第187話 設立③

「『神の宿り木商会』!!」

「リン様が会頭で、エイレーンの姉御が会頭補佐!!」

「この冒険者ギルドも、その『神の宿り木商会』の傘下!!」

「すっげー!!」

「まさか、リン様が商会を起こしてくれるなんて!!」


リンが創設することとなった『神の宿り木商会』。

リンがジャスティンに教わって用意した、商会設立の手続きの書類に、シェリルが王として自身の家紋を象った印を承認の証として押印することで…

正式にスタトリンを本部とする商会として、設立することとなった。


そして、その日のうちにリンがデザインしたイメージ描画と商会名を描いた看板が、スタトリンにある全ての関連施設、設備にお抱えの建築業者の職人達に手によって設置され…

瞬く間に、スタトリン中にその名が知れ渡ることとなった。


「てことは、リン様の商会からこのギルドに依頼とか、いっぱい出してもらえるってことだよな?」

「もしそうなら、今まで以上にギルドの依頼が増えるってこと?」

「薬草とか果物とかの採取の依頼も、今まで以上に増えるんだったら…」

「わたし達みたいな戦闘が苦手な冒険者でも、いっぱいお仕事もらえるってことよね?」

「ふふふ…それだけではないですよ?」

「え?」

「例えば、何らかの事情で冒険者を続けられなくなった時ですが…ギルドの職員として就職してもらうだけでなく、リン様の商会のいずれかの店舗で雇用してもらうことも可能となります」

「!じゃ、じゃあ引退してもちゃんとお仕事が保証されるってこと?」

「このギルドだけじゃなくて、自分ができそうな仕事を商会にある仕事のどれかから選べるってこと?」

「はい、そうです」

「!うわあ…」

「そんなの聞いたら、ますますこのギルドにずっと居たくなっちゃうじゃない…」


冒険者ギルドが、リンの商会の傘下となることで、さらなる依頼の増加が期待されるのみならず…

引退後の仕事も、ギルド職員と言う選択肢のみならず、商会にある商業施設での雇用も選べると言う至れり尽くせりぶり。


常に危険と隣り合わせとなる冒険者ゆえに、一部例外を除いて長く続けられる仕事ではないこともあり…

そんな話を聞いてしまえば、このギルドに所属する冒険者達はずっと所属していたいと言う思いしかなくなってしまう。


「ギルドのお仕事にしても、受付と事務はもちろん魔物の解体、食堂と酒場のスタッフ、鍛冶・衣料品店の委託販売スペースのスタッフ、スタトリンへの移住の受付、住民の管理、最近増えました配送業者、清掃業者、洗濯屋の受付、貸倉庫サービスとごみ処理事業の受付応対と…本当に多岐に渡ります。ですので、その内のどれかだけでも担当して頂けると、当ギルドとしてもとても助かります」

「!こ、このギルドだけでそんなにも仕事があるんだ…」

「はい。それもスタトリンだけで三つも拠点がありますし、今後はサンデル王国にも拠点を展開していくことになりますので…」

「!え!?そ、そうなの!?」

「はい。ですから、そのうち大規模なギルド職員の募集がかかることになると思われます」

「す、すっげえ……」

「ですので、今後はサンデル王国在住の方からも依頼が来ると思われます。当ギルドはご存じの通り、リン様がお作りになられている収納の魔導具による物資の管理を行なっておりますので、他拠点で受注した依頼もこちらに掲示することが多くなると予想されます。そうなると、依頼の数はさらに増えると思われます」

「!お、おおお……」

「あ、あたしこのギルドに登録してて、ほんとによかった!!」


新生冒険者ギルドの業務は多岐に渡っており、作業量も相当なものとなっている。

だが、リンが作ってくれた拠点の設備が優秀過ぎることと、単純にギルドで雇用している職員の数も、わずか三拠点で千人規模に至っている為、職員一人あたりの業務量がそこまで大きくならない。

しかも、ギルドのバックヤードをリンの生活空間に置いている為、三拠点の業務内容を全ての職員が共有することができている。

その為、日々湯水のように湧いてきて、普通に見れば無謀と言える程の業務量になっているにも関わらず、職員一人一人が決して無理をすることなく、日々問題なく消化することができている。


現に職員はこのギルドに勤め始めてからは残業らしい残業は皆無と言える状態である。

人員も有り余る程となっている上に、リンが作ってくれた設備のおかげで作業そのものを非常に合理的に進めていける。

その上、余剰となる人員が必ずいる状態を保てているので、職員が無理なく休みを取ることもきちんとできているのだ。


今後はサンデル王国に拠点を展開していく為、新たな人員募集は必要になるものの…

それは拠点の展開先で十分に雇用はできると予想されているし、今後もスタトリンを目指して移民してくる者は増えると予想できる為、追加人員の確保はそれ程難航することはないだろうと、エイレーンとギルド運営に関わる元秘書達は考えている。


リンが創設する商会に傘下に置かれ、ますますその基盤が盤石なものとなった新生冒険者ギルド。

その明るい未来を思い浮かべて、職員も所属する冒険者も、誰もが喜びの笑顔を浮かべるのであった。




――――




「ねえ!このパン屋さんに『神の宿り木商会』って看板が出てたんだけど」

「これって何?」

「それ?」

「このパン屋がね、リン様の作ってくださった商会所属のパン屋になったってことなの!」

「!え、そうなの!?」

「リン様が、商会を!?」

「うん!そうなの!」

「このパン屋は、リン様の『神の宿り木商会』所属になったから、これからサンデル王国に支店を展開することになったの!」

「!す、凄いじゃない!」

「ここのパン、すっごく美味しいから絶対繁盛するわね!」

「えへへ~!リン様とおばさんが作ってくれるパン、すっごく美味しいもん!」

「それをもっとあたし達売り子がい~っぱい売って、もっと多くの人に食べてほしいから!」


パン屋の方も、すでに看板が設置され…

リンの『神の宿り木商会』所属の店として、気持ちを新たに営業を開始している。


その看板について、常連となっている女性客が尋ねてくるのを、店の売り子達はとても嬉しそうに答えていく。

そして、今後はサンデル王国にこのパン屋の支店を展開していく予定であることも告げる。


常連の女性客達は、リンが商会を設立したことに驚きつつも、このパン屋がサンデル王国に支店を展開していくことを大いに喜んでいる。




「え?何?入口に新しく着いてた『神の宿り木商会』って看板?」

「この宿屋、何か変わるの?」

「はい!リン様が新たにお作りになられた商会が『神の宿り木商会』でして!」

「わたし達が勤めますこの宿屋は、リン様が会頭となられる『神の宿り木商会』所属の宿屋になるんです!」

「!え!?そうなの!?」

「そうです!」

「商会設立を機に、今後はサンデル王国にこの宿屋の支店を展開する予定です!」

「!わあ~…」

「じゃあサンデル王国の方にいても、この宿屋に泊まることができるんだ!」

「ここはもう、ずっと住んでいたくなっちゃうくらい居心地いいし、食事も美味しいし、サービスも最高だから…」

「サンデル王国に支店ができるなら、そっちでも絶対に繁盛間違いなしだよ!」




「このレストラン、『神の宿り木商会』って看板が新しく出てたんだけど、何か変わるの?」

「はい!リン様が新たに創設してくださった『神の宿り木商会』所属の店舗となります!」

「!え?リン様が商会を!?」

「はい!今後はサンデル王国にこのレストランの支店を順次、展開していく予定です!」

「おお、マジか!?」

「わしは普段はサンデル王国を転々と移動しているから、スタトリンに来た時くらいしかここの味を堪能できなかったんじゃが…今後は、サンデル王国にいながらでもこのレストランに通うことができるということじゃな!」

「はい!今後もぜひ、このレストランをご利用頂ければ、嬉しいです!」

「そう言えば宿屋さんの方も同じ看板が出てたけど、もしかして宿屋さんも?」

「はい!このレストランと同様に、リン様所有の宿屋の方も今後サンデル王国に順次支店を展開していく予定となってます!」

「それはいい!わしはこのレストランも宿屋も、どちらも懇意にしておる!今後もこの『神の宿り木商会』所属となるレストランも宿屋も、ぜひ他の者にも紹介させてもらうのじゃ!」

「ありがとうございます!」

「今後共、よろしくお願い致します!」




パン屋同様に、宿屋とレストランにも『神の宿り木商会』の看板が新たに設置されたことで、普段から常連となっている客から質問が殺到している。

その回答として、リンが創設した『神の宿り木商会』所属の店舗となったこと、今後はサンデル王国にも支店を展開していくことを、各従業員が丁寧に伝えていく。


今となってはスタトリンへの移住を希望する者だけでなく、サンデル王国はもちろん他の国からも旅行者や旅の商人が多く訪れるようになっており…

そんな旅の者達からも、サンデル王国に支店が展開されることを盛大に喜ぶ声が大きく上がっている。




「あれ?何この『神の宿り木商会』って言う看板?」

「なあ、これって何なんだ?」

「はい!この串焼き屋ですが、この度新たに創設されることとなりました、『神の宿り木商会』所属のお店となりました!」

「!え、じゃああの串焼き屋台の主人にこの店舗を作ってくれたオーナーさんが、商会を起ち上げたってことかい!?」

「はい、そうです!」

『神の宿り木商会』は本拠点はスタトリンにあり、他の商業施設もスタトリンのみの状態ですが…」

「その規模と収益は飛びぬけて凄く、今後はパン屋、レストラン、宿屋など他の商業施設も順次サンデル王国の至るところに展開されていく予定となってます!」

「そ、そんなに凄い商会なのかい!?」

「はい!このお店をお作りくださったオーナー様は、とても凄いお方でして!」

「オーナー様がおられる限り、我が『神の宿り木商会』は絶対に安泰と言い切れる程でございます!」

「お、おおお……」

「じゃ、じゃあこの串焼き屋も、今後はその商会が基盤となるから絶対に安泰ってことでいいのかい?」

「はい、そうです!」

「今後共、ぜひ『神の宿り木商会』とこの串焼き屋を御贔屓願います!」




そして、サンデル王国の王都チェスターにある串焼き屋にももちろん、『神の宿り木商会』の看板が新たに設置され…

日々、店主の作る美味しい串焼きを求めて訪れる常連客の面々が、そのことについて問いかけてくる。


すでに店の看板娘として評判となっている美人売り子達が、嬉々としてこの串焼き屋が、リンが新たに創設する『神の宿り木商会』所属となったことを回答として返していく。

売り子達も、『神の宿り木商会』の一員となれたことがよほど嬉しいのか、元々評判の美人な顔にいつも以上のにこにことした笑顔を浮かべており、それが目を惹くのか、『神の宿り木商会』の看板が設置されてからは、普段以上に串焼き屋に客が入るようになり…

初めてこの店を訪れた客も、その串焼きの美味さに心底幸せそうな笑顔を浮かべながら舌鼓を打ち、そこから口コミでお客がお客を呼ぶこととなり、元々凄まじい勢いで伸びていた売上が、さらに勢いをつけて伸びることとなる。


「(ああ…こんなおれがリン様の『神の宿り木商会』の一員となれるなんて!この店も、『神の宿り木商会』所属になれたから、もう経営に関しては何の不安もないな!だからこそ、おれは今後ももっともっとお客さんに、何よりリン様に喜んでもらえるように、美味い串焼きを作り続けるぞお!!)」


もちろん、串焼き屋の店主も自分の店、そして自分自身が『神の宿り木商会』の一員となれたことを心の底から喜び、誰にも喜んでもらえる美味しい串焼きを作ることに一層精を出している。


リンと『神の宿り木商会』の同胞達が生活空間で作り出し続ける食材、香辛料は種類も非常に豊富で量も大量にあり、ある程度は好きなように使って商品開発をしてもいいと許可をもらっていることもあり、店主は日々、楽しく試行錯誤しながら客に美味しいと思ってもらえる串焼き、それにつけるタレやソースなどの開発を進めていっている。

同胞達が実際に試食して、意見を述べてくれることもあって、店主は順調に新しいタレやソースの開発を進めており、同胞達から太鼓判を押してもらえたものからすぐに自身の串焼き屋のラインナップに加えている。

増産に必要な設備がいる場合はリンがすぐに用意してくれるので、レストラン、宿屋の食堂、冒険者ギルドの食堂でも使われるようになっている。

増産できる量が増え、見込みが立つようなら、そのタレやソースそのものを商品としてジュリア商会で販売したり、ジャスティン商会に卸したりする予定になっている。




「おや?なんだいこの『神の宿り木商会』って看板?」

「はい!我がジュリア商会は、正式にリン様が創設される『神の宿り木商会』の傘下の商会となります!」

「!え!?リン様が商会を起ち上げるのかい!?」

「はい!今後はサンデル王国に順次、ジュリア商会の支店を展開していく予定です!」

「まあ!このジュリア商会もついに大規模商会の仲間入りするのね!」

「それに、リン様の商会の傘下に入れるんならもう何の不安もなさそうじゃない!」

「アタシら、このジュリア商会のおかげで日頃の食べるものにも全然困らなくて、本当にありがたいから、それは嬉しいことだねえ!」

「お客様に喜んで頂けて、嬉しいです!」

「今後共、我が『神の宿り木商会』とジュリア商会を御贔屓に!」

「よろしくお願い致します!」




そして、ジュリア商会も正式に『神の宿り木商会』の傘下の商会となること、それを機に今後はサンデル王国に順次支店を展開していくことを、常連となる女性客達に告知していく。


日々家族の食事を作る主婦や、食材を仕入れる他の系列の宿屋や食堂の関係者は、日頃から上質で種類も豊富な食材を手頃な価格で販売してくれるジュリア商会の存在をとても重宝している為…

そのジュリア商会に強固な経営基盤ができたことを手放しで喜んでいる。

しかも、今後はサンデル王国にも進出していくと聞かされ、日頃から懇意にしているジュリア商会がようやく大規模商会の仲間入りすると、これも素直に喜んでいる。


こうして、リンが会頭となる『神の宿り木商会』は、順調にスタトリンの住民や訪問客に認知されていくこととなり…

その相乗効果で、商会全ての関連施設の売上はさらに伸びていくこととなるのであった。

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