第14話
昨日あったことにについて部長達に話し終えた。誰かに話すことが出来て気持ちが少し軽くなった気がした。俺なんかの話を聞いてもらった部長達には感謝しかない。
「話を聞いてもらってありがとうございます。お陰で少し気が軽くなりました。」
感謝の言葉を述べる。
「ううん、こっちこそ話してくれてありがとう。辛かったね。」
部長が慰めてくれた。かつて同じ事をしてくれた薫の影が重なる。また彼女も同じように裏切るのだろうか。
それで良いのかもと思ってしまう。誰かに裏切られて、誰かに慰められ、またその人に裏切られる。それは、俺なんかが一時でも誰かに必要とされている事にならないだろうか。誰かの庇護欲を満たしているのかもしれない。誰かの母性を満たしているのかもしれない。誰かの偽善のために役立てられているのかもしれない。父が亡くなった時から愛情を求めていたが、それは存在しない事を知った。純粋な優しさというものが信じられなくなった今となっては、誰かの打算によって俺の存在する理由があるのなら、誰からも愛されない無価値の俺が誰かによって価値を見出してもらえるならそれで良いと思った。
九条さんは何事かブツブツと呟いていたがうまく聞き取れなかった。
「九条さん、どうしたんですか?」
すると、彼女はハッとしたように、
「いえ、何もありませんわ。お話ししていただきありがとうございます。」
少し様子がおかしかった気もするが、俺なんかが気にするようなことではないだろう。
「私達に出来る事ならなんでもするから何かあったら相談してね。」
そう言われた俺は、彼女達の優しさがどういう種類のものであれ、俺なんかを気にかけてくれている間は、俺に求められている役割を果たそうと思う。
「はい、また何かありましたらよろしくお願いします。」
そう言ってこの話を終わらせて、それから彼女達と雑談に興じた。
「それではそろそろ失礼します、今日はありがとうございました。」
麗華さんから連絡が来たため、俺は部室を後にする事にした。向こうも運動部の予算案を集め終わったらしい。
そう言って席を立ち、生徒会室に向かう事にした。
俺が去った後、部室でどのような話が行われていたのかなど俺は知る由も無かった。
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