第2話 再会
―目が覚めると、僕は森の中に居た。
何故、森の中に居るのか?ここに居る理由を必死に思い出そうとした。春香に病院の屋上に呼び出されて、春香と一緒に自殺した……。もしかして、、僕死んじゃったのかな?じゃあこれは幽霊の姿なのかもしれない。試しに体を動かしてみようとしたが、動かなかった。何で……。もしかして、、金縛りかな。でも、なんだかいつもと少し体が違う気がする。
更に、目線の低さに違和感を感じた。幼稚園児ぐらいの身長になっている。
そう思い、自分の体を確認すると、背は小さく、青い体でプニプニしている。
「えっ!?」
状況が飲み込めなかった。これって、、スライム!?スライムといえば、ゲームの中の最弱のモンスターとして描かれる事が多い。スライムになっちゃったのかな……。最近、小説で異世界転生の話を読んだ事があったが、、まさか本当に異世界転生するなんて……。
何をすれば良いかも分からない。でも、進まないと話が始まらないと思い、慣れない体を上下に動かしながら前に進んだ。
出口の見えない森がずっと続いている。もしかしたらこの森には出口が無いのかもしれない。一生、この森を彷徨い歩き、勇者に見つかり殺されるかもしれない。せっかく異世界転生出来たのに、、死んだら意味が無いじゃねぇか……。
そう思いながら、森の中を1人で歩き始めた。
「あれは!?」
目の前に僕と同じぐらいの大きさの宝箱を見つけた。ゲームの中では、基本、宝箱の中に戦いで役立つ物が入っている事が多い。もしかしたら武器や装備が入っているかもしれない。
宝箱の蓋を開けようと、蓋の上に乗り、思いっきり引いたが、開かなかった。この宝箱には鍵が必要だった。
「鍵なんて……何処にあるんだよ」
僕は、宝箱を諦め、先に進んだ。誰とも出会わないまま、少しずつ前に進んでいく。
「キャーー」
森の中に響き渡る悲鳴。急いで、悲鳴のする方に向かった。そこには、1匹のオオカミが女の人に噛みつこうとしていた。オオカミの頭上に表示されたレベルは10。レベル10は、ゲームの世界で言うと、最初のボスぐらいのレベルか……。勝てるかもしれない。そう思い、自分のレベルを確認しようとした。
頭の中で「今のレベルは1」と言う声が聞こえ始めた。
異世界転生したらチート能力を持っているとか、レベル100になってたとかそう言う夢のような話を期待していたのに……。
何処にでも居そうなレベル1の最弱のスライム。これでは、レベル10のオオカミに勝てるはずがない。女の人は肩を噛まれ、血が出ていた。倒れ込み、
「助けて……誰か」
何度も叫んでいた。目の前には、僕しかいない。僕が助けないと、彼女は死ぬかもしれない。
もう行くしかない!!僕の体はオオカミに向かっていた。スライムでオオカミに勝つ方法なんて分からない。でも、少しでも隙を作り、彼女が逃げる事が出来れば……それだけで十分だ。
「オオカミー!!僕が相手だ……」
どうやって攻撃すれば良いんだ?突進するだけだとダメージを与える事は難しい。どうすれば……。
「スライムって最強だと思わない?口と鼻を押さえれば、呼吸困難に出来るんだよ」
前世で友達が言った言葉を思い出した。これだ!!
スライムは粘着性が高い。口と鼻を抑える事が出来れば、呼吸困難に出来るかもしれない。オオカミの顔に飛び乗り、鼻と口を押さえた。オオカミは必死に抵抗しながら、鋭い爪で僕の体を真っ二つに分解した。
切られた……。もう死んだのかな。そう思っていたが、分解した体が再び1つになり、復活した。
もしかしてスライムって不死身!?
「プロミネンステンペスト!!」
突然、倒れていた彼女が立ち上がり、杖をオオカミに向けて声を上げた。
杖が少しずつ赤くなっていき、真っ赤に燃える炎が回転しながらオオカミに向かって放たれた。オオカミはその炎から逃げようとしていた。
僕がオオカミの足と地面をスライムで拘束し、オオカミに炎は命中した。オオカミは倒れ込み、光の粒子となって空に消えていった。
「助けてくれてありがとう。私はハルカ。さっき森の中で別のオオカミを倒したから、魔術が足りてなくて……。時間が欲しかったの。あなたが助けてくれたから、なんとか魔術を回復する事が出来たの。あなたが居なかったら、私は死んでたかもしれない。本当にありがとう。あなたは命の恩人よ」
ハルカの顔を間近で見て、僕は気づいた。ハルカは、前世で僕と一緒に死んだ春香だと……。でも、僕はスライム。僕の事なんて気づいてないよね。
「お礼にこれ、あげるよ」
そう言って、ハルカは鍵をくれた。
「それは宝箱の鍵だよ。宝箱の中には、強くなれる道具が沢山入ってるから……。ぜひ使ってみて!!でも、この森は危ないから早く安全な村に行った方が良いよ」
「何で危険なの?」と声に出そうとしたが、うまく言葉が話さずに、意味の分からない言葉を喋っていた。モンスターは人間の言葉を聞くとはできるが、話すことは出来ない。
でも、僕の顔を見て、ハルカは話したかった言葉を理解してくれた。
「ここが危険な理由を知りたいの?」
僕は頷いた。
「ここはディアボロス帝国の支配下なの。だから色んな実験が毎日行われてるの……。早く逃げた方が良いよ」
プルルルル プルルルル
ハルカの携帯電話が鳴った。
「じゃあ、、そろそろ行くね。ありがとう。バイバイ」
ディアボロス帝国の支配下。何か怖い言葉だな。そう思いながら、前に進み始めた。でも、何処が出口か分からない。どうすれば良いの!?
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