第288話 侵略④

「ま、まさかこんな…」

「奴隷として身請けされたとは思えない程に快適な生活を保証して頂けるとは…」

「仕事も、母国に居た頃とは全く違う至って真っ当なものばかり…」

「神の宿り木商会…スタトリンとサンデル王国の守護神様が設立されたとは聞いていたが、こんなにも…」




「ああ…ここでは、人として真っ当に生きていくことができる…」

「元々は敵であるはずの我らを、こんなにも温かく迎え入れてくれるとは…」

「我らを受け入れ、新たな出発の場を与えて下さった、偉大なる守護神様…」

「その守護神様の多大すぎる恩に報いる為にも」

「どのような形でもいい…我らは必ずこの商会に貢献させて頂かなくては!!」




「ティラニー帝国は現在、皇族が筆頭となって…」

「帝国に関する情報であれば、いくらでもお聞きください!!」

「ティラニー帝国の皇族及び貴族共の圧政に苦しむ民達の為にも」

「内情を知る我らが再び帝国へのスパイとして潜入し」

「少しでも神の宿り木商会に有利な情報を持ち帰ります!!」

「それと同時に、スタトリンもしくはサンデル王国への移民を望む民を」

「水面下で少しずつでもこちら側に移民させて参ります!!」




先陣となるティラニー帝国の刺客を制圧し、逆に味方として受け入れることに成功した神の宿り木商会。


それを境に、ティラニー帝国から送られてくる刺客達を次々に無力化し、神の宿り木商会の一員として奴隷としての身請けをしていっている。


弱き事、そして負けは即死を意味する国風のティラニー帝国から来た刺客達は、神の宿り木商会の温かな人情と、奴隷の身で得られるものとは思えない程の快適な生活環境にただただ驚き、戸惑うばかり。


しかしそれも、スタトリンとサンデル王国の守護神としてほぼ全ての民から崇拝、敬愛されているリンの人柄に触れれば…

その神々しさと温かさに、刺客達の誰もが心が勝手に、忠誠を誓うべき主だと認めてしまう。


最初の刺客が制圧されてからわずか数日で、すでに百人を超える程の刺客が神の宿り木商会預かりの奴隷となり…

奴隷となった元刺客達は、偉大なる守護神となるリンの為にと、諜報部隊でティラニー帝国の調査部隊を編成することとなり、一部がスパイとして再び海を渡ってティラニー帝国に戻り、ティラニー帝国の皇族に嘘の情報を流して中枢の混乱を狙いつつ、内情調査と皇族や貴族の圧政に苦しむ民の救出もかって出てくれている。


ここは、幸せと希望に満ち溢れている。

情に厚く、多くの種族が手を取り合い、笑顔で暮らすことができている。

ここならば、自分はもちろん祖国に残した家族達も幸せになれる。


元刺客達は、胸にその思いと希望を込め…

己が使命を全うすべく、新たなスタートを切り、動き始めている。




~~~~




「ティラニー帝国からの刺客ですが…この数日でサンデル王国のシーサイド領に侵入してきたのが百を超えました」

「ですが、そのいずれも制圧」

「最初の時のように我が神の宿り木商会の奴隷として身請けをし」

「その全てが神の宿り木商会に所属できることを心から喜び」

「諜報部隊の方でティラニー帝国の調査部隊を編成し、一部はあえてティラニー帝国に戻り、嘘の情報を展開して中枢の混乱を誘発するのと」

「ティラニー帝国の内情調査及び、国に残した家族を国から逃亡させ、我が商会に奴隷として身請けしてもらおうと、積極的に動いてくれています」


ティラニー帝国から送られてくる刺客を次々と制圧し、同時に神の宿り木商会の奴隷として身請けすることで寝返らせ、敵の戦力を削ぐと同時に逆スパイとして潜り込ませることができるようになり…

有利に事を運ぶことができていることを、リンの専属秘書達が報告してくる。


「ふむ…誰もがティラニー帝国では、人として扱われることすらなかったのじゃろうな…」

「ええ…だからこそ我が商会の奴隷に対しての待遇が、彼らからすれば信じられないことばかりだと驚いており…誰もが守護神となるリンちゃんを心から崇拝するようになりました」

「それは当然なのじゃ。リンは誰よりも、他の幸せと喜びを願ってその神のごとき力を使い続けておるからのう…神の宿り木商会の関係者達が日々、どれ程に幸せと喜びに満ち溢れた笑顔を浮かべながら、楽しそうに仕事をしていることか…」

「その通りです。リンちゃんがいてくれるところに不幸があるはずなど、ありません。リンちゃんの偉大なる守護神としてのお力、御心のおかげで、私達は日々を生きることができているのですから」


ティラニー帝国の刺客達が悉く寝返り、神の宿り木商会の関係者としてその力をふるってくれることも、まさにリンの守護神としての力と心のおかげだと、シェリルもエイレーンも信じ切っている。


リンの力は、他に幸せと喜びをもたらし、その生活を護ってくれるものだと、微塵も疑うことなく信じ切っている。


そして、そのリンの自宅となる神殿に、リンに仕える為に住みこませてもらえているのは、誰もが最上の幸福と信じて疑うことなく過ごしている。


「リン様♡」

「リン様♡」

「リン様♡」


ティラニー帝国の侵略に対する防衛の為に、スタトリンの女王となるシェリル、神の宿り木商会の会頭補佐となるエイレーン、そしてリンの専属秘書達が揃って、リンの自宅の中で対策会議を行なっているその横では…

リンに仕えることを最上の喜びとし、己の最上の愛を捧げているメイド達が、この日の仕事を終えて一息ついていたリンを寄ってたかって抱きしめ、思うがままに可愛がっている。


「あ、は、はな……」

「だめです♡」

「リン様には、私達メイドの抑えきれない程の愛を受け取って頂かなくては♡」

「わたし達は、リン様を心から崇拝してますが、同時に心から愛しております♡」

「愛するリン様をぎゅ~っとさせて頂けて、本当に幸せです♡」

「リン様がお作り下さり、日々の加護を頂いているもの全て、あたし達はもちろん他の人もとてもありがたく思っております♡」

「ティラニー帝国などと言う…誰かから奪うしか能のない野蛮な盗賊国家などに、侵略など、させませんわ♡」

「リン様♡リン様の国も商会も、全力でわたし達商会の関係者がお護り致します♡」

「ですからリン様は、私達の愛を受け取ってくださいね♡」


メイド長のローザを始めとするメイド達の誰もが、リンを抱きしめ…

その幼く可愛らしい顔にキスしたり、頭を撫でたりしながら思う存分に可愛がっている。


それだけで、メイド達の心にどうしようもない程の幸せが溢れてくる。

リンが愛おしくて愛おしくて、たまらなくなってしまう。


恥じらいにその幼い頬を染め、弱弱しくいやいやをするリンが可愛すぎてたまらず、メイド達はますますリンを愛そうと可愛がってしまう。


「リン様…私達の全ては、リン様のものです♡」

「リン様のお傍で、リン様にお仕えさせて頂ける、リン様のメイドと言う役割を頂けたこと」

「わたし達には最高の栄誉であり、最上の幸せです♡」

「もしリン様がお望みでしたら、リン様の妾としてあたし達をお好きなようにお使いください♡」

「わたし達の身も心も、リン様にお捧げできるのでしたら、それ以上の幸せなんてございません♡」

「リン様♡」

「リン様♡」


すでにリンを最愛の伴侶として、病的な程の愛を抱いており…

その生涯をリンに仕えることを心に誓っているメイド達。


リンへの愛が溢れて止まらない。

リンの笑顔を見るだけで、心に愛が溢れて止まらない。

リンを抱きしめて可愛がるだけで、心に幸せが溢れて止まらない。


メイド達はただただひたすらに、リンを可愛がって愛してしまう。




~~~~




「おい、聞いたか?」

「ああ!」

「なんでも、ティラニー帝国とか言う国が、このスタトリンとサンデル王国を狙って戦争吹っ掛けてくるらしいな!」

「ったく、ふざけんじゃないわよ!」

「あの尊くて、可愛くて、神々しいリン様が作ってくださった、こんなにも住み心地のいい国を侵略だなんて!」


そして、スタトリンの第一領地にある、神の宿り木商会系列の冒険者ギルドの本部。


そこを拠点とする冒険者達にも、ティラニー帝国がスタトリンとサンデル王国を狙っていると言う情報が展開されており、そのことに冒険者達は憤っている。


「ねえ!今度は防衛の依頼、出してくれるわよね?」

「あたし達、このスタトリンはもちろん」

「サンデル王国のどこでも防衛の依頼、受けるから!」

「そうだぜ!」

「前の戦争の時なんかはおれ達出番がなかったからよ!」

「今回こそは、オレ達にもこの素晴らしい国、護らせてくれよ!」


先の、かつてのサンデル王国第二王妃・第一王子の派閥の王族貴族がスタトリンを侵略しようと目論み、戦争を仕掛けてきた出来事。


あの時は、受付嬢の気を利かせた言葉でみんなが納得してくれていたものの…

それでも、やはり消化不良な感は否めなかった者がほとんどだった。


リンがスタトリンを独立させてくれたおかげで、冒険者にとても優しい国ができた。

リンがスタトリンを独立させてくれたおかげで、冒険者の自分に『ありがとう』と言ってもらえることがとても増えた。

リンがスタトリンを独立させてくれたおかげで、冒険者の生活水準が大きく向上することとなった。


スタトリンはまさに、冒険者の為の国。

そんな国を作り、日々平和を保ちつつも発展を続けてくれる、名実ともに守護神となるリン。


そのリンはかつて、放っておけば大陸の滅亡は確実だった程の大氾濫にたった一人で立ち向かい…

全ての魔物を討伐するばかりでなく、エンシェントドラゴンとなるシェリルをも退け、最終的には味方となるようにしてくれた。


そのおかげで、シェリルは守護神となるリンに仕える形で、スタトリンの女王として誰もが喜ぶ国政に従事してくれている。


さらには、神の宿り木商会と言う、この世界で最高峰と言っても過言ではない程の大商会を設立し…

すでにスタトリンとサンデル王国の経済を大きく向上させ、空前の好景気を作り出し、なお発展を続けている。


その神の宿り木商会系列となる冒険者ギルドを新たに設立してくれたおかげで、冒険者の自分達はこんなにも充実した日々を送ることができるようになった。


そのリンを、リンが作ってくれたものを護る為ならば、この命、いくらでも賭けてやる。

今度は自分達が、リンを護る番だ。


冒険者は誰もが、その思いを胸に秘め…

ティラニー帝国との戦争に自ら望んで参加しようとしてくれている。


「皆様のお気持ち、とても嬉しく思います」

「実は、今回は冒険者の皆様のお力を貸していただきたく思い」

「スタトリンとサンデル王国の防衛の依頼を、ギルドから出させて頂く予定です」

「!!よっしゃあああああああああああ!!!!!!!!!」

「オレ達の力を、リン様の為に使えるぞお!!!!!!!」

「ねえ!!どこの防衛でも遠慮なく言ってね!!」

「あたし達、このギルドの冒険者なんだから」

「リン様の為なら、どこでも護りに行くわ!!」

「わたし達も、戦闘はできないけれど」

「みんなの為の素材とか食料とか」

「い~っぱい採取してくるから!!」

「戦闘の後方支援で、物資の補給役とかもするから!!」

「だから、私達も依頼を受けさせて!!」


本来、個人主義が強いはずの冒険者達が…

スタトリンとサンデル王国の防衛依頼をギルドが出す予定、と言う受付嬢の言葉に盛大に喜び、これ以上ない程の一体感を見せている。


戦争に駆り出される依頼であるにも関わらず、誰一人としてそれを拒もうとする者はおらず…

むしろ、絶対に受注すると言う確固たる意志が丸わかりになっている。


神の宿り木商会系列の冒険者ギルドも、所属する冒険者がすでに二十万を超えており…

しかも一人一人が着実に力をつけていっている。


冒険者達がスタトリンを自分達の国だと認め、そのスタトリンを護ろうと、戦争に駆り出されることをむしろ望んでいる。

その光景に受付嬢達は優しい笑顔を浮かべ、そそくさとスタトリンとサンデル王国の防衛依頼の書類作成に入るのであった。

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