第12話 鬼ごっこ②

「アリスが来てない!!」


突然、僕の目の前にレオナルドが走ってきた。残り5分で鬼ごっこは始まろうとしていた。アリスが居ないと、作戦が……。


僕達の作戦は、アリスの時を止める魔術で鬼の動きを止めて、その間にみんなで逃げる。そんな作戦だった。アリスが居ないと……。


急いで街の中を探したが、どこにも居ない。何かあったのかな……。不安が頭の中を過ぎる。


どこかで誰かに捕まっているかもしれない。僕は、この国の警察署に向かった。この国の警察官はトップクラスの成績を残している。


空を飛び、迷子や無くしたものをすぐに見つける事が出来る能力を持つモンスターが勤めている。


警察署に入り、アリスが居なくなった事を話した。


「分かりました。すぐに向かいます」


彼は、人間が鷹にモンスター化した姿であり、人の言葉を話す事が出来る。名前は、ジャッキー。人間だった頃、お父さんと手を組み、この国を守った最強の勇者だ。


鷹の能力を活かし、空を飛び、国中を探し回った。


1分後、ジャッキーは暗い顔をして、戻ってきた。


「レオン……今すぐ逃げろ。この国から逃げ出せ」


何を言っているか分からなかった。僕はこの国が大好きだ。逃げ出すはずがない。


「嫌だ。家族と一緒にずっとここで暮ら……」


パチン


翼でジャッキーが僕の顔にビンタをしてきた。


「ディアボロス帝国が来ている。ついにこの国を支配しに来たか……」


「え……」


僕は、絶望した。ディアボロス帝国の存在は、昔から知っていた。ディアボロス帝国は、この世界全体を支配しようと企んでいる軍団である。その帝国のボスは、1つの国を一瞬で滅ぼす程の力を持っている事。それ以外は、よく知らない。


この国は、ディアボロス帝国の本拠地より距離が離れており、支配されることは無いだろう。そんな事を誰もが考えていた。


そんな事も知らずに、国の中央部では、鬼ごっこが始まろうとしていた。


「これからモンスター鬼ごっこを開始する」


アナウンスが流れ、みんながスタートラインに着いた。


「レオンもアリスも居ない。あれ?お父さんも居ないなあ……。まあ良いや。俺が頑張れば良い話だ……」


そこにレオナルドの姿があった。


「3.2.1.0」


みんなが一斉に逃げ出す中、レオナルドも完璧なスタートを切った。





一方、入口付近では、ディアボロス帝国の幹部とお父さんとジャッキーが手を組んで戦っていた。


「ここで食い止めないと……」


「お前と組むのは、久しぶりだな。アレックス」


「ああ……」




――アレックス。異世界で伝説の勇者と呼ばれている。レベルは脅威の120。現実世界では、国王となりメスのモンスターを大量に呼び込み、ハーレムを築き上げた伝説が残っている。

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