第195話 設立⑪
(あ~!!ホムラなの~!!)
(スイもいるの~!!)
(フウ~!!ひさしぶりなの~!!)
(ラクドなの~!!)
ホムラ、スイ、フウ、ラクドが、リンと従魔契約を結び…
リンに仕えることを心に誓った、ちょうどその時。
今では日課となっている、スタトリン周辺の森全体にリンの魔力を供給すると言う仕事を終え、嬉しそうにリンの元へと転移してきたフレア達。
そのフレア達が、かつて己が従者として契約を結んでいたホムラ達の姿を目の当りにし…
実に数十年ぶりの再会に、その幼く可愛らしい顔を綻ばせながらわちゃわちゃと喜ぶ。
(フレア様!!お久しゅうございます!!)
(アクア様!!ご無事で何よりでございます!!)
(ウインド様!!我らこの度、リン様の従魔として)
(ソイル様!!リン様に忠誠をお誓い致しました!!)
もちろん、この再会を喜んでいるのはフレア達だけでなく…
ホムラ達も自身が仕える、四元素を司る高位の精霊達に再び会えたことを心から喜ぶ。
そして、この度リンの従魔として、リンに仕えることをフレア達に伝える。
(!ホムラたち、リンのじゅうまになったのー!)
(これからは、リンとわたしたちといっしょにくらせるのー!)
(リン、すっごくやさしくてすっごくつよいから)
(ぜったいしあわせになれるのー!)
ホムラ達がリンの従魔となり、これからはリンのそばでリンに仕えていく。
それを他でもないホムラ達から聞かされ…
フレア達は、これからはホムラ達も一緒にリンと暮らせると大喜び。
(えへへ…フレア達も、ホムラ達も喜んでくれて、ぼく、すっごく嬉しいな)
(リン、ホムラたちをじゅうまにしてくれてありがとうなのー!)
(これからはみんないっしょにくらせるのー!)
(リンのせいかつくうかんなら、み~んなしあわせになれるのー!)
(リン、だいだいだいだいだいすきなのー!)
フレア達がホムラ達と再会でき、共に喜んでいるのを見て、リンもその顔を綻ばせながら喜んでいる。
フレア達はリンがホムラ達を従魔にしてくれたことを心から喜び…
嬉しさのあまりリンの胸元にべったりと抱き着いて甘えている。
そんなリンとフレア達の可愛い触れ合いに、ホムラ達も心底嬉しそうにしている。
「リ…リン様…」
「こ、このフレイムディア達は、一体…」
「あ、こ、この、子、た、達、ぼ、ぼく、が、テ、テイム、し、しま、した」
「!リン様が、テイム…」
「す、凄いです!リン様は、魔物を従えることも可能なのですね!」
自分達の前に姿を現したものの、一向に自分達に襲い掛かる様子のないホムラ達に、ジュリアもエイミも何が何だか分からないと言った表情を浮かべながら、リンに問いかける。
そして、リンからホムラ達をテイムしたと聞かされ、ジュリアもエイミも盛大に驚いてしまうものの…
そのすぐ後には、リンのなした事を盛大に称賛し始める。
さらに、リンから念話の魔導具を授けられているジュリアは、恐る恐るホムラ達の前に向き直り、念話で話しかけてみる。
(え、えっと…私の声、聞こえますでしょうか?)
(む?そなた、我らと話せるのか?)
(見た所、人族の娘のようだが…)
(ああ、よかった!私、リン様から念話の魔導具を頂いてます!そのおかげで、リン様がテイムされた従魔の方とは、お話できるようになってます!)
(!なんと!リン様はそのような事も可能なのか!?)
(はい!リン様は私が崇拝し、心から愛する神様ですから!)
(ほほう…リン様を神様と申すのか…娘、そなたはリン様の従者なのか?)
(はい!私はジュリアと申します!リン様はスタトリンと言う国の、王様よりも上の神様として、国民から崇拝され、愛されております!それと同時に神の宿り木商会と言う商会の会頭…トップとして、商会の従業員からも崇拝され、愛されております!私はその神の宿り木商会の一員で、リン様の専属秘書となります!)
(なる程、リン様がトップとなる商会の一員…)
(しかも、リン様専属の秘書…言わばリン様直属の従者となるわけか)
(そうです!私、リン様にお仕えすることができて、毎日が幸せでいっぱいです!)
(そうか…ジュリア殿、と申したな。私はホムラ。火の精霊フレア様の従者にして、今後はリン様の従者となる。よろしく頼む)
(ジュリア殿。儂はスイと申す。水の精霊アクア様の従者にして、ホムラ同様今後はリン様の従者となる。よろしく頼むぞ)
(ジュリア殿。我はフウ。風の精霊ウインド様の従者にして、今後はリン様の従者となる。よろしくな)
(ジュリア殿。某はラクドと申す。土の精霊ソイル様の従者にして、今後はリン様の従者となる。よろしく頼む)
(あ、ありがとうございます!す、凄いです!皆さん精霊様にお仕えされているのですね!)
(うむ)
(ちなみにだが)
(リン様は、我らが主となるフレア様達と)
(友人としての契約を結ばれておる)
(!!そ、そうなのですか!?)
(うむ、しかもリン様は光の精霊ルクス様、そして闇の精霊ノワール様とも友人としての契約を結ばれておられる)
(!!そ、そんなに……)
(人族の御身でありながら、ここまで精霊様のご寵愛を頂けるなど…)
(リン様はそなたが申す通り、この世に生きる神に相違ない)
(そのリン様の従者となる者なら、我らにとっては同胞)
(今後は、ジュリア殿はもちろん他の同胞達も、我らが守護致そう)
(!あ、ありがとうございます!)
(そちらの娘も、そうなのだな?)
(は、はい!彼女はエイミさんと言って、今回新たに神の宿り木商会の一員となった娘です!)
(承知した)
(では我らが四方を固める形にし)
(リン様とジュリア殿、エイミ殿を守護するように)
(リン様の旅にご同行させて頂こう)
(ありがとうございます!よろしくお願いします!)
ホムラ達と友好的なやりとりができ、さらにはリンを始めとする自分とエイミも守護してもらえることとなり…
ジュリアはその美人な顔を綻ばせて喜ぶ。
加えて、リンが四元素と光、闇を司る高位の精霊達と友人としての契約を結んでいることをホムラ達から教えられ…
ジュリアは、ますますリンへの愛情が膨れ上がってしまう。
(リン様)
(我らがリン様、ジュリア殿、エイミ殿を)
(四方を固める形で)
(守護させて頂きます)
(ほんと?ありがとう!ジュリアさんとエイミさん、護ってあげてね!)
((((御意!全てはリン様の御心のままに!))))
そして、リン達一行の先頭をホムラ。
右側をスイ。
左側をフウ。
殿をラクドが護る形で、陣を固める。
そうして、ホムラ達に守護陣を固めてもらい…
リン達一行は、エイミの村への移動を再開する。
「あ、あの…これは…」
「大丈夫よ、エイミさん!この魔物達…フレイムディアがホムラさん、アクアディアがスイさん、ウインドディアがフウさん、ソイルディアがラクドさんって言うんだけど、みんなリン様の従魔として、リン様にお仕えする私達のことも護ってくれるんだって!」
「!そ、そうなんですか!?」
「そうなの!だから安心してね!エイミさん!」
「ああ…リン様…♡…あたし、あたし本当に神の宿り木商会の一員になれて…リン様にお仕えすることができて…幸せしかありません…♡」
フレイムディア達に囲まれながらの進行に、リンやジュリアがホムラ達とやりとりしていた内容を知らないエイミは、怯えと戸惑いが入り混じった表情を浮かべてしまっていたのだが…
ジュリアから、ホムラ達がエイミも護ってくれると聞かされ、驚きつつも安堵の表情が浮かぶ。
そして、神の宿り木商会の一員になれたこと、リンに仕えることができるようになったことをエイミは心底喜ぶ。
(ふむ)
(リン様、この辺りの魔物共は)
(我ら、いや)
(リン様の御力を恐れて、この近辺から逃げているようですな)
(?そうなの?)
(はい)
(リン様のその御身の宿される御力、魔力…)
(その凄まじさには、我らも畏怖を感じずにはいられませんでしたゆえ)
(我らですらそうなのですから、この辺りの雑兵に過ぎぬ魔物などは近寄ることすらできぬでしょう)
四元素を司る高位精霊の従者である為、特殊個体として通常の個体よりも遥かに戦闘能力の高いホムラ達。
そのホムラ達ですら、リンの膨大すぎる魔力と、その幼く可愛らしい外見からは想像もできないような凄まじい戦闘能力の前には、出会った瞬間に訪れるであろう絶対の死を覚悟してしまう程。
世界樹から、リンが世界樹をこの世に復活させた英雄であるとお告げがなければ…
ホムラ達は、リンに会おうとは思わなかっただろう。
そんなリンの力の一端でも感じられるなら、ホムラ達が易々と討伐できるような、人族にとっての害獣に過ぎない魔物などは恐ろしすぎて近寄ることすらできないと、ホムラ達は断言する。
まして、そのリンに仕えるごとくにホムラ達が周囲を囲んでいるのだから…
なおのこと、害獣程度では近寄ることすらできなくなってしまっている。
(そんなのあたりまえなのー)
(リンのちからは、かみさまそのものなのー)
(そのへんのがいじゅうに、リンをおそうなんてことできるはずないのー)
(そんなことしたら、かえりうちにあうのめにみえてるのー)
(リンがそばにいてくれたら、ぜったいにあんぜんなのー)
(かりにおそわれても、リンがぜったいにまもってくれるのー)
フレア達精霊娘も、それは当然と言わんばかりにホムラ達の言葉に賛同する。
初めて会った時すでに、この世のものとは思えない程に膨大だった魔力の総量が日に日に増えていくのを、フレア達は敏感に感じ取っていた。
今となっては、初めて会ったあの時とは比べ物にならない程に魔力の総量が増加しており、フレア達が魔力に困らないのは当然ながら、スタトリンの森への供給、各施設や設備への供給など…
自分達ならすぐにその存在自体が消滅してしまっているであろう程の魔力を消費しているにも関わらず、まるで何事もなかったかのように平然としているのを、フレア達はずっと見ているから。
しかも、最近ではリンが自身の【生産・錬金】の技能を駆使して生み出したコピーリンとの凄まじい修行の光景も目の当たりにしており…
純粋なステータスも、かつてスタトリンで発生した大氾濫、そしてエンシェントドラゴンであるシェリルの強襲を単身で退けた時の比ではない程に上昇しているのを、フレア達は感じ取っている。
そんなリンが戦闘で負ける姿など、フレア達は全くもって想像などできず…
リンのそばはこの世で一番安心できる場所だと、信じ切っているのだ。
「あ!見えてきました!」
そうして歩くこと、約十数分。
見渡す限りが、周囲を覆いつくす木々ばかりだった風景に変化が現れる。
とはいっても、そこまではっきりとした変化ではなく…
道の先に終わりが見え、そこに村の出入り口であることを示す、木で簡易的に作られた門のようなものが姿を現した。
「もしかして、あの門が村の?」
「はい!あたしが住む村の出入り口になります!」
ジュリアの問いかけにエイミが肯定の意を返す。
そうして歩いている内に、リン達一行は門の傍まで辿り着いた。
「リン様!リン様の専属秘書であり、神の宿り木商会の交渉担当であるこのジュリアが先にエイミさんの村に入り、エイミさんを交えて商会からの提案の説明をさせて頂きます!」
「ぼ、ぼく、い、一緒、に、い、行か、なくて、だ、大丈夫、で、ですか?」
「はい!むしろリン様にはここまでずっとお世話して頂いたのですから、このくらいのことは私にお任せください!」
「わ、分かり、ま、ました。あ、あり、がとう、ご、ござい、ます」
ジュリアはまず自身がエイミと共に村に入り、エイミを交えて神の宿り木商会からの提案を村の民に説明し、そこで色よい返事をもらえたら会頭となるリンも交えて、さらに話を詰めることをリンに提案する。
その提案にリンは自分も行かなくていいのか問いかけるが、ジュリアは嬉々とした表情で任せてほしいと言って来る。
そんなジュリアに、リンは素直に委ねることにし、感謝の言葉を贈る。
「エイミさん!よろしくお願いします!」
「はい!」
リンの言葉にジュリアはきゅんきゅんとしつつモチベーションを高められ…
エイミと共に村の中に入っていった。
村は上空が広々とした木々の枝や葉に覆われており、陽の光は木漏れ日程度しか入ってこない。
地面を見ると、いくつか木々を切り倒したことが伺える切り株があり…
村としての土地を確保すると同時に木材の確保を行なったことが分かる。
その木材を使って建てられたと思われる、最低限の屋根と壁がある家が、村の中にぽつりぽつりと建っている。
ただし、家と言うには雨風を凌ぐ程度の脆い造りとなっており…
あれでは寒い時期などは非常に厳しいことが見て取れる。
村の周囲を、簡易的に作った柵が囲んではいるものの…
やはりそれでは魔物や害獣の侵入は防げないようで、村の中にある畑に面した箇所が壊されており、修理も満足にいかない状況が伺える。
「あれが、あたしのお店です」
エイミが指さした、エイミの店舗。
それは、他の家と比べると後から増築したのか幾分広いものの…
それでも、ないよりはマシ、程度のみすぼらしい造りとなっている。
屋根があるから家の体を成している程度のもので、とても商店とは思えないものとなっている。
幸いにも、エイミはかなりの容量を誇る【闇】属性の【収納】魔法が使える為…
商品の在庫や金銭などの保管に困ることはそうないものの…
それでも、年頃の娘が一人で暮らすにはあまりにも危険が多いと言わざるを得なくなっている。
「おや、帰ってきたのかい」
村の、そしてエイミのそんな現状にジュリアが険しい表情を浮かべていたその時…
村に帰ってきたエイミの姿を見つけた女性の声が、エイミとジュリアにかけられる。
「あ!クレアさん!」
その声にエイミが嬉々とした表情を浮かべて振り返り、女性の元へと駆け寄っていく。
クレアと呼ばれた人物は、狐人族であることを示す耳と尻尾があり、赤みがかった茶色のショートヘアの、勝気な印象の女性。
背丈は女性にしては高くすらりとしているものの、だが丸みを帯びた腰から尻にかけてのラインと割と豊かな胸部装甲が、彼女が女性であることが一目で分かるものとなっている。
そんな肢体を、そのラインにフィットしたノースリーブの黒のシャツと同じく黒のホットパンツと、動きやすさを重視した服装に包んでおり、全体的に露出が多くなっている。
顔立ちはキリリとした強気な印象だが、目鼻立ちはかなり整っており…
ややとっつきづらそうではあるものの、美人であることに変わりはない。
「エイミ…また一人で森を抜けて町の方まで行ってたのかい」
「あ…そ、そうです…商品の在庫の補充に…」
「いつも言ってるだろ?森の中は魔物も普通に出るし、町なんかはどんな危ない輩がいるか分からないから、無闇に村から出たりしないでくれって」
「で、でもそうしないと…」
「エイミがこの村のことを思ってそうしてくれているのは分かってるよ。でもな…あたいはあんたにそんな危ないことをしてまで、便利な生活をしようだなんて思っちゃいないよ」
クールで冷徹な印象のクレアだが、そんな印象に反してかなり人情家のようで…
村を一人で出て、害獣や魔物の巣窟となる森を抜けてまで商人として、村の為になるものを仕入れようとするエイミのことが心配で心配でたまらない様子。
現に今も、エイミの無事な姿を見て安堵したような表情を浮かべながら、エイミのことをまるで実の我が子にそうするかの様に優しく、愛おし気に抱きしめている。
「…クレアさん…」
そんなクレアの想いが伝わってくるのか…
エイミは、自分を抱きしめるクレアの身体に腕を回して、自分からも抱き着いてしまう。
そんなエイミが可愛いのか、クレアはますますエイミを抱きしめる力を強くしてしまう。
「…ところで、あんたは?」
エイミが無事に帰ってきたことに安堵を覚え、エイミを抱きしめながらも…
クレアは、エイミと共に村に入ってきた見覚えのない女性――――ジュリアの方に向き直る。
女性である自分から見ても、一度見たら絶対に忘れないと言い切れる程の美女であり、きっちりとした衣服に身を包んでいる、きちんとした身なりのジュリアを、不審な目でクレアは見つめる。
ジュリアは、そんなクレアの視線に緊張を覚えながらも…
自分の命も省みない危険を冒してまで単身で村の為に商売を始めたエイミと、そのエイミを心底気遣い、包み込むように護ろうとするクレア…
そして、この村の為にも…
神の宿り木商会の代表として、この村の為になる提案をする為にも、気圧されそうな自分を奮い立たせ、クレアの元へと寄っていくのであった。
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