第10話
昼休みになると私はユウの元へと向かった。今日の朝早くに起きてお弁当を作ってきたからだ。彼はいつも購買でパンなどを食べている為、早く声をかけないと教室を、出て行ってしまう。
彼を誘うと、予想通りと言うわけか断ってきた。彼からの敬語に自分がしてしまった事を後悔しても仕切れない。けれどどうしても一緒に食べたかった為、無理を言って一緒に食べてもらえる事になった。
中庭に着くと、多くのカップルの姿が目についた。もしかしたら私達もカップルに見えるのかなと少し頭をよぎるが、今の私にそのような事を考える資格はない。お弁当を食べようとするけれど彼はまだ遠慮しているようだ。前まではそのようなこともなかったのにと、全ての行動に距離をかんじてしまう。
気を取り直して彼にお弁当を食べて貰うとおいしいと言ってくれた。昔から彼に食べて欲しくて料理は頑張ってきた為それなりに美味しくできているはずだ。
私は嬉しさに溢れながら弁当を口に運ぶが思わず顔をしかめてしまった。
朝味見した時はなんともなかったのに!
そんなことよりも今は彼にこんなものを食べさせて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。彼に急いで謝り、他のものを食べて貰うようにお願いするが、彼は残すなどもったいないと言って全て食べてしまった。
これを機にしっかりと謝って本音で話そうとしていたのにアクシデントのせいで謝り損ねてしまった。それにまずいご飯をユウに食べさせてしまって申し訳なかった。でもまずくてもせっかく作ってくれたのだからと全部食べてくれるあたりユウはやっぱり優しいな…
彼とトイレで別れ教室に戻った。授業が始まると彼のことがいつから好きだったのか考え始めた。
もういつからかわからない時から私はユウのことが好きだったし、ユウに好きになってもらえるように様々な努力をしてきた。勉強やスポーツ、料理などが例だ。
あの頃はただ彼を思って努力できていたのにいつのまにかその想いは変わっていた。好きなのは変わらないが彼を独り占めしたいと思ってしまった。他の人に優しくしていると彼が取られてしまうのではないかと不安と嫉妬に駆られた。その結果彼を私以外見ないようにしようとしてこのざまである。
今は彼に嫌われているだろうけれど彼を諦めることなんて私には出来ない。それにただ赦してもらうだけでもダメだ。好きになってもらわなければならない。私は彼の友人になりたいのではない。もう一度恋人になりたいのだから。その為にこれからの行動について考える事にした。
放課後、バスケ部の練習があったが休んでユウと一緒に帰ろうと誘う事にした。しかし、田中に話しかけられてしまった。次いつ遊びに行こうなどとくだらい話をされている間に彼はどこかへ行ってしまった。田中を睨みつけると笑いながら何処かへといってしまった。
もしかしてわかってて邪魔されたのだろうか。と疑いかけるがたまたまだろうと結論づけて彼を追いかける為駆け足で下校の道を辿ったが家に着くまでに追いつくことが出来なかった。そのため諦めて家へ入る事にした。
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