第221話 戦争⑫
「皆の者!!此度の戦争においてよくスタトリンを護り抜いてくれたのじゃ!!さあ、今宵は勝利の宴じゃ!!もう入らなくなるくらい飲んで、食って、騒ぐのじゃ!!」
「おおおおおおおおおお!!!!!!」
「リン様、万歳!!」
「シェリル様、万歳!!」
「スタトリン、万歳!!」
「神の宿り木商会、万歳!!」
もはや戦になっていない、と言える程の圧倒的な内容で、ジャクリーヌ一派の軍勢を退けたスタトリン陣営。
リンの生活空間にある、神の宿り木商会の従業員の居住地のすぐそばにある広大な草原に、リンがあっという間に勝利を祝う宴の会場を作ってくれた。
そこに今回の戦争で働いた、第一防衛線の戦闘員及び補助作業員。
第二防衛線で敵に備えていた諜報部隊の隊員達。
スタトリンの領地で、守衛として備えていた守衛部隊、ジャスティン商会の護衛部隊の隊員達。
さらには、裏方として支えてくれていた神の宿り木商会の全従業員と、ジャスティン商会の全職員。
そこに、サンデル王国の国王マクスデルに、第一王妃エリーゼ。
第一王女となるリリーシアに、実質上の第一王子となったアルスト。
さらにはマテリア、セバス、アンを始めとする、サンデル王国側の侍従達。
ゆうに十万に届く程の面々が一同に揃い、此度の戦争の勝利を盛大に祝うこととなっている。
「ま、まさかおれ達までこの場に加えて頂けるなんて…」
「リン様とシェリル様は、なんてお優しいお方なんだ…」
「おれ、絶対に神の宿り木商会の一員になって、リン様に少しでも恩返しをさせて頂くんだ!」
「オレも!」
「俺もだ!」
しかもそこに、ジャクリーヌ一派の貴族達に強制的に徴兵されて戦争に参加させられていた民達もおり…
本来ならば敵側の存在となる自分達をも、この宴に加えてもらえたことを心から喜び…
そうするようにしてくれたリンとシェリルを、民達は心から信奉するようになった。
この民達は結局、あの悪徳貴族達に重税を課され、いたずらに虐げられるのみならず家族まで奪われ…
あげく税の未納を理由に此度のような戦争に強制的にかり出されるなど、マクスデルとエリーゼからすればあまりにも度し難い事情があった為、全員がジャクリーヌ一派の兵として戦争に加わったことに関しては不問、無罪放免となった。
さらにこの後、キーデンの領地でサンデル王国の国民としての生活を送ることが決定しているのだが…
この民達の誰もが、神の宿り木商会の一員となってリンに仕え、リンの為に働きたいと思っている。
サンデル王国の方も、此度の戦争で国の癌となっていたジャクリーヌにロデナン、そしてその派閥となる貴族達を一掃することができ、国王となるマクスデルと王妃となるエリーゼが民を大切にする王族だと民達が知ることになった為、今後はいい方向に変わっていくことが容易に想像できる。
加えて、サンデル王国には絶対の守護神となるリンがいてくれて、しかもそのリンが設立した神の宿り木商会と言う、超が付く程の優良商会がサンデル王国の領土内に関連施設を随時展開中となっている為、なおのこと良き未来しか見えない状態となっている。
「それでは、乾杯じゃ!!」
「「「「「「「「「「乾杯!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
スタトリンの王となるシェリルの音頭で、宴の開始となる乾杯が始まる。
その場にいる全員が、先に配られていたグラスを上に掲げ、近くにいる者達とも乾杯を行なう。
「さあ、リン…リンは妾と乾杯じゃ♡」
「は、はい」
宴の始まりに周囲が盛り上がる中、シェリルはとても幸せそうな笑顔を浮かべて、そばにいるリンと乾杯を交わす。
シェリルは神の宿り木商会製造のエール、リンは神の宿り木商会…
もとい、自身が製造した果実ジュースの入ったグラスを、お互いに軽く合わせる。
そして、リンとシェリルはお互いに見合わせながら、グラスに入った飲み物を口に含み…
じっくりと味わってから、喉に流していく。
「うむ!!やはり神の宿り木商会製造のエールは本当に美味いのじゃ!!」
「お、美味しい、です」
会頭となるリンを筆頭に、有能な製造者が一同に集結している、神の宿り木商会で製造されたエールにジュース。
シェリルはもはや神の宿り木商会で作られる食品や飲料でないと満足できない程になっており…
当然、このエールもとても気に入っている。
リンも、自身が作ったジュースの美味さに可愛らしい笑顔が浮かんでいる。
「な、なんだこのエール!!」
「こんなの初めて飲むぞ!!」
「こ、こんな美味いエール、初めてだ!!」
悪徳貴族に強制徴兵されていた民達は、神の宿り木商会製造のエールの美味さに驚きながらも笑顔を浮かべ…
よほどの高級品だと思い、ちびちびと大事に味わって飲んでいる。
「皆さん!!お代わりはいくらでもありますから!!」
「もっと飲んで、食べて、い~っぱい元気になってくださいね!!」
「我らが神の宿り木商会の会頭であり、スタトリン及びサンデル王国の守護神様となるリン様、スタトリンの王となるシェリル様から、皆さんに目いっぱい食べて飲んでもらうように仰せつかっております!!」
「さあ!!もっと飲んで、もっと食べてくださいね!!」
そんな民達の様子を見ていた、神の宿り木商会の従業員達が…
食料に酒類含む飲料はいくらでもあり、この宴でこの場にいる全員に目いっぱい食べて飲んでもらうようにと、リンとシェリルから言われていることを優しい笑顔で伝えてくる。
実際、リンを始め神の宿り木商会の生産力は日に日に増しており…
リンの収納空間にある食料や飲料は枯渇するどころか増えに増えて有り余っている。
スタトリンとサンデル王国の全国民に一年分の食料と飲料を保障しても、ほんの一部に過ぎない程の量になっているのだ。
おまけに今は食品加工部門に商品開発部門が、生産された農作物や狩りで得られた肉類・魚介類を使って様々な食品や飲料を生み出しており…
バリエーションも以前とは比べ物にならない程に増えていっている。
加えて、この民達に自商会で生産する食品や飲料を食べて飲んでしてもらうのは、神の宿り木商会の食品のいい宣伝にもなると言う目的もあるので、むしろ目いっぱい食べて飲んでをしてほしいまである。
「!!い、いいのかい?」
「こ、こんな高級なエールだけじゃなくて、こんなごちそうまで…」
「大丈夫です!!」
「神の宿り木商会の生産力は、世界一といっても過言ではないですから!!」
「このくらいでは、神の宿り木商会にとっては消費したうちには入りませんから!!」
「な、なんて凄いんだ…」
「神の宿り木商会という商会は…」
「さすが…さすが守護神様が設立なされた商会…」
「さあ!!お代わりはいくらでもありますから!!」
「どんどん飲んで、食べてください!!」
「あそこで、いくらでも料理を作っております!!」
リンが設営してくれた宴の会場には、リンの自宅近くにもあるような野外キッチンを大型化した調理場もあり…
そこで豚人族を筆頭とする休暇中の調理部門の面々が楽しそうに宴の料理を作り続けている。
その料理のとても美味しそうな匂いが漂っていて、会場にいる参加者の食欲をそそっているし、実際に食べてみて美味しさのあまり幸せな笑顔が浮かんでいる者の姿が至る所で見られている。
「あ、ありがとうございます!」
「うお!なんだこの料理!」
「すっげえ美味い!」
「なんだここ…これが天国か…」
「この天国は、リン様がお作りになられたところなのか…」
「ああ~!もう絶対神の宿り木商会の一員になって、リン様に恩返ししたいぞ~!」
そして、捕虜となっていた民達も神の宿り木商会製造となる酒類と、この会場で次々と作られる料理に舌鼓を打っていく。
そのあまりの美味しさと、会場にいる神の宿り木商会の従業員達の優しさ、温かさ、そしてこの会場自体の居心地の良さに、まるで天国にいるかのような感覚を覚えてしまう。
捕虜となっていた民達は改めて、リンの神の宿り木商会の一員になって、リンに恩返しをすることを心に誓う。
「リンちゃん♡はい、あ~ん♡」
「お兄ちゃん♡ボクのも~♡」
「おにいちゃん♡ミリアも~♡」
「旦那様♡ウチのも、食べてくださいね♡」
「旦那様♡ワタシのも♡」
「旦那様♡あたいも♡」
シェリルと一緒に宴を楽しんでいたリンのところに、リリム、リーファ、ミリア、フェリス、ベリア、コティが嬉々とした表情で寄ってきて…
それぞれが違う料理の乗ったお皿を持ってきて、それをリンに甲斐甲斐しく食べさせようとする。
「あ、あの、ぼ、ぼく、ひ、一人、で……」
「だあめ♡リンちゃんはあたし達の神様なんだから♡」
「大好きで大好きでたまらないお兄ちゃんのお世話、ボクがしたいもん♡」
「ミリア、おにいちゃんにい~っぱいうれしい~ってなってほしいの~♡」
「ウチが愛してやまない旦那様……ウチがい~っぱいお世話させてほしいんです♡」
「だってだって、大好きで大好きでどうしようもない旦那様だもん♡」
「旦那様のお世話い~っぱいして、旦那様に喜んでほしいもん♡」
当然ながら、リンは一人でできるからと言うものの…
最近、リンが女神アルテナに天界に召喚されて、仮死状態になっていたことが皆の心によほど強く残っているのか…
リンの地下拠点で暮らす女性陣は今のリリム達のように何かとリンのお世話をして、リンの負担を少しでも軽くしようとするようになっている。
「リン様♡お飲み物はいりますでしょうか?」
「リン様♡リン様のお世話をさせて頂くことは、私達従者にとって至極光栄なことなのです♡」
「リン様♡リン様のして頂きたいことは全て、わたし達従者にお任せくださいね♡」
「リン様♡」
「リン様♡」
リリム達が、困ったような表情をしているリンに甲斐甲斐しくあーんしているところに、今度はサンデル王国の従者となるメイド達が姿を現す。
そして、リンのことを溺愛しているメイド達は、リンのしてほしいことを全部自分達がするからと、とても幸せそうな笑顔で申し出てくる。
元々孤児でスタトリンではずっと一人で暮らしてきて、その規格外の能力もあって自分のことは全て自分でするのが当然としてきたリン。
だからこそ、今の状況になってもそれは変わらず…
料理も普段から自分で作るし、掃除も自分でするし、身の回りのことは全部自分でしてしまうリンを見ていて、メイド達はとてももどかしく思っている。
特に、リンが仮死状態になってこの世からいなくなってしまうかもしれないと言う、あの場面に直面してからは、もう二度とあんなことがないようにと無理やりにでもリンのお世話をしようと、こうして申し出てくるし…
それでリンが渋るようなら、無理やりにでもリンのしてほしいことを察して先にやってしまうようになっている。
そうすることで、いたたまれなさそうになりながらも笑顔でお礼をリンが言ってくれるのが、まさに天にも昇る程の幸せを感じてしまうし…
普段から自分のことは自分でするリンのお世話をできることがとても誇らしく思えてしまうのだ。
「リン♡妾もリンのお世話がしたいのじゃ♡じゃから、妾のも食べてほしいのじゃ♡はい、あーん♡」
そんな光景を普段から見ているからか…
スタトリンの王となるシェリルも、こうしてリンのお世話をしたくてたまらなくなっているようで…
リンが自分のすることで、恥ずかしがりながらも笑顔でお礼を言ってくれるのがあまりにも可愛くて幸せで、今ではまるで拠点で暮らすメイド達のようにリンのお世話をするようになってしまっている。
「もう、リン様♡」
「リン様のお世話をさせて頂くのは、私達リン様直属のメイド部隊の役目です♡」
「リン様♡いつも通りわたし達がお世話させて頂きますね♡」
「リン様♡はい、あーん♡」
リンが他の女性達にお世話されている光景を目の当たりにして…
当然、リンのお世話をすることが生きがいとなっている、リン直属のメイド部隊の面々が黙っているはずもなく…
もはやそれが当然と言わんばかりにリンのそばに寄ってきて、リンにあーんしようとしてくる。
「あ、う、う……」
自身の拠点で暮らす女性達に、大勢の目がある中でこうして目いっぱいお世話をされるのが恥ずかしいのか…
リンはその幼い頬を真っ赤に染めて、恥じらいながら俯いてしまっている。
「お、おお……」
「リン様は本当に、この世に降りてきた神様なんだなあ…」
「あんな美人達が寄ってたかって、幸せそうな笑顔でリン様のお世話を…」
「しかも、スタトリンの女王様のシェリル様まで、あんなに嬉しそうに…」
「さすが…さすがはスタトリンとサンデル王国の守護神様…」
「リン様なら、あの光景も当然だって思えるよなあ…」
神の宿り木商会の従業員からすれば見慣れたものになっている、この光景。
従業員の居住地にリンが訪れた際は、その場にいる女性従業員がこぞって、このようにお世話とおもてなしをしようとするからだ。
だが、そんな光景を見るのが初めてな捕虜の民達からすれば…
改めてリンが、この世に降臨した神であることを実感させられる光景となってしまう。
「さあ、リン様♡このリリーシアにも、リン様のお世話をさせてくださいね♡」
「リン様♡わたくしもリン様のお母様として、目いっぱいお世話させて頂きますわ♡」
「リン様♡リン様のお世話はこのアンに、お任せください♡」
「ぼ、ぼく、ひ、一人、で……」
「だめです♡」
「リン様は放っておくと、すぐに無理をなさってしまいますから♡」
「この世界で非常に重要な、リン様の御身のご負担を少しでも軽くさせて頂くのは、このアンの使命であり、喜びなのですから♡」
やはり、リンを失ってしまうかもしれなかったあの出来事は、リンの拠点で…
このスタトリンで暮らす者達にとっては心を抉られ、希望を失ってしまう程の出来事になってしまっていたようで…
今となっては何もなくとも常に誰かがリンのそばについては、リンのお世話をすることとなってしまっており…
とにもかくにもリンの身体の負担を少しでも減らそうとして、誰もリンのそばを離れようとしなくなっているのだ。
「ははは…さすがは我がサンデル王国をよき未来に導いてくださっている守護神様…あの一件以来、誰もがリン様の御身を慮って常にお世話をしようとしているな」
「当然でございます、陛下…リン様は決して失ってはならない、我らが守護神様であり、救世主様!!リン様の御身のご負担を少しでも軽くさせて頂くのは非常に重要な使命であり、このセバスも常にリン様のご負担がないように配慮致しております」
「そうだな…リン様のおかげで、此度は我が国の膿を一気に吐き出すことができ…キーデンの領地を筆頭に改革も進んでおる。この我も、リン様の為となるのであればいかなる支援も惜しまぬ所存であるよ」
「!陛下のそのお言葉…このセバス、非常に嬉しく思います」
「お父様!ぼくもリンお兄様の為なら、いっぱいお手伝いします!」
「おお…アルストもそう言ってくれるか!」
「アルスト様!このセバス、アルスト様のそのお言葉、とても嬉しく思います!」
「えへへ…だってリンお兄様は、ぼくの大切なお兄様で、世界の救世主様ですから!大好きなリンお兄様のお手伝い、い~っぱいしたいです!」
リンがこうして誰からも過保護な程に大切にされている光景に、マクスデルは安心したような笑顔を浮かべながら、宴を楽しんでいる。
サンデル王国の膿を吐き出し、国をどんどんいい方向へと進めてくれているリンは、決して失ってはならない絶対の守護神であり、救世主。
そのリンの為となるのであれば、いかなる支援も惜しまないと心に誓っている。
そんなマクスデルの言葉に、セバスもアルストも便乗し…
三人で心穏やかに談笑している。
「ジャスティン様…リン様はまさに…まさにスタトリンの、そしてサンデル王国の守護神様であり、この世の救世主様!そのリン様の為に此度の戦争に出陣し、勝利できたこと…このゴルド、何よりも嬉しく思います」
「うむ…ゴルド、此度の戦争ではよく戦ってくれた。お前と、お前率いる護衛部隊の力が、間違いなくこの勝利に貢献されたのだから」
「!ジャスティン様のそのお言葉、このゴルド、何よりも嬉しく思います!我らジャスティン商会護衛部隊、今後も商会の、スタトリンの…ひいてはリン様の為、一層精進していく所存にございます!」
「ああ…我が商会が誇る護衛部隊は、私の自慢の一つだからな。これからも期待しているよ」
「!恐悦至極にございます!」
ジャスティンもゴルドも、リンが誰よりも大切にされているその光景に頬を緩め…
ゴルドは護衛部隊一同今後一層精進し、商会の、スタトリンの、何よりリンの為に護衛の任務を全うすることを誓う。
そんなゴルドを心底頼もしく、自慢の一つだと思うジャスティンの言葉に、ゴルドは感激してしまう。
こうして、勝利の宴は誰もが笑顔を浮かべながら、和気あいあいと行われ…
リンはその場にいる誰もが笑顔を浮かべているその光景に、天使のような笑顔を浮かべて喜ぶのであった。
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