第13話
俺は部活棟にむかった。この学校では部室が集まっている部活棟があり、文化系、体育系で分かれている。そのうちの文化部棟にいき、それぞれの部室を回る。文化系はゆるい部活が多く、部室には人が1人か2人ずつくらいしかいなかった。予算案を受け取っていき、最後に俺が所属している文芸部にやってきた。
「こんにちは、予算案をいただきにきました。」
挨拶をしながら部室の中を覗くと、中には部長である、柴田雪さん、そして後輩である九条真紀さんがいた。部長である柴田雪さんはふんわりとしたボブカットにメガネをしたした優しいお姉さん風の人だ。聞き上手でよく他の部員から相談されている。九条真紀さんはいかにもお嬢様といった感じで本当にどこかの会社の社長令嬢なのだそうだ。これにもう1人、同級生の飯塚穂波さんを加えたのが今の文芸部の部員全員だ。
「あら侑士くん、いらっしゃい。今日は生徒会のお仕事?」
「侑士先輩こんにちは。お茶を用意しますわね。」
部長と九条さんは本から顔を上げると挨拶を返してきた。
「はい、今日は予算案をいただきにきました。」
九条さんはお茶を入れに席を立った。お茶を入れるのにこだわりがあるらしく家でも自分で入れているそうだ。
「ご苦労様。これが予算案よ。よろしくね。」
部長から予算案を受け取り雑談をしていると、お茶を3人分入れた九条さんが戻ってきた。
「侑士先輩、何かありましたか?少しお疲れのご様子ですが。」
お茶を配りながら九条さんが尋ねてきた。誰にも気づかれなかったのに(家族が気づいていることは知らない)よくわかったなと思いながらも、
「いえ、大丈夫ですよ。お茶ありがとうございます。」
と答えておいた。これでこの話は終わりだろうと思っていたが、
「侑士くん、我慢していても辛いだけだよ、私達に話してみない?」
と部長まで話に乗っかってきた。でもと話すのを渋っていると、
「話すことで楽になる事もあるんですよ。私達では力になれるか分かりませんがあなたが困っていたら助けたいと思うのは当然です。」
と九条さんが優しく諭してきた。ここまで言ってもらって厚意を無下にするのも悪いと思い、
「では、聞いてもらって良いですか。ただし内密にお願いします。」
と話を聞いてもらう事にした。誰かに頼って迷惑をかける事は悪いと思い、誰にも話さなかったが、俺はどこかで誰かに吐き出したかったのかもしれない。
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