第8話

昼休み、いつものようにご飯を買いに行こうと購買部に向かおうとすると、薫が話しかけてきた。


「ユウ、お昼ご飯一緒に食べない?お弁当作ってきたの。」


と言ってきたが、もちろん彼氏の田中に悪いので


「いえ、遠慮します。彼氏に悪いですし、俺と一緒にいると北山さんまで変な目で見られますよ。」


と返してと返し、教室を出ようとするが腕を掴まれた。


「お願い、今日だけでいいの。一緒に食べて下さい。」


と泣きそうな顔でお願いされたので、俺なんかがこれ以上彼女の頼みを断るのも忍びないので、


「では、俺なんかで良ければ御相伴に預からせていただきます。」と返し、一緒に昼食を食べることとなった。


2人で中庭に向かうと、すでに沢山の人で溢れていた。この学校は比較的自由な校風をとっており、学校も広く新しい。昼休み、放課後を問わず、屋上、中庭は常に開放されている。

その中から、木でちょうど木陰になっている芝生の上に、薫が持ってきたレジャーシートを敷き、その上に腰を下ろす。この辺りはカップルが多い場所ではあるが、レジャーシートはあまり広くなく、近い距離で座る事になるが、決して俺なんかがお近づきになれる相手ではないため特に意識することなく会話を再開する。


「それで俺なんかのためにお弁当を作ってきてくれたとのことですが、本当にいただいてもいいんでしょうか?」


と確認すると、


「もちろん、ユウのためだけに作ってきたのだから。」


と薫が答えた。


振って落ち込んでいるだろう俺なんかを慰めるためにそんなことまでしてくれる彼女の優しさに申し訳なく思いながら


「ではいただきます。」


と答え、ありがたくいただくことにした。

彼女は料理上手な為期待しながら食べたがあまり美味しくはなかった。それでも自分の為に作ってくれた為、俺なんかがまずいと言ってはダメだろうと思い、


「とてもおいしいです。ありがとうございます。」


と、感謝を述べた。

彼女は緊張した顔をしながら俺が食べるのを見守っていたが俺がおいしいと感謝の言葉を伝えると嬉しそうな顔をした。そして自分の分を一口食べて次には顔をしかめさせた。コロコロ表情が変わるなと思っていると、


「ユウ、そっちのも食べさせて」


と、俺にくれた分も食べると泣きそうな表情になり、


「な、何でこんな味に…今まで失敗したことなかったのに。」


とショックを受けていた。


「ご、ごめんねユウ。こんなの食べさせて。捨ててくるから今から購買で食べ物買ってきて食べて。」


と申し訳なさそうに伝えてきた。


彼女が作ってくれたものを捨てる方が申し訳なかったので


「いえ、いただきます。北山さんが俺なんかのために作ってくれたものなのですから全ていただかないと申し訳ないです。」


と答えると再び食事を再開した。

この答えに彼女は何故か酷く傷ついた表情をしていたが何も言って来なかった。


そうして昼休みの時間はすぎ、教室に戻る途中で、俺はトイレによるために別れた。

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