第185話 設立①

「おお…あのお方が…」

「我らの希望となる世界樹をこの世に復活させてくださった…」

「そして…こんな楽園に我らを受け入れ、雇い入れてくださった…」


この日スタトリンに訪れた、二千人もの移民希望者達。

二千人全員が、リンの所有施設での雇用を希望し、簡単な面接の結果、全員を雇い入れることが決まり…

今、その二千人がリンの生活空間にある、従業員達の居住地に案内され、訪れている。


「まあ…、とても優しそうで天使のようなお方…」

「あんなにもお可愛らしいのに、わずか数日で世界樹をかつての巨木の状態にまで復活させてくださる程の魔力をお持ちだなんて…」

「この居住地に住まわれる皆様も、種族関係なくとても温かで優しくて…」

「まさにあの、リン様のおかげ…」


特に獣人達は、この日初めて会うはずのリンのことをしっかりと認識しており…

しかも全員が、リンのことを心から崇拝する神であるかのように見つめている。


「リン様」


この日初めて顔を会わせるはずの獣人達が、まるで自分のことを知っているかのように見つめてくるのを不思議そうに見ているリン。

そこに、移民希望者の獣人の代表として、2mはありそうな長身にスラリとしながらも非常に筋肉質な体躯の馬人族の男が、恭しくリンに声をかけてくる。


「?は、はい?」

「この日、このスタトリンに…そして、リン様がお作り下さったこの楽園に訪れた獣人の全てが、復活を遂げた世界樹より、夢のお告げを頂いております」

「?せ、世界、樹、さ、さん、から、で、ですか?」

「はい。我ら獣人はその性質上、自然と密接な関係にある存在…ゆえに、世界樹はまさに我らにとって平和の象徴…魂の宿り木のような存在…その世界樹から、自分はこの世に再び生を成すことができた…そして、それを成し遂げてくださったのが、リン様…あなた様であることを、我らに夢でお告げをくださったのです」

「!そ、そう、な、なん、で、ですか?」

「はい。そして世界樹を復活させてくださった英雄リン様のおそばで、リン様にお仕えする…その為に、我らはこうして馳せ参じたのであります」


馬人族の男の話によると、世界樹は自身が復活を遂げたこと、そしてそれを成し遂げてくれたリンと言う存在のことを、比較的スタトリンに近い場所で暮らしていた獣人を含む亜人達に、夢を通してお告げを出していた、と言うこと。

さらに、世界樹が安心して幸せに暮らすことのできる、リンのそばで、リンにお仕えして暮らせば、自分達も間違いなく幸せになれるとも言い含めて。


そのお告げを頼りに、自分達はこうしてリンの元へとたどり着き…

さらに他にも多くの亜人達が、このスタトリン…

リンのそば仕えを目指して、集落ごと大移動を繰り広げていると、馬人族の男はつらつらと、幸せそうに話してくる。


「ぼ、ぼく、の、と、ところ、に、そ、そんな、に…」

「この地に訪れただけで、世界樹…そしてリン様の温かで優しい魔力、そしてそこから発される清浄な空気を感じられます。多くの自然に満ち溢れ、誰もが幸せそうに手を取り合って暮らせているこの地…我らもこの地に住居を頂けるだけでなく、真っ当な仕事にも就かせて頂ける…世界樹のお告げは正しかった!リン様…我らは、リン様に心からの忠誠をお誓いし、リン様の手足となって働かせて頂く所存です!」


獣人の者達は、実際にリンの業績管理部隊の者達と面談し…

リンが所有する施設、そして業種の豊富さ、従業員の待遇のよさに、驚きを隠せなかった。

何よりも、そんな条件で獣人の自分達を雇い、受け入れてくれることが何よりも驚きだった。

おまけに、リンが作りだす生活空間で住居までもらえて、そこで暮らしていくことができる。

しかも、種族特有の暮らしがしたいのなら、それも考慮して土地を割り振るし、住居もそれに合わせて建築してくれる。


それだけで、あのお告げは確かなものだと確信することができた。


リンの生活空間で暮らすことができるなら、もうこれからは亜人を狙う悪しき奴隷商会や権力者から隠れて暮らす必要もなくなる。

果てがないと言い切れる程に広大で、世界樹が復活して根付いていることもあって自然に満ち溢れている、とても住み心地のいい世界。


その世界を顕現してくれるリンは、まさに自分達にとって神様以外の何者でもない。


「リン様!食に関することと、皆さんの盾役ならこの豚人族にお任せブヒ!」

「わたし達兎人族は、この容姿を活かして接客と、自慢の聴力を活かした偵察で貢献するです!」

「我ら馬人族は、この健脚と筋力を活かした力仕事、そして配送で貢献致します!そして、この力をリン様を始めとする同胞達全てをお護りする防衛部隊としても活かして参ります!」

「おれ達犬人族は単調作業が得意なのと、この鼻を活かした調査で貢献していくワン!」

「ぼく達猫人族は夜目が利くのと素早さが自慢なので、暗躍と防衛の遊撃隊として力をふるわせて頂くニャン!」

「あたし達狐人族は、魔法の力を活かして農業や他の仕事をお手伝いするのと、防衛部隊の後方支援でも力をふるわせて頂くのです!」


代表として声を上げた馬人族の男を始め、ここに集う獣人達はもう、リンの為に働きたくてたまらない、と言った感じで…

これからの幸せしかない生活に目を輝かせている。


それぞれが得意とする分野があり、しかもそれは人族よりも明らかに優れている為…

誰もがリンの商業施設での力になれるし、同胞達の防衛の要としても信頼が置ける存在となっていくであろう。


「リン様!俺達も獣人の皆さんに負けないよう、リン様と同胞の皆さんに貢献していきます!」

「リン様がお作りになられる食品や物品の数々…あたし達が表に立って精いっぱい売らせて頂きます!」

「リン様がオーナーで、エイレーンさんがギルドマスターとなる冒険者ギルドも、わたし達精いっぱい盛り上げていきます!」

「リン様!」

「リン様!」


この日新たにスタトリンの…

そして、リンの生活空間にある、従業員の居住地の住人となった人族の面々も…

獣人のみんなに負けじと、喜びに満ち溢れた満面の笑顔を浮かべて、力強い宣言をしていく。


元住んでいたところが心無い貴族の領地だった為、ちょっとしたことで職を追われて貧しい生活を余儀なくさせられた者や、重税に耐えられず住処を追われた者など…

この日ここに来た人族も、ほとんどが劣悪な生活を強いられていた者ばかり。

それゆえに、獣人達とも抵抗なくすんなりと打ち解けることができたのだ。


そして、すでにこの居住地で暮らしている先輩従業員達が温かく自分達を迎え入れてくれて…

これからの生活に希望しか見えない状態となっている。




「え、えへへ…み、皆、さん、が、よ、喜んで、く、くれて、ぼ、ぼく、う、嬉しい、です」




そして、この日新たな住人となった人族と獣人達は、自分達の喜びを我が事の様に喜んでくれるリンの天使のような笑顔と言葉に、その心を奪われてしまう。


「ぼ、ぼく、み、皆、さん、に、し、幸せ、に、な、なって、も、もらえる、よ、ように、が、頑張り、ます、ね」


さらに、そんな笑顔でこんな健気なことを言われてしまい…

もうその心は、リンにメロメロになってしまう。

そして…




「「「「「「「「「「「「(絶対に、絶対にリン様の商業施設を盛り上げて、リン様を大陸一の、いや世界一の大富豪にしてみせる!!!!!!)」」」」」」」」」」」」




リンの商業施設を盛り上げ、リンを世界一の大富豪にしようと、全員がその心に誓いを立てるのであった。




――――




「しょ、商会、で、です、か?」

「うむ…そうだよ、リン君」


新たに二千人もの従業員を迎え、ついに二万人と言う大所帯となったリンの商業施設。


産業として広大な農場があり、野菜に果物、茶葉類に香辛料、さらには薬草類となんでもござれのラインナップで、しかもそれらを日に数トンは収穫できている。

加えて畜産業も活発で、家畜の数も種類も非常に豊富、その上生産量も多ければ日にトンに達する程確保できている。

卵や乳も当然ながら豊富に収穫でき、肉に関しては新生冒険者ギルドで常設依頼として、食用可能な害獣指定の魔物の討伐がある為、冒険者達がいくらでも売却してくれるのと、ナイトが中心となる魔の森での狩りも日々順調で、中位以上の魔物を大量に討伐することができているので、肉も日に数トンは確保することができている。

また、それに加えて虫系の魔物をうまく飼育しつつ上質な糸を大量に確保していったり、蜂系の魔物を飼育して上質な蜂蜜を大量に確保していったりと、この辺は自然の中で美食を求めて逞しく生きてきた豚人族が中心となって、産業として成り立たせていっている。

豚人族が加わったおかげで、酒造業もさらに活発になり、酒類の生産量もさらに増加していっている。


製造に関しても、リンの生活空間で採掘できる、非常に豊富な鉱物類を大量に採掘できており、それらを使った武器・防具類はもちろん日用品なども、売れる数よりも作る数の方が上回る程となっている。

もちろん、農場の方で大量に採れる糸をふんだんに使った衣料品も大量に作っており、一般向けから高級品まで、ラインナップも非常に幅広くなっている。

この辺りはドワーフを中心に、鍛冶師や裁縫師が日々活発に、同胞となる他の従業員に意見を求めながら、多種多様に心のままに作り続けている。

さらに製薬に関しても、ドライアドを中心にケア草、マナケア草、そしてマダラ草を始めとする豊富且つ多種な薬草類、そして世界樹の葉と雫を使って、活発に製品開発や製造が行われている。

リンが行なっているミソやショーユを始めとする食品加工も、豚人族を中心に様々な商品開発が行われており、商材としてのラインナップも日に日に増加していっている。

パン屋の方も、店主となるおばさんを筆頭に工房でパン作りができる従業員が増えた為、生産量は激増。

もちろんリンも今まで通り、パンを作っては収納空間に収納しているので、パンの量も日に日に増加していっている。


それ程の量が日に日に生産されていっているのだが、リンには【空間・収納】による収納空間がある為、保管には何の問題もなく、品質も劣化させずに永久に保存することができる。

しかも、収納空間の機能を使えば管理も非常にお手軽なので、思うが儘に作っていっても何一つ無駄にはならない。


サービス業の方も、今となっては数千を超える部屋数を誇り、そのサービスのよさと、それに反比例するような安価さで常に総数の六割~七割以上は部屋が埋まっていて、しかも食堂はいつ見ても満席な程に繁盛している宿屋…

そんな宿屋の食堂と同様に、いつ見ても満席と言える程に繁盛しており、接客もサービスも非常に好評なレストラン…

そのレストランと同等の質を誇る、新生冒険者ギルドの食堂と酒場…

最近では、サンデル王国の王都チェスターにて新規に開店した、もはや名物とさえなっている串焼き屋まである。


不動産業では、こちらも今となっては数千部屋と言う規模となり、その大半が契約されて住人が住み着いている集合住宅も、一部屋あたりの家賃は安いと言えるものだが、その圧倒的な契約数により相当な売上を叩き出している。

加えて、建築業者の部隊もそちらにジャスティン商会からの依頼を主としながらも、最近は直接の依頼が来ることも多くなり、さらに売上は増加していっている。


日々大量に生産されていく商品の販路も、食品系はジュリア商会が担い…

日々開店から閉店まで、常に客で賑わう程の大繁盛となっている。

さらに、鍛冶・衣料品店も冒険者を中心に営業時間中は客が絶えることはなく、こちらも大繁盛が続いている。

さらに主となる販路として、ジャスティン商会に大量の商品を卸している為、生産される商品が無駄になることは決してなく、貴族や富裕層御用達の超高級品もジャスティン商会主導となるオークションでさばいてくれている。


日々の経理や事務などの業績管理も、専門の部隊がいて日々しっかりと管理をしてくれているし、今後はサンデル王国の領地に各商業施設の支店を出していくことが既定路線となっている。

それが実現すれば、今ですら右肩上がり続きな売上が、加速的に増加していくことは間違いないだろう。


ここまでしっかりとした体制があるのに、未だに商会としての看板をあげていないのはもったいない。

そう感じたジャスティンが、リンに自身の商会を起ち上げるように進言してきたのだ。


「リン様の商会!」

「それ、すっごくいいです!」

「飛ぶ鳥を落とす勢いで大繁盛し続けてる、リン様の商業施設を全て一つの商会とするなんて!」

「リン様!ぜひ!ぜひリン様の商会を起こしましょう!」

「各施設の従業員や業績の管理は、今まで通り私達業績管理部隊にお任せください!」

「商会への交渉事も、私達専属秘書が全てさせて頂きます!」

「リン様は、心の赴くままに生産活動と町の相談事の対応をして頂ければ、僕達は凄く嬉しいです!」


その話を横で聞いていた、リンの業績管理部隊の面々が、ジャスティンの進言に『待ってました!』と言わんばかりに食いついてくる。

リンのおかげで、自分達はとても充実した幸せな毎日を送ることができていると、日々感謝の念を捧げている。

そのリンをトップとする商会を起ち上げ、自分達は商会の一員としてリンを支えることができると思うと、もうどうしようもない程に心が躍り、その未来を求めて喜びが溢れかえらんばかりとなってしまう。


「リンちゃんの商会!そうなったら、あたしもリンちゃんの商会の一員になるのね!」

「ボクも、お兄ちゃんの商会のお医者さんになるの!」

「ミリアも、おにいちゃんのしょうかいのいちいん!」

「旦那様!そうなったらウチ、もっともっと旦那様の為に働きます!」

「旦那様!ワタシも!」

「あたいも!」


リリム、リーファ、ミリア、フェリス、ベリア、コティも、リンの商会の一員になれると思うとどうしようもない程の喜びが溢れてくる。

リンの為にもっともっと働ける。

そう思うだけで、心に幸せが満ち溢れてくるのを感じてしまう。


「リンちゃんの商会ができるなら、私の冒険者ギルドもその一員として傘下に納まることになる…リンちゃん!ギルドは私がしっかりと運営していくから、安心してね!商会の決裁や管理も、ぜひ私にさせてほしい!」

「エイレーンさん!ギルドの運営は私達にお任せを!」

「エイレーンさんは、商会全体の運営・管理をメインに動いてください!」

「リン様の商会の一員として、粉骨砕身で働かせて頂きます!」

「私達、リン様の商会の一員になれるなんて…幸せと喜びしかありません!」

「そうか!君達がそう言ってくれるなら安心だ!」


エイレーンも、リンが商会を起こすと言う話に、目を輝かせて喜んでいる。

そして、かつての職場で先輩後輩の関係だった、王国の冒険者ギルドの元秘書達も、新生冒険者ギルドの運営は自分達が担うから、エイレーンにはリンの商会全体の運営・管理をメインにしてほしいと力強く進言してくる。

エイレーンと元秘書達の人並み以上に整った美人な顔には、リンの商会の一員になれると言う喜びと幸せに満ち溢れた笑顔が浮かんでいる。


「リン様!ジュリア商会の運営はこのジュリアが、今まで以上に頑張らせて頂きます!リン様と従業員の皆さんがお作りくださる、素晴らしい商品を売らせて頂く筆頭の販路として、より一層力を入れていきます!」

「ジュリア君!計画変更だ!今着々と進めている各施設の支店の大規模展開だが、リンちゃんが商会を起こして、確かな看板ができてからにしよう!」

「!はい!エイレーンさん!そうすれば、ジュリア商会もリン様の商会の一員として、看板を出すことができますね!」

「その通りだ!冒険者ギルドもそうだし、宿屋、レストラン、パン屋、建築業者…全ての施設に明確に看板を添えて支店を展開していくことができるからな!」

「ああ…どうしましょうエイレーンさん!私、今とても嬉しくて楽しくてたまりません!」

「ふふ…ジュリア君、私もだよ!」


リンの商会を起ち上げると言う話に、ジュリアも嬉々として華が咲き開かんばかりの眩い笑顔を浮かべている。

そこにエイレーンが、リンの各所有施設の大規模展開計画を、リンの商会を起こしてからにしようと宣言。

ジュリアも、自身の商会がリンの商会の一員として看板を掲げることができると、大喜びで賛同。


「リン様の商会を起こすのでしたら、商会の窓口的な場所が必要じゃないですか?エイレーンさん?」

「!そうだな…そこを表向きの他商会や商人との交渉の場として、作っておくのはいいかもだな」

「ですよね!そこにリン様の防衛部隊の隊員さんも常駐してもらって、交渉の席にもついてもらって護衛してもらいましょう!最近は交渉を優位に進めようとして、すぐに荒事に持ち込もうとする商会や商人が多いんです!」

「そうだな!今の防衛部隊には戦闘能力の高い獣人も多くいるから、彼らに護ってもらうのがよさそうだな!」

「エイレーン様!ジュリア様!おもてなしは私達メイド部隊にお任せください!」

「わたし達メイドも、リン様の商会の一員となるのでしたら、そのような雑事はお任せあれ、です!」

「リン様の商会の雑事は、あたし達メイド部隊がさせて頂きます!」

「ふふ…頼もしいな!リンちゃんの商会は有能な人材が豊富でこれからがとても楽しみだな!」


ジュリアとエイレーンが今後の展望を嬉々として話し合っていると、そこにローザを始めとするメイド部隊の面々も加わり…

商会の雑事は自分達に任せてほしいと、力強く宣言してくる。

実際、メイド部隊はジュリア商会やパン屋の売り子に、宿屋やレストランの臨時スタッフ、さらには診療所の受付・事務員補助としても活躍しており…

つい最近ではジャスティン商会の各支店にリンの収納の魔導具を設置すると言う仕事も、きっちりと成し遂げている。

そんなメイド部隊の面々が、リンの商会の縁の下の力持ちとして活躍してくれるのだから、エイレーンは一刻も早くリンの商会を起ち上げたくてたまらなくなってしまう。


「ははは…なんだかもう、リン君の商会ができたような雰囲気になってしまっているな…リン君、見ているだろう?君の商会ができると言うだけで、これ程多くの人が喜んでくれている。君の所の従業員達も、この話を聞けば盛大に喜んでくれること間違いなしだよ」

「そ、そう、です、か?」

「ああ、そうだとも。リン君、ここはもうすでに商会としての形がほぼできあがっている。だから商会として看板を掲げたとしてもやることはほぼ変わらない…どうだい?」


もうすでにリンの商会ができているかのような、お祭り騒ぎな周囲の喜びようにジャスティンは思わず苦笑してしまう。

そして、リンの商会ができることで、これだけの人が喜んでくれることを、ジャスティンはリンに優しい表情と声で言葉にする。

まだ戸惑いの消えないリンに、ジャスティンは最終確認をしてみるが…




「…ぼ、ぼく、み、みんな、が、よ、喜んで、く、くれる、なら、じ、自分、の、しょ、商会、つ、作り、たい、です」




みんなが喜んでくれるなら、やりたい。

自分の商会、作りたい。


その純粋で尊い思いをそのまま、リンは言葉にして返す。


「そうか…君ならそう言ってくれると思っていたよ。君の商会ができて、我がジャスティン商会とより懇意になってくれたら、我が商会の未来は何の憂いもなくなるだろう。私としてもとても嬉しいよ」

「そ、それ、なら、ぼ、ぼく、う、嬉しい、です」

「君の商会の起ち上げ、私もぜひ協力させてもらいたい。と言っても、さっきも言ったように今の時点でほぼ商会としての形ができあがっているから、難しいところは特にないのだがね」

「そ、それ、でも、う、嬉しい、です。あ、あり、がとう、ご、ござい、ます」


他ならぬリン自身が、そのことで喜んでくれる全ての存在の為に自分の商会を起こす決意を固めたことを、ジャスティンは顔を綻ばせながら喜ぶ。

そして、リンの為にも商会の起ち上げに協力し、リンの商会を実現させることをその心に誓うのであった。

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