞いたので彼女に服を着るように促す。けれど彼女は再び首を振った。


「私を抱いて、ユウ。私は貴方を決して裏切ってない。私に証明させて。」


彼女はそう言った。なるほど、そのために彼女は脱いでいたのか。俺は冷静に答える。


「それはできません。付き合ってもいない人にそんな事できないですから。それに俺なんかより素敵な人にそういう事はするべきです。」


それとは別に俺はホテルから出てきている所を見ているので俺が好きだった彼女が初めてではなかったらと思うととても怖くて彼女を信じられなかったという理由もある。


「なんで!私は貴方と別れてない!!お願い!私に証明させて!!」


彼女はそう必死に訴えてくるが俺は決して手を出さない。


「俺なんかに贖罪をしなくてももう赦していますから。そんなことしなくても大丈夫ですよ。貴方みたいな人穢せませんから。」


それに彼女のことは綺麗すぎて俺では手が届かない高嶺の花にしか見えない。そのような人を恋愛対象として捉える事はできなかった。それが何よりも傷つけているとは知らずに。


「そんな……………」


彼女はそう言ったきり俯いてしまった。これで話は終わったのだろう。


「今日はありがとうございました。貴重な時間を俺なんかのために使って貰って。もし俺なんかで良ければこれからも話してくれると嬉しいです。」


俺はそう言って彼女の部屋を退室し、自分の家に帰る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る