第3話 相棒

――今、僕は大ピンチを迎えている。森の奥に宝箱を発見し、開けようとした時、左目に眼帯を付けた少女に見つかってしまった。少女は魔法を使い、僕を麻痺させた。


「部外者は排除する……」


そう言いながら僕にとどめを刺そうとしている。異世界転生してまだ5時間も経ってないのに、、僕は死んでしまうのかよ……。諦めかけていた。





10分前、貰った鍵を体内に埋め込み、宝箱を探すよりも森からの脱出を優先した。まだ行ってない方に兎に角進むしかない。


進み続けると次第に道が狭くなっていく。出口かもしれない……。ディアボロス帝国の支配下から抜け出せる!!


そう思いながら先に進むと、道が無くなり、行き止まりになっていた。目の前に僕と同じぐらいの大きさの宝箱があった。


森の出口は見つけられなかったけど、宝箱を開ければ、パワーアップ出来るかもしれない。これで、モンスターに襲われても何とかなるかも……。宝箱に近づき、体内から鍵を出そうとした時、


「サンダーショック!!」


女の人の声が聞こえ、僕は後ろを振り返った。1人の少女が立っていた。彼女の左目には眼帯がしてあり、手に杖のようなものがあった。そこから稲妻のようなものが一直線に僕の方に伸びてきた。


もしかして、、ハルカと同じ魔法使いか……。僕に稲妻は直撃し、体が痺れた。


「部外者は排除する」


そう言いながら、炎の技と電気の技を交互に打ってくる。体の痺れで避けることもできない。全ての攻撃を喰らい、僕の体力は1になった。


視界が歪み始め、真っ白に見え始める。僕はもう死ぬのかよ……。


まだスライムの特徴を使いこなせてないのに。僕には、まだ沢山の未練があった。転生してそれらが出来ると思っていたのに。


「ここから消えろ!!ライトニングキャノン」


少女の杖にエネルギーが溜まり始める。僕は諦めかけた。こんな森の中で助けてくれる人なんて居ない。


「アリス、もう止めろ!!」


1人の男が僕の目の前に現れた。少女から放たれた稲妻のエネルギーが溜まったビームを剣で切り裂いた。男が着ていた服に見覚えがあった。青い服に緑のズボン。




昔、異世界ゲームの中の図鑑で読んだ事があった。


――勇者とは、勇気のある者のこと。英雄と同一視され、誰もが恐れる困難に立ち向かい偉業を成し遂げた者、または成し遂げようとしている者。


誰もが恐れる困難に立ち向かう。彼は勇者の服を着ていた。


「黙れ!!部外者は消えろ!!」


「アリス、元に戻ってくれ!!」


勇者は大きな剣を両手で持ち、少女の方に向かった。少女が繰り出す魔法を次々に剣で切り裂いて行った。


「アリス……ごめん」


そう言って、勇者は少女を真っ二つに切ってしまった。少女は光の粒子となり、空に登って行った。ハルカが倒したオオカミと同じだ……。


勇者は膝から崩れ落ち、泣き始めた。勇者も人間なんだと感じた。


「アリス……戻ってきてくれ」


さっきからずっと言っているアリスという名。もしかしたら少女と勇者には繋がりがあったのかな……。


その間に宝箱を鍵を使って開けた。そこには、謎の石と薬が入っていた。僕は、その薬を飲んだ。


その瞬間、「レベルアップ」「レベルアップ」……と頭の中で永遠に聞こえ始めた。止まることのないレベルアップ。もしかして、、この薬は、経験値を貰える薬だったのかもしれない。


1分後、漸く止まった。今のレベルは60。


「新しい技を覚えました」


①ぶつかる

②分身

③毒を吐く new!!

④擬態化 new!!

⑤???

⑥???


こんなに技があったのか……。レベル60まで来ると大体のモンスターは倒せるかもしれない。異世界で無双も夢じゃない。


宝箱に入っていたこの石は何なんだろうか。


「この石って……」


勇者が宝箱の中から石を取り出して、眺めていた。もう目に涙は無かった。


「この石は蘇生の石。この石が3つ集まった時、死んだ人がもう1度蘇るの。アリスを取り戻せるかもしれない」


「アリスと勇者の関係性って何なの?」と聞こうとしたが、うまく言葉にならなかった。でも、勇者は言葉を理解していた。


「僕は、勇者のレオン。アリスは僕の妹だ。家出して、森の中でバイオレンスウイルスに感染し、凶暴化を起こしてしまった。凶暴化したモンスターは早く倒さないと周りも感染してしまうんだ。だから倒すしか方法が無かったんだ……」


あのオオカミもバイオレンスウイルスに感染していたのかもしれない……。


「この石はどこにあるの?」


「森の中にあると聞いた事があるが、どこにあるかはっきりと分からない。ねえ、突然だけど、僕の相棒になってくれないか?」


「相棒?」


「レベル60もあれば、大体のモンスターは倒せるし、僕と君は何だか合いそうな気がするんだよ」


勇者のレベルは40。僕がピンチの時は助けてくれるかもしれない。アリスを助けるために。


「分かりました」


僕とレオンは、蘇生の石を3つ集めることを目標に掲げ、森の中を歩き始めた。勇者とスライム。共に助け合い、ピンチをチャンスに変えていく。



「僕には目標があるんだ」


突然、レオンは目標を語り始めた。


「僕の妹は今、死んでしまい、兄は他の国に居て、お父さんはディアボロス帝国に捕まっていて、、お母さんにはまだ会ったことも無いんだ。だから、みんなに会いたい。会って家族写真を撮りたいんだ」


家族か……。前世で僕は、お父さんに捨てられた。お父さんは僕を息子だなんて思っていなかった。僕は、家族に会いたくない。そう思いながらも、レオンの家族を全員会わせるため……。僕は、前世で助ける事ができなかったハルカを守るため……。僕はレオンの相棒となった。

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