第15話

私は文芸部で部長をしています。

部員は私を含めても立ったの四名で参加も自由。活動日も特に決まっていないため、気が向いたら部室に来るというスタイルです。私は本が好きなので毎日のように部室に通っています。今日は真紀ちゃんと2人です。侑士くんは、生徒会の手伝いで今日は来れないそうです。穂波ちゃんは来るのか来ないのかわかりません。


2人で時々話をしながら本を読んでいると、侑士くんが尋ねて来ました。予算案を集めに来たとのこと。部室に入ってきた侑士くんはどことなく様子がおかしい気がする。そう感じていると、真紀ちゃんもそう感じていたのか、侑士くんに尋ねています。小さな変化でしたが見逃しませんでした。真紀ちゃんが尋ねた時、彼は少し辛そうな顔をしました。


実を言うと私達文芸部のメンバーは中学が一緒で、私が卒業するまでは同じ文芸部に所属していました。メンバーも同じだったので、全員多少彼の事情も知っています。彼が二年生、私が三年生だった時に起きた事故で彼は学校に来なくなってしまいました。私はとても心配でしたが、彼に会うことのないまま卒業してしまいました。なので、今の彼になる前の優しかった彼も知っていますし、幼馴染の北山さんに依存していた時の彼も知っています。


高校に入学してきた彼がまた文芸部に入ってくれた時はとても喜びました。しかし、彼は最低限の会話しかしませんでした。私はそれを少し寂しく思いながらも彼が立ち直ってくれてよかったと温かく見守っていました。少しずつ会話は増えていきましたが、距離が昔のように距離が縮まることはありませんでした。


そんな風に過ごしていましたが、今日やってきた彼は様子がおかしかったです。話を聞くと、幼馴染の北山さんに浮気をされたとのこと。相手の田中くんと共に彼女にも怒りが湧きます。なぜ彼にばかり悲しいことが起こるのでしょう。


彼の話を聞きながらそのことばかり頭に浮かびました。


彼が去った後、急遽穂波ちゃんを部室に招集しました。

少し待っていると彼女が部室にやってきました。


「話は聞いていましたか?」


真紀ちゃんが確認をとります。どうやら彼との会話の最中穂波ちゃんとの電話を繋いでいたようです。


「ええ、聞いていました。彼が居場所を無くしたならば私達で彼の居場所を作りましょう。」


私達は全員彼のことが好きでした。彼のことを思って幼馴染の北山さんに遠慮していましたが、裏切ったなら話は別。彼女には退場してもらうとしましょう。

私達で彼の居場所を作りましょう。彼を悪意から遠ざけましょう。私達の間で話はついています。彼に昔救って貰ったように今度は私達が彼を救いましょう。


私は相談される事により得た情報を、

真紀ちゃんは社長令嬢としての権力を、

穂波ちゃんは彼の周りの観察を、


彼の敵はどんな手を使っても排除します。


怒った女は怖いですよ?

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