#3 難波環は快活である
ヴィー!! ヴィー!! ヴィー!!
FCC大阪支部の施設内にけたたましい警報の音が鳴り響いている。
「場所どこ!!」
『北摂地域より通報! カテゴリー3と判断して出動要請!』
「北摂ってまたちょっと遠いな! 山の中とかちゃうやろな!」
環は叫びながらも一番近い連絡通路に向かう。
隊が全員揃わなければ出撃はできないが、難波隊は全員大阪支部待機の日だったので、すぐに全員揃うだろう。
『フール細胞反応確認! 周辺マップに反映済み!』
「何番が一番近い!?」
『16番です』
「ほな1番から16番! 繋げといて!」
『はい、全員揃い次第飛び込んでください』
「りょ!!」
難波環は快活である。
若くしてFCC大阪支部の難波隊を率い、治安維持に努めている。
笑顔を絶やさず、人当たりはよく、口が悪い(というか口調が荒い)。
大阪支部の人間としては珍しく関西弁である。
『
と、隊の仲間から連絡が入る。
「オッケー! 理子ちゃんそのまま入って! うちBから入るから!」
言いながら環の手はもう連絡通路の扉を開けていた。
『森永、Aです』
さらに連絡が入る。環の顔に笑顔が広がる。
「よっしゃ揃った! 行くで難波隊! 1番目指して走れー!!」
『了解!』
『了解です』
FCCが発足してから40数年。フール、とりわけカテゴリー3の恐ろしさは多くの人類が認識していた。
カテゴリー3が発現した地点から周囲1㎞は避難区域となり、シェルターに避難する勧告がなされる。公共交通機関も止まり、多くの建物や地下鉄がシェルターとしての機能を発揮する。避難区域は強力なジャミング装置が起動し、FCC隊員の戦闘行為は記録として残されない。一般に公開されるのはごく一部の限られた部分だけである。
FCC支部からは多くの専用地下道が伸びており、様々な場所へ通じている。現在環たちが現場へ急行するために使っているのもこの地下道である。
「16番から出て、うちらはここ向かうで」
「現場は学校?」
「みたいやね」
「あーじゃあ学生かあ、ちょっとやだなあ」
「理子ちゃんはここな、あんま高い建物ないっぽいから、しっかり射線通るとこ探してな」
「やだなあやだなあ」
「めいちゃんはうちと一緒に、避難最優先で、それから戦闘な」
「わかった」
「訓練通り、基本的には四肢狙って。最後はうちがぶん殴るから」
カテゴリー3のフールが発現した場合、FCC支部から基本的には2隊以上が派遣される。
「他、どこが出るの?」
「たぶん
「そっか、それは安心」
「あかんで、うちらでちゃんと制圧するからな!」
ライバル意識や縄張り意識を持つ隊員もいる。県境でフールが発現したときにはさらに大変である。
「もう着くよ」
森永のぼそっとした一言で、二人の顔つきが変わる。
「ほな、さっきの感じでよろしく!」
「いつも通り臨機応変で行こうね」
「はい」
そして3人は16番出口から飛び出した。
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