霊となって

最近おかあさんもおとうさんもお話を聞いてくれません。

いつも笑顔で私のお話しを聞いてくれていたのに、

最近はいつも泣いています。

なぜかいつも私の名前を呼ぶのにごめんねとしかいいません。


「私が守ってあげられなくてごめんね・・・!ほんとに・・・!!!」

「なんで、何でこの子なんだ、ごめん、俺も守れなくてごめんな?ぅぅうっ!!!」


おかしいです。私は怒ってないのに、

いつも優しいおかあさんもおとうさんも大好きなのに、

どうして謝るんですか?


あと、なぜかもう一人の私がいるんです。

白い箱にはいってずっと寝ているけれど、少し面白いです。

私がもう一人いるって、面白いことですよね?


でも悲しいこともあります。

おかあさんがご飯を作ってくれません。

いつも一緒に食べてくれていたのに、どうしてでしょうか?


でも大丈夫です!私はなぜか最近壁をすり抜けることができるのです!

これで私の好きなご飯もお菓子も食べることができます!

あれれ、食べ物もスルスル抜けていきます。


ピンポンがなっています、誰でしょうか?

あ!友達が来てくれました!一緒に遊んでくれるのでしょうか?

あれ?友達も泣いています。友達のおかあさんは悲しそうな顔。


友達に話しかけてみました。

あれれ、友達も私のことを無視します。とっても悲しいです。

私は嫌われてしまったのでしょうか?


「うわぁぁぁあああん!!!」

「あんた、あの子大好きだったもんねぇ。今はたくさん泣きなさい・・・」

「泣いてくれるなんて、あの子も天国で嬉しがってますよ・・・」


友達は私のことが大好きなようです!

嫌われていなくて安心しました。

友達は帰るそうです。また来てね。


でも「てんごく」って何でしょうか。

私はずっと家にいます、「てんごく」にはいきません。

ずっとおかあさんとおとうさんの所にいます!


「私、この子のお葬式が終わったら死ぬわ・・・あの子を一人にさせたくないの」

「俺もだ、一緒に会いに行こう」

「もちろん。きっと天国で待ってくれているよ」


え!大変です、おかあさんもおとうさんも死んでしまいます!

死なないでください!私は悲しいです!

生きていてください!また一緒におでかけしましょう!


でもおかしいです。何で死ぬって言ったんですか?

私に会いに行くって言っていました。

もしかして私は死んでいるのですか?


もし死んでいるなら、もうおかあさんとおとうさんは返事してくれないのですか?

でもおかあさんとおとうさんは死なないでほしいです。

もう二人でお話ができなくなっちゃうから。


死なないでください。お願いします

かみさま、おかあさんとおとうさんを死なせないでください

お願いします。おねがいだから


「死なないで、二人とも」

「え・・・!?ね、ねぇあなた、聞こえた?今の声!あの子の声だわ!」

「あ、あぁ!聞こえた、聞こえたさ!もしかして、死んでないんじゃないか!?」


おかあさん!おとうさん!

私の声が聞こえましたか?またお話ができますね!

おかあさん!おとうさん!・・・また答えてくれなくなりました


「・・・やっぱり、死んでる・・・」

「うぅっ・・・!で、でも聞こえたわよね!あの子の声が!」

「あぁ、聞こえた!もしかしてだけど、あの子は霊となって私たちに話しかけてくれたんじゃないか?」

「そうかもしれないわ・・・ありがとうね」


おかあさんもおとうさんも少しだけ元気になりました!

とっても嬉しいです。あれ、だれかが来ました。

お迎えらしいです、お迎えってなんでしょうか?


おかあさんとおとうさんと少しだけ離れるらしいです。

少し悲しいですが、おかあさんとおとうさんが元気に生きてくれるならいいです。

ちゃんとあとで会えるってこの人たちは言っていますから。


また後でね。おかあさん、おとうさん。




「私が出る幕はありませんでしたか。親子の絆によって助けられたとは、とてもロマンチックですねえ。ですが、交通事故で亡くなってしまったあの女の子はとても不憫ですが・・・きっと、しばらく天国で楽しく過ごしていればお父さんお母さんに会えますよ。少しの辛抱です」

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