第9話
トイレに入ると運が悪い事に田中と鉢合わせた。
田中はクラスの仲間達と一緒だったのでいつもの好青年ぶりを見せていた。なので話しかけてくることもないだろうと思い、気にすることなく入っていくと、向こうも出てきた為すれ違うこととなった。
「お前に薫はふさわしくないんだよ、負け犬が。」
とすれ違いざまに吐き捨てて行った。
それからは何事もなく、放課後を迎えた。晩御飯の準備をしなければいけない為早めに帰らなければならないが、それまでの時間を使ってバイト探しをしようと考えていると、義姉である麗華からLI○Eが届いた。
『生徒会の仕事があるので手伝いなさい。』
義姉である伊藤麗華はこの学校の生徒会長を務めている。容姿端麗で成績優秀、スポーツ万能のスーパーガールである。そんな彼女の手伝いで俺はよく生徒会の仕事を手伝っていた。
お世話になっている以上俺なんかが手伝える事があるなら手伝わなければならない。バイト探しは後日に回す事にし、俺は生徒会室に向かった。
生徒会室に向かうと、すでに義姉が1番奥の席に座っていた。生徒会室には奥に向かってコの字型の机が置かれている。1番奥の1人席が生徒会長の席という訳だ。奥で1人書類を片手に眺めている姿はその容姿も相まってとても絵になっていた。
「遅くなりました。」
と彼女に向かって伝えると、
「来てくれてありがとう。萌乃も来るから少し待て。」
と言われたので1番手前の席に腰掛け待つ事にした。
それからさほど間を空けず、
「お待たせしました〜」
とほんわかした声と共に待ち人がやってきた。
松本萌乃さん。生徒会の副会長を務めている人だ。おっとりしたとてもマイペースな人なので、一見仕事などできないようなに見えるが、優秀で仕事なども素早く的確だ。仕事だけはどうやら勝手が違うらしい。どう違うかは俺にはよくわからない。そんな彼女は俺の姿を認識すると、
「あら、弟君。いらっしゃい〜」
と声をかけてくれた。それに対し俺も
「こんにちは、副会長。今日はよろしくお願いします。」
と返した。それに彼女はムッとして、
「もう、萌乃さんって呼んでって言ってるじゃない!
それかお姉さんでもいいのよ?」
とからかってきた。どこからか殺気を感じた気もしたが、
「いえ、揶揄わないで下さい。」
と返した。すると麗華さんが会話に割り込んできて、
「おい、萌乃、こいつの姉は私なのだが?」
と不機嫌に言ってきた。すると彼女は悪びれることもなく、
「麗ちゃんの弟なら私の弟と同じじゃない。私弟欲しかったんだよね~」
と謎理論をかましてきた。麗華さんはこめかみをぴくぴくさせている。第一、萌乃さん弟いるでしょ。
「ま、まぁ、もういい。それより今日の仕事だが、部活の予算分配についてだ。まずは各部を回って予算案をもらってきてほしい。」
とのことだった。突っ込まずにスルーする事にしたらしい。そこで俺は文化部、萌乃さんと麗華さんは数が多い運動部を回る事にし、それぞれの場所に向かって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます