ヒトの本能

今日も学校だ

いつも面白くはないけどあたしのいるグループに必死にしがみつくために

流行りのファッションも流行りの踊りも歌もドラマも一通り見てくる

宿題もしないと怒られちゃうから、頑張って終わらせる

寝る時間も惜しんで終わらないやるべきことをずっとやっている


別にあたしはファッションはある程度いい感じにまとめてればいいと思ってるし

ドラマよりもアニメの方が好き、歌もノリだけがいいような全く意味のない菓子の曲は好きじゃないしそれに合わせて踊るダンスもそんなに好きじゃない

だけど、全部見てから学校に行く、面白くもないのに


学校につくとさっさと支度を済ませてグループに混ざる

今日は何の話をしているのだろう


「ねぇねぇ!昨日起こったあの事件見た?やばくない!ホントに最近の世の中怖いよね~」

「それな!マジやばかったよね?あんまやらないようにしないとな~、ね!そう思うでしょ?」

「確かにー!」


まずい分からない

昨日ニュースは見てないし何のことか分からない

適当にごまかして乗り切らなきゃ


「どう思う?」

「え?あ、えっと最近は怖いよね~、あはは・・・」

「それさっき言ったって~!ホントはどう思ってるの?」

「え、えーっと・・・まぁほんとだよ」

「え~なんかノリ悪い~、やだなー」

「えっ!い、いや~そんなことないよー!」


まずい


「もういいや~あっち行こー」

「え、まって!」


何で?そんなにまずいこと言った?

そんなに嫌だった?今の回答


「はぁ・・・」

「元気出して!そういう時もあるよ、気を強く保って!」

「ありがとう・・・なんかごめんね」

「大丈夫、あの子たちは気分屋だから。私は何にも思ってないから安心してね?」

「うん!ありがとう」


やっぱり優しいなぁ

優しい子が自分のグループに居てよかった

あ、もう少しで授業始まっちゃう

トイレ行かないとな

ん?何か聞こえるけど・・・


「ねぇ、あいつだるくない?」

「それな~マジでノリ悪いし?」

「やばいよねーニュースぐらい見とけっての」

「ニュース見る暇もないんですかねーwww」

「忙しいようでwww」


・・・何で

何でそんなこと言ってるの?

友達じゃなかったの?ねぇ


「何でそんなこと言ってるの?」

「え?あ・・・」

「いやいや~まあそんなこと言ってないけど?」

「あんたの勘違いでしょ、思い違いも甚だしいよ」

「う、うわぁぁぁああ!」


何で!あんなこと言ってるの!

友達だと思ってたのに!あたしがばかみたい!

友達だと思ってたからこそ面白くもないものを眠る時間を削ってまで勉強したのに

なんなの?ひどいよ、こんなことを聞いたらあいつらはなんて言うんだろうな

きっとメンヘラ女キモイとか言ってくるんでしょ、そんなのいやだ!


もう嫌だよ!


「え、ど、どうしたの?なんでそんな泣いて、あぁっ・・・」

「どいて!うわぁぁああ!」


何で気遣ってくれたあの子まで倒しながら進んでいるんだろう

あたしは何してるんだろう、嘘みたいなこと言われたからって気遣ってくれた人に当たってあの子を押し退けて走って!

もうここにはいてはいけない

あのひどい奴らもあの優しい子もあたしを必要とはしてない!


「何で、何でよぉ・・・うぅっ、ふぅうえぇぇ!」


こんな事で泣くな!人生の一部だと思えばいい!

そう思っているはずなのに涙があふれて止まらない

悔しい、あいつらにも自分にも悔しい!


あたしはここにいる資格はないんじゃないか

生きている意味はないんじゃないか

そういう思いがぬぐい切れない

こんな気持ちが悔しい!価値のある人間になりたい!

平凡な幸せを感じていたい!


「はぁはぁはぁ・・・ふぅ、ぁああぁ、はぁ。もういいかな・・・」


こんなこと考えてたけど

頭ではいろいろ言ってこれからのこと、今の気持ちの整理をしてたはずだけど

いや、整理なんてできてなかったな、それよりも

体は一人でに屋上に向かってた。屋上の縁を見つめてスタスタと歩いていく


そう、わかってたんだ

体が死にたがってる

あんなこと言われただけで傷つくのかとか頭では言ってたけど

傷つくよ、傷つくに決まってるじゃん


「だから、終わらせよう」

「死にますか?」


ん?誰だろう、先生の声じゃないな

まぁ何でもいいやどうせ死ぬあたしには関係のないことだ


「嫌気がさしてますか?友達だと思ってたあの人たちの裏切りとも呼べる行為に、まだ友達として接してくれる人に自分の心のもやもやを何も言わずにぶつけてしまったことに」

「・・・そうだよ。そうだよ!?あたしは自分のことがもう嫌いだよ!自分に好きじゃないことを続けて、友達に罵られるぐらい弱くて、その憤りを勝手に優しくしてくれる人に当てて・・・ほんっとにカス、弱いよね?ばかばかしいよね?あなたのこと全然知らないのにあなたにも心の内をぶちまけてる。こんなダルい女嫌でしょ?こういうところも含めてさ、グループに必死にくっついて切り離されたとたん慌てふためいて死のうとするって・・・寄生虫より立ち悪い!弱い自分が嫌い!こんな支離滅裂なこと言ってるのも!」

「いいえ、あなたは別に悪くないです。一つお話をしましょう。人は生存本能というものがあります。生存本能は生物にとって切っても切れない関係で、人はもとから弱かったため、グループになっててきと戦っていました。グループを離れることによって不安になったり取り乱したりするのは、人である証です。弱さがあるということは他人を頼れるということです。他人に頼れず孤独にいきることは難しい。貴方はれっきとした人間です」

「でも、でも!優しいあの子にまで当たったのは?あたしが弱かったから!頼れもせずに自分の感情を思いのままにぶつけてしまった!」

「あなたは、自分が特別に凄くて何でもできる。間違いを犯すなど言語道断!と思って生きているのですか?ならば、感情を思いのままにぶつけるのはいけないことでしょう。ですが、あなたは弱さがある。完璧でないからこそ、間違いを犯す。重要なのは間違いを犯したことではなく、間違いを正すことではないですか?」

「・・・」


確かにそうだ

自分の罪から逃げていた

確かに悪口を言われたのは悲しかったけど、あの子にぶつかったのを謝らずに終わらせようとしたことは違う

ちゃんと謝って、死ぬのを考えるのは後でもいい


「人が罪を犯すのはある意味宿命。宿命を打ち破ることができるのは何でもできる主人公だけ、ならば打ち破らずに寄り添いましょう。人は弱いのだから」

「・・・そうですね」


まずは謝ろう

そこからだ


「良い関係になることができるといいですね、では」


全力ダッシュで戻る

謝りに行くために

いた、あたしの心からの謝罪


「さっきは本当にごめん!気が立っててあなたにまで当たっちゃった!本当にごめん!二度としないので、まだ仲良くさせてもらえますか?」

「え・・・ふふっ、面白いね!いいに決まってるじゃん!ちゃんと謝ってくれたんだから!」

「あ・・・ありがとう!」


自分を偽らずに、心から向き合った方が

人と仲良くできそうだ

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