第18話

次の日も朝家を出ると同じように薫さんがいた。


「おはようユウ。」


「はい、おはようございます。」


挨拶を返し学校へ向かう。彼女は一瞬辛そうな顔をしたがどうしたのだろう。時々薫さんが何か言いたそうな顔でこちらを見てくる。顔に何かついているのだろうかと思っていると、決心したような表情で話しかけてきた。


「ユウ、今日の放課後時間を下さい。」


彼女はそう言ってきた。


「今ここでできない話ですか?」


と確認すると彼女は頷いた。

今日は文芸部に顔を出して昨日のバイト探しの続きをしようと思っていたが、喫緊ではないので受ける事にした。


「わかりました。」


と伝えると、彼女はホッとした顔をした。そのまま何も話す事なく学校に到着した。教室で彼女と別れる。2日連続で人気者の彼女とモブの俺が一緒に登校したことに好奇と敵意の視線が刺さる。人気者で可愛い彼女の事を狙っている男も多いのだろう。俺は気にする事なく席に着くと勉強を始めた。


昼休みになり俺は購買部に向かおうとした。すると珍しい人から声をかけられた。


「ユウ、きょ「侑士君、一緒にお昼を食べませんか?」


何と同じ文芸部の飯塚穂波さんだった。誰かに話しかけられた気もするが飯塚さんの声に遮られたためわからなかった。彼女は基本的に寡黙で部活以外で話しているところをほとんど見た事がなく、いきなり話しかけてきた事に驚いていた。


「飯塚さん、急にどうしたんですか?」


疑問に思って尋ねると、


「いえ、そういえば同じ文芸部に所属していて仲良くしているのにお昼ご飯を一緒に食べたことなかったなと。」


という返答だった。少し不審に思いながらも納得すると、


「わかりました、購買なので少し待って貰っていいですか。」


と尋ねる。すると、


「いえ、お弁当を持ってきたので大丈夫ですよ。では、行きましょう。」


と手を引かれていく。普段誰とも喋らず、高嶺の花的扱いをされている飯塚さんが一連の行動を起こしたという事で凄く注目されている。俺なんかと関わって悪い評判がたたないといいがと思っていると、


「大丈夫ですよ、同じ部活の友達を誘っただけですから(誤解されても構いませんが)」


と言った。何かボソボソと小声で言っていたが聞き取れなかった。それにしてもなぜ俺が考えている事が分かったのだろうと思っていると、


「クスクス、顔に描いてありますよ。(貴方の考えていることくらい分かりますとも)」


とのことだった。そんなにわかりやすかっただろうか。ふとどこに向かっているのか疑問に思い、尋ねると文芸部の部室とのことだった。鍵は部長が持っているはずだがと思いながらも部室に行くと既に鍵は開いていた。中に入ると他の部員である部長と九条さんがいた。

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