第204話 崇拝②
「ああ…リン様…」
「このスタトリンの英雄で神様…」
「あたし、無駄に権力とお金に狂ってる王国の教団なんて死ぬ程嫌いだけど…リン様を崇拝するこの教会は凄く好き!」
「リン様はまさにこの世に降りてきた神様!!そのリン様を崇拝する教会なんて、行かない理由なんかないじゃないか!」
「ほら、この礼拝堂…リン様のお力に満ち溢れてて、すっごく居心地いいし」
「何だか、いるだけで心も身体も癒されていく感じだもん」
スタトリンにある教会の神父と交渉し、すぐに商会内部でリンを崇拝する為の教会として改築することに話が決まった。
その翌日にはすぐさま、神父にその旨を回答として返し、商会所属の建築業者による教会の改装が行われた。
「おおお…リン様の神像じゃ…」
「なんと…なんと愛らしくも凛々しい…」
「わし達老人は、リン様と共に生きられるのが何よりの幸福じゃ…」
元々こじんまりとしていた教会は、改装されて外観はとても綺麗になったものの、その大きさは変わっていない。
たった一つの大きな扉を開けると、中にはもう一つの大きな扉があり…
その扉をくぐると、美しく清浄な自然に包まれた風景に囲まれた礼拝堂があり、その中央には緻密に作られたリンの神像が神々しく設置されている。
その礼拝堂から簡易診療所、神父が迷える子羊の懺悔を聞く為の部屋に行くことができる。
礼拝堂は結婚式や葬式にも使えるようにかなり広く作られており、目に優しく美しい木造の壁に包まれ、吸い込まれるような高さの天井となっている。
礼拝堂そのものが、リンが生み出した世界樹の分身体の中に作られており、常に放たれる清浄な魔素と空気が、礼拝に訪れた者の心と身体を癒してくれる。
この分身体はリンが魔力を多く込めて生み出したこともあり、半径200mと言う太い幹に、高さは300mと山の様に高く、そこから生い茂る枝と葉も広々と幹を護るようになっている。
礼拝堂の東側の壁から世界樹の枝の一部が入り込んでおり、そこにリンお手製の水の魔導具が設置された泉が作られている。
世界樹の葉に浸され、世界樹の雫が溶け込むその泉の水は自由に飲むことが可能で、飲むだけで少々の疲労や怪我はすぐに回復するようになっている。
例によって排水口が設けられており、そこはリンの収納空間につながっていて…
その中で【浄化】をかけて綺麗にしてから戻すことも可能となっている。
簡易診療所は礼拝堂の西側に作られた部屋の中に設備が整っており、リンお手製の医療器具や薬品類が使えるように収納の魔導具が設置され、神の宿り木商会所属の医師団から医師が一人、常駐で勤務するようになっている。
もちろん、リンの地下拠点にある診療所への転移陣も移設されており、症状の重い患者はそちらへと搬送することができる。
懺悔部屋は礼拝堂に入ってすぐ右手に作られている、十程ある小部屋がそれとなっている。
扉がついていて開閉も可能となっており、中は完全に防音状態となっていて外には中の声はまるで聞こえないようになっている。
スタトリンの教会には、この礼拝堂への入り口のみ作られており、礼拝堂と簡易診療所、そして懺悔部屋がある世界樹の分身体はリンの生活空間の、神の宿り木商会の居住地とジャスティン商会の居住地のちょうど中間、かつ最寄りに生み出されている。
神父の住処もこの世界樹の分身体の中に作られており、職場となる教会の礼拝堂がそのまま自身の住処となっている。
神の宿り木商会の居住地がすぐ近くにあるので、食事や買い物に関しても利便性が高く、とても住み心地のいい場所となっている。
「ああ……リン様……私が仕えるべき、この現世の神様……」
礼拝堂にあるリンの神像に、ここに訪れている誰もが喜びの笑顔を浮かべ、敬虔な祈りを捧げるその光景に、神父は喜びでいっぱいになっている。
この度新しく作ってもらえた、世界樹の分身体の中にある住処では、神父はリンの功績を聖書としてひたすら書き綴っている。
そして、誰も来ない早朝と深夜には、ただただリンの神像に向かって、その日の感謝の祈りを捧げている。
「えへへ…おにいちゃんがかみさまのきょうかいができて、ミリアすっごくうれしい♡」
そして、リンを崇拝する為の教会ができたことを、ミリアは本当に喜んでおり…
日に一度は、礼拝堂に訪れてリンへの感謝の祈りを捧げていく。
「あらあら…ミリアちゃんは小さいのに本当に信心深い娘だねえ…」
「ミリアちゃんがこの教会に来てくれるから、おばあちゃんとても嬉しいよ」
「ミリアちゃん、よかったらおじいちゃんとお祈りしとくれよ」
「うん!ミリアいっしょにおいのりするね!」
ミリアは商会の診療所でリーファと共に医師として、日々怪我人を治療している為…
スタトリンの住民は、ミリアのことを認知している。
とても天真爛漫で優しく、可愛らしいミリアのことを誰もが可愛がっており…
リンを崇拝する為に教会に訪れる老人達は、まるで実の孫のようにミリアを可愛がっている。
ミリアも、自分を可愛がってくれる老人達のことは気に入っており、こうして教会で一緒にリンの神像に祈りを捧げたり、他愛もないおしゃべりをしたりするようになっている。
「今日も俺達、リン様のおかげで無事に依頼をこなせたよな」
「ああ!本当にリン様はこのスタトリンの神様だぜ!」
「いつもおれ達を助けてくれるリン様に、少しでもお返ししないとな!」
討伐依頼を主とする冒険者達は、神の宿り木商会系列の冒険者ギルドのおかげで毎日がとても充実し、生活も非常に安定するようになったことで、そのギルドを作ってくれたリンに日々感謝している。
その為、討伐の依頼が成功した時は必ずこの礼拝堂に訪れて感謝の祈りを捧げ、気持ちばかりではあるものの、感謝のお布施までしていくようになっている。
「あ~!今日も採取大量だった~!」
「リン様が諜報部隊作って、スタトリンの周辺を調査してくれてるから採取すっごくしやすいし、報酬も多いから嬉しいの!」
「今日も採取無事にできたから、リン様にお返し!」
採取系の依頼を主とする冒険者も、日頃の依頼が成功する度に礼拝堂に訪れ、リンの神像に感謝の祈りを捧げ、気持ちばかりのお布施をしていく。
元々そのようなことを期待して、教会を神の宿り木商会の関連施設にして大々的に改装、全面的な資金援助をしたわけではないのだが…
この冒険者達のように、スタトリンに住む住民全てがこうして礼拝に来ては日々の感謝としてお布施をするようになっている。
一人辺りの金額は微々たるものではあるものの、人口が数万人を超え、そろそろ五万人に達そうとしている民全てがそうしてくれていることもあって、お布施の総額はかなりのものとなっている。
そのお布施は、会頭となるリンの鶴の一声で全て教会に還元することとなり、運営管理者となる神父の裁量で使い道を決めてもらうようになった。
「ああ……リン様……わたしが愛してやまない神様……♡」
「私もリン様の偉業を後世にお伝えできるように、神父様と共にリン様の聖書を綴らせて頂きます♡」
「リン様が下さったこの教会を、わたし達は未来永劫残せるよう、務めさせて頂きます♡」
サンデル王国の領地に住んでいたが、悪徳貴族の圧政により元々所属していた修道院が潰れてしまったり、教団幹部からのセクハラを受けて教団を飛び出したりしてしまうなどで、どうすることもできなくてスタトリンに移民してきた
そんな修道女達は全て、神の宿り木商会所有となったこの教会で受け入れている。
その為、急遽礼拝堂の中に修道院を作り、難民となってしまった修道士や修道女の受け入れ先としてそこで暮らしてもらい、リンを神とする敬虔な教徒としての修行に取り組んでもらうこととなった。
その為、彼女達も神父に倣って礼拝に来る者のいない早朝と深夜にはリンの神像に日々の感謝の祈りを捧げることを習慣としている。
普段は礼拝に来る者ににこやかに挨拶をしつつ、必要ならば礼拝堂の中を案内し、リンの偉業についてを嬉しそうに語ったりしている。
また、医療の心得がある者は簡易診療所で受付と医療補助に携わったりしている。
この教会所属となった修道女達は、リンに実際に会ってその容姿と人柄も知ることとなっている。
まさに滅私で常に他の為に動き、人が喜んでくれたらそれを我が事のように喜ぶ。
人を幸せにする為なら、その力を使うことを惜しまない。
そんな健気で愛らしく、しかも飛びぬけた力まで持っているリンにその心を撃ち抜かれてしまい…
敬愛するリンの為ならば何でもする、と言う姿勢と心で教会に勤めることとなっている。
そうして、神の宿り木商会所有の教会は日々、多くの参拝者が訪れるようになり…
スタトリン中がリンを神として崇め、信奉するようになっていくのであった。
――――
「ぼ、ぼく、か、神様、な、なんか、じゃ…」
「何を言っておるのじゃリン!神の宿り木商会所有となったあの教会では、リンを神と崇め喜ぶ者ばかりなのじゃぞ?お主のような偉大な男を生涯の伴侶にできて、妾…妾幸せ過ぎてたまらないのじゃ♡」
「そうだよリンちゃん!私はリンちゃんを神として崇める教会の話を神父様が持ち込んでくれたことがどれ程嬉しかったか!教会に訪れる人達もどれ程喜んでリンちゃんに祈りを捧げてくれているか!リンちゃんは紛れもなく、この世に生きる神様なのだから…私もリンちゃんに仕えたくて、リンちゃんをどこまでも愛したくてたまらないんだよ?♡」
「リン様はどれ程の偉業を成されたか、ご自身では存じ上げないのでしょうが…このリリーシアを始めその偉業に救われた人がどれ程いると思ってらっしゃるんですか?リン様がこうして神様として崇められること…私、嬉しすぎてたまりません♡」
「リン君…君は紛れもなくこの世に降臨してくれた神様だよ。君に救われた者がどれ程いるのかは、スタトリンに住む者全てが知っていることだし、今となってはサンデル王国をも救っていっているじゃないか。君を崇める為の教会ができたこと…このジャスティンも本当に嬉しくてたまらないよ!」
神の宿り木商会の関係者全てが、スタトリンにある教会を所有し、リンを神として崇める為の教会に改装することを知っており、それを心の底から喜んだ。
ただ、それは会頭であり当人となるリンを除いて、の話。
リンがその話を最初から聞いてしまうと、絶対に自分はそんな存在じゃないと儚い抵抗を見せてしまうことを、商会の誰もが確信していたからこそ…
会頭補佐としてリンに教会のことを伝えることとなったエイレーンは、あえてその教会がリンを神として崇める教会であることを伏せて、教会の支援の為に商会所有とすることだけを伝えたのだ。
礼拝堂に設置されたリンの神像は、リンが世界樹の分身体を生み出し、中を整えてから、リンには内緒でこっそりと設置されたもの。
リンの神像を作ると聞かされて大喜びしたドワーフ達が、オリハルコンやダイヤモンドなどの希少鉱石をふんだんに使って作り上げたり…
設置の際にもリンに気づかれる恐れがあるからとリンの収納の魔導具を使わず、ハーピーに頼んで【闇】属性の【収納】で運んで、力自慢の獣人十人がかりで丁寧に設置したり…
もうとにかくリンへのサプライズの意味も込めて、全員が大喜びで作業に取り掛かっていたのだ。
「お兄ちゃんはぜ~ったいに神様なの!ボク、お兄ちゃんが神様として教会でみんなにお祈りされてて、すっごく嬉しい♡」
「ミリア、おにいちゃんがかみさまのきょうかいできたのすっごくうれしい!おにいちゃんはぜ~ったいにかみさまだもん♡」
「リンお兄様が神様となる教会ができて、ぼくす~っごく嬉しいです!」
リンを神とする教会ができたことが嬉しくてたまらないのか…
リーファ、ミリア、アルストが無邪気な笑顔を浮かべて、リンにべったりと抱き着いて甘えてくる。
地下拠点の診療所と、教会の簡易診療所両方に商会所属の医師とジャスティン商会医師団の医師が最低一人ずつは常駐するようになったので、リーファは最近は両方に行き来してトリアージと怪我人の治療をするようになっている。
メイド部隊のメイドであるライラも、ここ最近では【光】魔法の威力とレベルが向上したこともあり、比較的重傷な怪我人の治療にも臨むようになっている。
ミリアは【聖女】の称号を持っていることもあり、教会の礼拝堂に訪れるだけで教会により清浄な魔力と空気が満ちるようになっている。
リーファと同様に地下拠点の診療所と、教会の簡易診療所両方で怪我人の治療をしたりしており、町の人達からはとても可愛がられている。
アルストは姉リリーシアについて国営を学びつつ補佐としての役目を果たしており、幼いながらにどんどん力をつけてきている。
加えて、これまでのように自分を支えてくれる使用人達を労い、大切にしているので使用人達からの支持はより一層強くなっている。
「リン様を神と崇める教会…我も我が国の守護神となるリン様がスタトリン中で崇められて、とても嬉しく誇らしく思います!」
「リン様…リン様の教会ができたこと、わたくしもとても嬉しく思います♡」
そして、サンデル王国の首脳となるマクスデルとエリーゼも、リンを神とする教会ができたことを心の底から喜び、笑顔を浮かべる。
「リン様…リン様は、このスタトリンにおいて誰からも認められる神様なのですから♡」
「わたし達、リン様がこんなにも愛されて…ほんとに嬉しいです♡」
「リン様は紛れもなくこの世を生きる神様なのですから♡」
「その神様にお仕えするあたし達が、リン様のお世話をさせて頂くのは当然のことなんです♡」
「リン様…これからもわたしはお休みの時とお目覚めの時のお着換え、させて頂きますね♡」
「お風呂のお世話もい~っぱい、させてくださいね♡」
「お食事のお世話も、い~っぱいさせて頂きたいです♡」
「ご就寝の時の添い寝も、させてくださいね♡」
「私達、リン様のお世話をさせて頂くのが幸せで嬉しくてたまらないのですから♡」
「リン様のお世話を、このメイド部隊のメイド達にい~っぱい、させて下さいね♡」
リンを心の底から愛してやまないメイド部隊の面々も、リンの教会ができたことを心底喜んでおり…
名実共に神として崇められることとなったリンのお世話をしたくてたまらないと、その瞳にどうしようもない程に溢れかえる愛情の形を浮かび上がらせて懇願してくる。
「もう!メイド部隊ばっかりずるいです!」
「私達も、リン様のお力にならせてください!」
「リン様は私達の神様なのですから、い~っぱいお力になりたいです♡」
「リン様にお仕えさせて頂くことが、私達の幸せであり喜びなのですから♡」
「リン様にい~っぱいお喜び頂きたいです♡」
「リン様♡」
「リン様♡」
メイド部隊同様、リンを心の底から愛してやまない業績管理部門の女性達も、神として崇められることとなったリンにこれまで以上にお仕えしたいと、その瞳にどうしようもない程に溢れかえる愛情の形を浮かび上がらせて懇願してくる。
「ぼ、ぼく、た、ただ、の、へ、平民、な、なのに……」
自身を崇拝する為の教会が作られ、スタトリン中の民に崇拝されることとなり…
その当人となるリンは、いたたまれなくなって困り果てた表情を浮かべてしまう。
だが、よりリンへの愛情が大きくなっている女性陣は、そんなリンの表情もあまりにも可愛すぎてどうしようもなくなってしまい…
リンを抱きしめてめちゃくちゃに可愛がって、愛してしまう。
そうして、案の定あっさりと気絶してしまったリンを全員が抱きしめて、その顔に狂おしい程の愛情を込めたキスの雨を降らせてしまい…
独りぼっちを強要される呪いを抱えているリンが絶対に孤独にならないようにと、ひたすらリンにべったりとしたまま愛して、そのあまりの幸福感に蕩けてしまいそうな表情を浮かべてしまうのであった。
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