第20話
放課後になった。俺は荷物をまとめて席を立とうとすると薫さんがやってきた。
「先に帰ってるから連絡したら私の家に来て。」
彼女はそう言って走って帰っていった。なぜわざわざ先に帰る必要があるのだろう。そう思いながらも家路に着いた。
家についてしばらくするとスマホに連絡がきた。
『準備できたから私の家に来て』
俺は彼女の家へ向かった。話があるとのことだがなぜ彼女の家なのだろう。彼女の家に着きインターホンを鳴らすと
『私の部屋まで来て』
と彼女からまた連絡があった。幼馴染ということもあり彼女の部屋は知っている。2階に上がり彼女の部屋をノックする。
「入って。」
彼女が応じたため部屋のドアを開けると絶句する。
いかにもといった感じの女の子らしい部屋の中央で彼女は全裸で立っていた。
暫くして我にかえると慌てて部屋を閉める。
「ごめん。まさか着替え中だとは思わなくて。早く服を着て下さい。」
と謝ると彼女は、
「ううん、着替え中じゃないよ。いいから入ってきて。」
と言った。俺は意味がわからなかったがそれで入る訳にもいかないので
「何で裸なんですか?」
と扉越しに問いかけた。しかし彼女は、
「とりあえず入って」
と質問には答えてくれないので仕方なく部屋に入る事にした。部屋に入るとなおも彼女は裸のままだった。同世代のそれも美少女の裸を見ているのに全く欲情するような事はない。どうやら彼女に裏切られた事は思った以上に深く響いているようだ。
「それで何で裸なんですか?」
と再び問いかける。すると彼女は傷ついた顔をした。
「私の裸に何も感じないの?」
と聞いてきた。
「何か感じたらまずいでしょう。」
と冷静に答える。
「何で?私達恋人同士でしょ!?何もまずいことなんてないじゃない!!」
はて?俺は振られて田中くんと付き合っているのではなかっただろうか。彼女は記憶喪失なんだろうか?
「とりあえず落ち着いて。君は俺を振って田中くんと付き合い始めたのではなかったのですか。混乱しているのですか?」
と尋ねた。それに対して、
「違う!私は別れてない!私は貴方のもので貴方は私のものなの!!」
と脈絡なく返ってきた。はて?話が噛み合わない。会話は混沌を極めそうだ。
「だから落ち着いて下さい。…とりあえず深呼吸して下さい。」
とりあえず彼女を落ち着かせることから始めなければならない。どうやって落ち着かせるのか考えて一瞬ラマーズ法が出てきてしまった。どうやら俺も少なからず混乱しているらしい。
「すぅー、はぁー、すぅー、はぁー、ごめん、ありがとう。」
どうやらようやく落ち着いたらしい。
「良かったです。では服を着て下さい。」
「それはいや。」
落ち着いてなかったのだろうか。もうわからないしそのままにしとこう。
「そうですか。それで話というのは?」
ようやく本題に入れるようだ。今日もご飯を作らなければならないため手短に願いたい。
「貴方を傷つけてしまって本当にごめんなさい。けれど私は浮気なんて決してしてないの!それを信じて欲しくて、証明したくて今日呼んだの!」
とのことだった。そのことに対しては俺はこの目で見ているし、彼女の事を赦してもいるので特に謝罪も説明も必要ないのだが。
「顔をあげて下さい。その事については私が不甲斐なかっただけで別に怒っていませんから。」
と優しく語りかける。しかし彼女はなかなか顔をあげない。俺はどうしようかと困り果てた。
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