第203話 崇拝①
「リン様♡はい、あ~ん♡」
「あ、あの、ぼ、ぼく、ひ、一人で…」
「私、こうしてリン様にあ~んさせて頂くのが幸せで嬉しいのですが…お嫌、ですか?」
「!ち、ちが…あ、あ~ん…あむ…」
「(う、嬉しい…嬉しすぎます♡リン様が私の手で食べて下さって…♡)リン様、美味しいですか?」
「もぐ……は、はい。お、美味しい、です」
「!!(ああ…リン様が、リン様が私の作った料理を、私のあ~んで食べて下さって、美味しいって言って下さりました!!私、私、幸せ過ぎてどうにかなってしまいそうです…♡)リン様が美味しいって言って下さって、私すっごく嬉しいです♡」
「こ、こん、な、お、美味しい、りょ、料理、つ、作って、く、くれて、あ、あり、がとう、ござい、ます」
「!!~~~~~~~~~~リン様…このローザ、リン様を心の底から愛しております♡愛してやまないリン様に喜んで頂けて、これ以上ない程に幸せです♡」
ドグサレ商会の一件も解決し、王家に続いてキーデン伯爵もリンの味方となってくれたことで、神の宿り木商会の勢いはさらに増していくこととなっている。
・宿屋…四十八店舗→七十二店舗
・パン屋…二十四店舗→三十六店舗
・レストラン…二十四店舗→三十六店舗
・ジュリア商会…三十店舗→四十五店舗
・冒険者ギルド…二十四支部→三十六支部
・孤児院兼ごみ収集場…二十四支部→三十六支部
・商会拠点…一拠点→四拠点
商会設立から一月が過ぎ、各系列施設の支店はさらに増えていっている。
商会の拠点も増えて、商会への交渉の席もますます増えていっている。
キーデン伯爵からの直接依頼として、武器、防具、魔道具の制作依頼が多くあり…
王家や上位貴族への献上品や、自らの屋敷で使用するものを主に依頼してくる。
この手の依頼は必然的に高額依頼となる為、当然ながら商会の売上を大きく増加させてくれるものとなっている。
加えて、キーデンの領地にある商店や商会から、神の宿り木商会が生産する商品の卸売を希望する声が多く…
人格と信頼性を最優先にする、という方針はそのままだが、それを満たしていると判断した商会や商店には卸売の契約を締結していっている。
商材を保管する倉庫としてリンの貸倉庫サービスを契約し、貸倉庫のある冒険者ギルドの最寄りの支部から、神の宿り木商会の配送業者を利用して配送してもらったり、必要ならば契約している商会や商店の者が自ら取りに行ったりするなど、それなりに融通の利く形にはなっている。
当然、神の宿り木商会生産となる商品を商材として陳列するようになった商会や商店は軒並み売上が向上し、リンの貸倉庫サービスを契約していることもあって大量に購入してくれるようになっている。
卸値をかなり低くしてくれていることもあり、直営となるジュリア商会とそれに近い関係にあるジャスティン商会と同価格帯に売値を設定しても十分に利益が出るので、どの商会や商店からも喜びと感謝の声が商会の拠点に届くようになり、神の宿り木商会の評判はますますよくなっていっている。
そのおかげもあり、キーデンの領地内の雇用は増加。
経済の循環も非常によくなっていっており、民一人一人の生活水準が上がっていっている。
ドグサレ商会がグドン名誉子爵を介してキーデン伯爵に売りつけた違法奴隷の子供達も、キーデン伯爵が全員養子として引き取ることとなり…
一人一人が今後のキーデンを担う存在として教育を受けつつも、幸せに暮らしている。
そうして、凄まじい勢いで売上が伸びていった結果…
神の宿り木商会設立の初月度の総売上は、当初の予定を遥かに上回る大白金貨五十億枚となり、これを毎月コンスタントに出せるならば年間の総売上は六百億枚は十分に可能な目標となっている。
しかも、サンデル王国に納める税金や諸経費などを差し引いても四百五十億枚~五百億枚が純利益となる為、まさに潰れる未来の見えない商会となっている。
これでまだ各施設の展開がサンデル王国の領土の三分の一程度と言うのだから…
さらに展開を進めていったなら、売上はさらに向上することが容易に予測される為、まだまだ伸びしろは残されていることになる。
交渉部隊が設立されたおかげでエイレーン、ジュリア、イリスの負担もかなり減り…
商会の従業員も増える一方なので、元々一人当たりの負担はそう大きくはないのだが、それがさらに減ることとなっていっている。
神の宿り木村の住民も順調に増えており、現在ではもうすぐ百人になろうとしている。
神の宿り木商会は、ますますその規模を大きくすることとなっている。
そんな商会の会頭となるリンは、生産活動や商会全体の管理に勤しんだりスタトリンやサンデル王国からの相談事に対応したりと、忙しなくも自由に過ごしており…
この日は特に相談事の持ち込みもなく、地下拠点の一階でのんびりとしていたところに、メイド部隊の長となるローザが料理を作ってくれたので、それを頂いているところ。
他のメイドや女性陣もそうなのだが、とにかくリンのお世話をしたいと言う思いが強く、ローザもリンにあーんをして、自分が作った料理を食べさせようとしている。
恥ずかしがりながらもリンが食べてくれて、しかも美味しいと言ってくれて、さらにはお礼まで言ってくれたのが何もかも嬉しくて幸せでたまらず…
ローザはリンをぎゅうっと抱きしめて、その溢れんばかりの愛情を込めたキスを、リンの頬に落としてしまう。
「は、はな、し、て…」
「だめです♡リン様が愛おしすぎてどうしようもないんです♡さあ、リン様♡あ~ん♡」
「あ、うう…あ、あむ…」
「ああ…♡リン様が私の作った料理を、私の手から…♡幸せ過ぎて嬉しすぎてどうにかなってしまいそうです♡」
人には目いっぱい振る舞うくせに、自分はそこまで食べない…
どころか成長期であるにも関わらずかなり小食なリンの性質を、ローザは大氾濫後、一緒に暮らすようになってから知ることとなった。
もちろん、リンと共に暮らしている者は全員が、リンのそんな性質のことを知っている。
年齢から比べると成長が遅く感じられる、幼さの色濃い容姿のこともあり、ローザはリンにいっぱい食べてほしくて、さらにリンにあーんして食べさせていく。
自分の胸の中で、恥ずかしがりながらも自分の作った料理を食べてくれるリンが可愛すぎて愛おし過ぎて、ローザはその溢れかえって止まらない愛情を示す形を瞳に宿しながら、リンを抱きしめて離さない。
「あー!!メイド長がリン様ぎゅ~ってして、あ~んしてますー!!」
「ずるいですメイド長!!あたしもリン様にあ~ん、したいですー!!」
「こんなにも可愛いリン様独り占めなんて、ずるいですー!!」
そこに、地下拠点の清掃を終えて一区切りついたメイド達が、リンを抱きしめてあーんしてるローザを見て、可愛らしい嫉妬の声をあげながらリンのそばまで寄って来る。
リンのことが大好きで大好きでたまらないメイド達は、リンのお世話をするのが幸せ過ぎていつでもお世話をしようとする。
今ローザがしているようにあーんして食べさせるのはもちろん、服を着替えさせる、風呂でリンの身体を綺麗にする、添い寝するなど…
リンが一人でできるからと儚い抵抗をしても、お構いなしにお世話をして、めっちゃくちゃに可愛がってしまう。
「ぼ、ぼく、ひ、一人、で、でき…」
「もお♡リン様は私達のご主人様であり、神様なのですから♡」
「わたし達メイドは、リン様のお世話をさせて頂けることが凄く幸せなんです♡」
「ただでさえ、神の宿り木商会なんて大商会のみんなだけでも凄いのに、スタトリンも実質リン様が養ってるようなものじゃないですか♡」
「日頃から生産活動にスタトリンとサンデル王国の相談事の対応に商会全体の管理にと、日々とってもご多忙なリン様のお世話をあたし達メイドがさせて頂くのは当然のことなんです♡」
「リン様がわたし達メイドを養ってくださるのですから、わたし達がリン様のお世話をさせて頂かないと、何の為にここでメイドをさせて頂いているのか分からなくなっちゃいます♡」
今もこうして、一人でできるからと儚い抵抗をしようとするリンの言葉に被せるように、メイド達はリンに寄り添って、リンのお世話をするのはメイドの義務だと主張してくる。
どのメイドも、ローザと同じようにリンを見つめるその瞳に溢れかえって止まらない程の愛情の形が浮かんでおり…
リンがこんなにも素敵な生活環境を与えてくれるおかげで、日に日にその美貌に磨きがかかっているメイド達が寄ってたかってリンを愛そうとしている。
「「「「「リン様♡はい、あ~ん♡」」」」」
こうしてリンは、美女・美少女揃いのメイド達にいっぱい食べさせてもらうこととなり…
メイド達はリンが自分の手で食べてくれたことに、天にも昇りそうな程の幸福感を感じてしまうのであった。
――――
「え?教会でリン様を…ですか?」
リンがそんな風に、メイド達に愛されている時。
スタトリンにも建てられている、商会の拠点となる事務所の応接室では…
スタトリンに唯一存在している教会の神父が訪れている。
最近商会内で設立された交渉部隊の一人が応対し、話を切り出したところ…
なんと、リンを崇めるべき神として教会を再建したい、と神父は申し出たのだ。
「はい。リン様がスタトリンに訪れて、スタトリンで暮らすようになられてからは、リン様に関わる者全てが喜びの笑顔を浮かべるようになりました。しかもそのお力で町をどんどん住みよくしていかれ…あの未曽有の大氾濫を退けられ…このスタトリンを国家として独立まで導かれ…この神の宿り木商会と言う、超が付く程の優良商会まで設立され…もう何もかもが、神の御業と言っても相違ない、と言い切れてしまう程の偉業を成し遂げられてます」
「た、確かに…わたしも、リン様はこの世に顕現された神様だと思っております」
「私は神に仕える身として、この世に顕現された神であるリン様を崇拝し、その御心をこの世に生きる方々にお伝えさせて頂く使命がございます。そして、そのお力による御業…どれ程の救いを、この世で生み出してこられたのかを、未来永劫途絶えることのないように、後世にお伝えする使命もございます」
微塵の曇りも迷いもなく、リンを神だと信じて疑わない…
まさに聖職者としての目と姿で、神父は語る。
スタトリンの教会は、そもそもミリアを聖女として囲い込んでいた教団の派閥ではなく、かと言ってその他の教団の派閥でもない。
ただ、常に魔物の脅威に晒され、国からも捨てられ、絶望に満ちた毎日を送る住民のせめてもの心の支えとなるようにと、流浪の身だった神父が名ばかりの教会として発足させたに過ぎないもの。
そんな神父が見てきたリンの全ては、絶望に陥った者を救い続ける、まさに神の御業と断言できるもの。
リンを神として崇拝したい。
リンの神と呼ぶに相応しいその心を、一人でも多くの者に伝えたい。
リンの神と呼ぶに相応しいその力を、一人でも多くの者に伝えたい。
リンの神と呼ぶに相応しいその御業を、一人でも多くの者に伝えたい。
それが、この世に生きる者達の希望、そして救いとなる。
神父はそう信じ切っている。
「ただ…残念ながら私には神の宿り木商会に依頼をさせて頂くだけの資金はございません…あくまで、私個人のお願いに過ぎません」
「…………」
「ですので、この私一人でもリン様の偉業をお伝えする宣教師として、教会を運営させて頂こうと思っております」
「…………」
「どうか、どうかこの私にリン様を崇拝し、その偉業を人々にお伝えする役目を!そのお許しだけでも頂ければ!」
神父からの、まさに魂の叫びと言うべき懇願。
それを聞いていた交渉部隊の隊員は、なぜか心が躍るような感覚を覚えてしまう。
「……(ああ…わたし達のリン様が、この世に降臨された神様として…それなら、寄付と言う形で教会の改築、そしてリン様の神像を……)」
資金の面に関しては、神の宿り木商会にとっては何の問題もない。
神の宿り木商会はもちろん、スタトリンとサンデル王国を同時に運営してもその支出は微々たるもの、と言い切れる程に、商会の資金力は高くなっている。
加えて、それとは別にリン個人の莫大な程の資産もあるのでなおさらと言える。
一つの寂れた教会に、教会そのものの改築とリンの神像を寄付することなど、有り余り過ぎている資金の使い道としてはちょうどいいくらいだ。
しかも、商会の中はリンを敬愛し、崇拝する者ばかり。
それどころか、スタトリン全体でもリンを敬愛し、崇拝する者しかいない状態となってしまっている。
ゆえに、商会内でもリンを崇拝する為の教会を作りたい、と言う声がひっきりなしに上がっている。
最も、当のリンが目立つことを好まない為、従業員達のそんな声には恥ずかしがって儚い抵抗をしてしまうのだが。
それにより、リンを崇拝する教会の設立は実現されていないのである。
「(でも、エイレーン会頭補佐にジュリア隊長とイリス隊長はリン様の教会設立にすっごく乗り気だったし…それなら…)…神父様のお話、我が神の宿り木商会としては非常に興味深い内容でございます」
「!で、ではこの私にリン様の偉大なる功績を語り伝えるお役目を…」
「それなのですが…もしよろしければ、教会自体を我が神の宿り木商会の系列として運営して頂くことは、可能でしょうか?」
「!!そ、それはこの私がリン様の商会の輪に入らせて頂ける、と言うことなのでしょうか!?」
「はい。神の宿り木商会支援の教会とし、資金に関しては神の宿り木商会が全面的にバックアップします。運営は神父様主体で、神の宿り木商会がサポートする形でさせて頂こうと思います。そして、現在ある簡易診療所に加え、リン様の救いのお力を感じさせて頂けるような礼拝堂を建築させて頂き、種族を問わず門出の祝福を頂ける結婚式場としても活用できれば…と思います」
「!!!す、素晴らしい!!ではこの私は、リン様が会頭となる神の宿り木商会所属の神父として、教会を運営させて頂けるのですな!?」
「そうです。詳細は一度、商会の方で検討し、詰めさせて頂いて…それから神父様に回答させて頂くこととなりますが…よろしいでしょうか?」
「ぜひ!!ぜひお願い致します!!ああ…この私がリン様の御許で、リン様の偉大なる功績をお伝えさせて頂けるなんて!!」
交渉部隊の隊員の提案に、神父は目を輝かせて承諾の意を表す。
リンの力で、傷つき病んだ者を救うことができる。
リンの力で、世を儚んだ者の心を救うことができる。
リンの力で、めでたく結ばれ、新たな門出となる夫婦を祝福することができる。
しかも、リンの御許でその奇跡を語り継いでいくことができる。
リンの御許でその奇跡を伝記として記していくことができる。
神父は何度も頭を下げて感謝の言葉を贈り、その場を後にする。
そして、教会の礼拝堂でただただ、リンの御許でリンと言う神に仕えられることへの感謝の祈りを捧げた。
神の宿り木商会内部でも、この交渉部隊の隊員が持ち帰った内容を伝えられ…
会頭補佐となるエイレーンを筆頭に、商会の関連者全てがリンを崇拝する教会ができることを喜び…
【聖女】の称号を持つミリアを神の使いとなる聖女とし、簡易診療所、礼拝堂、結婚式場などをリンの生活空間に作り、教会はその入口とするなど、和気あいあいと楽しい会議を進めていくのであった。
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