第39話
基地長室を出て、基地の外を目指すミヤモト。
しかし、外へ出る前にオーガと遭遇した。敵はグレートオーガが三体だ。
(もうここまで入ってきているとは……)
やはり数が多すぎたのか。侵入は止められなかったらしい。
(タテオカ君たちが無事だといいのですが……)
ミヤモトの姿が掻き消えた。
そして通路の端まで一瞬にして移動すると、その間にいたオーガたちを皆殺しにした。
三体のグレートオーガが崩れ落ちる。
ミヤモトは外に出るのをやめ、まずは基地の中を探してオーガたちを排除することにした。
ここには非戦闘員もいるのだ。
タテオカたちも心配だが、既にオーガたちの侵入を許した以上無理はしないだろう。
なんとか生き延びていると信じたい。
また、新しい敵が現れた。今度はハイオーガが四体。
ミヤモトはそのうちの一体に肉薄すると、魔力を纏った剣で斬りつける。
斬られたハイオーガが崩れ落ちた。
続けてさらにもう一体のハイオーガを攻撃する。こちらも一撃で葬り去った。
ここでハイオーガが一体、ミヤモトに殴りかかってきた。
ミヤモトはそれを半身になって躱すと、カウンターでそのハイオーガに斬撃を浴びせる。
残りは最後の一体だ。
仲間が一瞬で倒され動揺したのか、動きが止まっていたそのハイオーガをミヤモトはまたしても一撃で倒した。
さらに基地の中を探すべく走り出す。
そして食堂へ辿り着くと――。
「…………」
遺体がいくつか、転がっていた。酷い状態だった。とても遺族には見せられないほどに。
彼らは非戦闘員だ。魔物に対抗する力など持ち合わせていない。
そんな彼らが高ランクの魔物に襲われればどうなるか。それを今、まざまざと見せつけられている。
(せめて地下シェルターが使えていたら、こんなことには……)
ミヤモトは強く唇を噛み締める。
地下シェルターの入り口は、普段は決して発見できないようになっている。
ある特定のスイッチを押したときにだけ、入り口が現れ、そこに入れるようになる。
そうすることで、万が一魔物が基地に侵入してきても、避難した人間を守ることができるのだ。
(入口がどこにあるかは、知っているのに……)
今までに何度か避難訓練を行ったことがある。
だからミヤモトや職員たちは、地下シェルターの入り口がどこにあるのか知っていた。
だがスイッチが使えない以上、入り口には辿り着けない。
もちろんミヤモトほどの力があれば、無理矢理入り口をこじ開けることはできたかもしれない。
だがそれでは入り口が敵に知られてしまい、避難する意味がなくなってしまう。
「「ガアアアアアアアッ!!!!」」
二体のオーガ種が吠える。
緑色の肌に、ハイオーガより一回り大きな体躯。オーガジェネラルだった。
この二体が職員たちを殺したのだろう。
(せめて彼らの仇を……)
二体のオーガジェネラルが同時に殴りかかってくる。
(壁よ)
床を突き破って土の壁が現れた。オーガジェネラルの拳はそれによって阻まれ、ミヤモトには届かない。
ミヤモトは地面を蹴って移動し、オーガジェネラルの背後に回る。
オーガジェネラルはそれに気づいて振り返るも、ミヤモトは既に距離を詰めていた。
オーガジェネラル一体に狙いを定めて、ミヤモトは斬撃を浴びせる。
(このランクになると、さすがに一撃で仕留めるのは無理ですね)
もう一体のオーガジェネラルが攻撃してきたため、ミヤモトは下がって距離をとった。
自分が攻撃を受けたオーガジェネラルを見ても、まだまだ動けそうだ。
傷は与えているが、浅い。致命傷には程遠かった。
だが、だからといってミヤモトの圧倒的優位は動かない。
(槍よ)
オーガジェネラルの足元の床から、土の槍が飛び出した。
攻撃が広範囲にわたっていたため避けることはできず、二体の体にいくつもの槍が突き刺さる。
とはいえ、さすがにランク8の魔物。それでも傷は浅く、大してダメージは受けていないようだった。
二体のオーガジェネラルは、すぐに槍から逃れると安全な地面へと着地する。
だが、それもミヤモトにとっては計算のうち。
彼は初めからこの着地する瞬間を狙っていたのだ。
ミヤモトは先ほど剣で一撃喰らわせたオーガジェネラルに狙いを定める。
そして魔力を纏わせた剣を一閃した。
そこでもう一体のオーガジェネラルが殴りかかってきたので、剣で拳を受け止める。
「ギャアアアアアアア!!!」
剣の刃が拳に食い込み、悲鳴を上げるオーガジェネラル。
ミヤモトはそのジェネラルの背後に魔法で壁を生み出すと、魔力を纏った足で蹴り飛ばしそこに叩きつける。
そして――。
(終わりです)
地面が隆起し、極太の槍がそのオーガジェネラルの腹を貫いた。
「ガアアアアアアア!!!」
まだ生き残っているもう一体のオーガジェネラルが殴りかかってくる。
ミヤモトはそれを躱すと、カウンターで斬撃を浴びせた。
膝をつくオーガジェネラル。
そこに、先ほどもう一体に喰らわせたのと同じ魔法でトドメを刺した。
「…………」
ミヤモトは職員たちの遺体を一瞥した。
(仇はとりました。どうか安らかに……)
本当はこんなところに放置などしたくない。きちんと彼らを弔ってあげたい。
だが、この基地の中にまだ生存者がいて、自分に助けを求めているかもしれない。
非情なようだが、ここはそちらを優先するべきだ。
しかし――。
基地内をくまなく探し回った結果、ミヤモトは職員全員を遺体で発見した。
まさか一人も助けられないとは。
基地内にミヤモトが倒せない魔物はいなかった。なのにどうして。
もし違うルートで探していたら、結果は違っていたのだろうか。
いや違う。ただ単に、運が悪かったのだ。今回はあまりにも、不幸な偶然が重なりすぎた。
「…………」
タテオカやクガヤマは無事だろうか。楽観視はできないが、今は生きていると信じたい。
(外に出て、彼らを探しましょう。そしてその後に、E-7の基地へ行かなければ)
とにかく連盟に、ここで起こったことについて知らせなければならない。
ミヤモトは走る。
(あれだけ倒したというのに、まだ生きているオーガいたとは……)
だがもう中に助けるべき人間はいない。ミヤモトは移動に邪魔なオーガ以外、すべてを無視して基地の外を目指した。
出口に繋がる通路にいたオーガたちを皆殺しにして、外へ出る。
そこにいたのは、視界いっぱいに広がるオーガの群れ。タテオカやクガヤマの姿は見当たらなかった。
(槍よ)
ミヤモトは地面を隆起させ、オーガたちを串刺しにする。
攻撃を喰らったオーガたちが動き出す様子はない。どうやらすべて死んだようだ。
(タテオカ君たちは一体、どこにいるんでしょう?)
そのときだった。
「っ!?」
不意に目の前に巨大な影が見えた次の瞬間、ミヤモトは吹き飛ばされていた。
腹部に激しい痛みを感じる。
(この魔物が……)
なんとか着地して体勢を整えたミヤモトが見たのは、オレンジ色の肌をした巨大なオーガだった。
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