第5話

玄関を開けて家を出るといつものように薫が家の前にいた。………うん?

思わず固まってしまったが見間違いではないようだ。


「お、おはようユウ」


「はい、おはようございます。北山さん。それはそうとなぜそこにおられるのでしょうか?」


素朴に疑問に思った為尋ねると彼女は酷く傷ついた顔をして、


「何でそんなことを言うの?ユウ。私はあなたの恋人なのよ。」


ととても不可解なことを言ってきたので


「何をおっしゃられているのでしょう?あなたの恋人は田中君ではないのですか。」


「違う!私の恋人は貴方だけ!私は貴方しか好きにならないし、愛さない!!」


この人は何を言っているのだろう。好き合っているから田中君とホテルであんなこともしてきたのに。俺とはしたこともなかったのだからやはり俺は愛されてなどいなかったのだろう。


「なぜ嘘をつくのかはわかりませんがとりあえず学校に行きましょう。遅刻してしまいます。」


俺はそう言っていつもの道を普段は合わせていたペースでは無く、自分のスピードで歩きだした。


学校に着くまでのあいだ、彼女は必死に弁解していたが、好きだの愛してるだの言われても、嘘だと知っているので、話し半分に聞いていた。


そうこうしているうちに、学校に着いたが、俺と彼女が一緒に登校してきたのを知って生徒達はとても驚いていた。それもそのはずだろう。片やぼっちで影も薄いモブである俺と、学校で明るく美人で人気者である彼女とでは違和感しかない組み合わせである。好奇の視線を無視して自分の席に着くと、彼女も諦めたのか自分の席に向かった。別れるタイミングを身図っていたのか、彼女の元には人が殺到していた。その様子を視界の端に捉えながら何故自分はこんなに愛されないのかぼんやりと考えていた。

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