第175話 勅命⑦

「リン様!改めまして、私はセバスと申します!このサンデル王国の守護神様となりますリン様にお仕えさせて頂けること、光栄の極みでございます!国王陛下と王妃殿下…そしてリン様の為に、この老骨に鞭打ってでもお仕え致します!!」

「リン様…自己紹介が遅れまして、申し訳ございません。私はアンと申します。このサンデル王国の守護神様でありますリン様にお仕えさせて頂けること、最高の誉でございます!リン様のおそばで、リン様の為に尽くしてまいりますので、以後、どうぞよろしくお願い致します♡」




名前:セバス

種族:人族

性別:男

年齢:59

HP:876/876

MP:0/0

筋力:512

敏捷:404

防御:564

知力:387

器用:365

称号:王家の執事、勇者リンの執事

技能:格闘・4

   家事・4(料理、掃除、整理)

   算術・4

※各ステータス値は、各称号の影響を受けていない本来の数値。


名前:アン

種族:人族

性別:女

年齢:20

HP:406/406

MP:501/501

筋力:276

敏捷:645

防御:182

知力:567

器用:501

称号:王家の侍女、勇者リンの侍女

技能:魔法・3(土)

   暗器・4

   家事・4(料理、洗浄、掃除、裁縫、整理)

   算術・4

※各ステータス値は、各称号の影響を受けていない本来の数値。




称号

・王家の執事

王家直属の執事の任に着いた者が与えられる称号。

執事の任に着いている限り、全ステータスの値が基準値の30%増加する。

また、執事の任務全般に対する処理能力が大幅に向上する。


・王家の侍女

王家直属の侍女の任に着いた者が与えられる称号。

侍女の任に着いている限り、全ステータスの値が基準値の30%増加する。

また、侍女の任務全般に対する処理能力が大幅に向上する。


・勇者リンの執事

勇者リンの執事の任に着いた者が与えられる称号。

全ステータスの値が基準値の30%増加する。

勇者リンへの忠誠度、敬愛度が高まれば高まる程ステータス値の上昇率が増加する。


・勇者リンの侍女

勇者リンの侍女の任に着いた者が与えられる称号。

全ステータスの値が基準値の30%増加する。

勇者リンへの忠誠度、敬愛度が高まれば高まる程ステータス値の上昇率が増加する。




技能

・暗器

暗器を使った戦闘が得意になる。

レベルが上がれば上がる程、扱える暗器の種類が増え、熟練度も上がる。




国王マクスデルの命により、以後はリン専属の執事と侍女として仕えることとなる、セバスとアン。


セバスはマクスデルが国王となる前から、王家に仕えていた古株の執事。

王家内の従者の長としてその辣腕をふるい、長年に渡って王家の屋台骨を支え続けてきた功労者でもある。

年齢もあり、さすがに若かりし頃のような力はないものの、それでも戦闘能力に関してはかなりのものであり…

シルバーランク冒険者程度の者なら二~三人程度は余裕であしらえる程に強い。

加えて、王城内の管理能力も高く、執事だから当然であるとは言えるものの非常に礼儀正しく来客対応も安心感に満ち溢れている。

さらには調査能力にも長けており、諜報活動もお手の物。

他の執事、侍女の信頼も厚く、間違いなく有能と言える存在である。


アンはまだ若い侍女ではあるものの、若干十歳の頃から王家直轄の暗部で活動をしていた。

技能【家事】のレベルも高く、種類も豊富で家事全般も得意であり…

深い色合いの紫に染まる背中を覆う長い髪に、一つ一つのパーツが非常に整った、精巧に作られた人形のような顔立ち、さらには男ウケするメリハリのあるボディラインと、その容姿のよさも買われ、十五歳になってからは王家、主にエリーゼ付の侍女として勤めている。

高い敏捷性による素早さと、その侍女服の至る所に仕込んでいる暗器の数々を使いこなし…

まさに暗殺者としての能力が高く、エリーゼの護衛も兼ねている。

それゆえに、自身が傷を負うことが非常に多かったのだが、その傷全てをリンに癒してもらい、元の美しい肌となったことで、リンへの信奉心、忠誠心、愛情はもうこれ以上ない程に満ち溢れており…

この度リンの専属として仕えることになり、それを心の底から喜んでいる。


「あ、あの…」

「?どうか、されましたか?リン様?」

「?リン様?」

「ぼ、ぼく、じゃ、な、なくて、い、今、まで、通り、こ、国王、へ、陛下、に、お、お仕え、し、して、く、くれ、たら…」

「!!リ、リン様は私のような老骨は不要と申されるのですか……」

「!!わ、私では、リン様のおそばにはいさせて頂けないのでしょうか……」

「!!ち、違い、ます。セ、セバス、さん、と、ア、アン、さん、み、みたい、な、ゆ、有能、な、か、方、が、ぼ、ぼく、な、なんか、に、お、お仕え、し、して、も、もらう、な、なんて…」

「何をおっしゃいますかリン様!!リン様は、ご自分がどれ程尊く、かけがえのない存在かご存じではないのですか!!」

「!!え、え?」

「そうです、リン様!!リン様はまさにこの世に顕現された神様のようなお方…私はもう、リン様のお力でこの身も心もお救い頂きました!!先程も申し上げましたが、リン様にお仕えさせて頂けるのは、最上の誉です!!ぜひ、いかようにも私共をお使い頂けたら…リン様のお役に立たせて頂ければ、私は幸せ以外の何物でもありません!!」


まさか王家直属の従者達…

それも、間違いなく中心として働く重要人物が二人も自分に仕えるなどと話が進んでしまい、リンは自分にそんなことをしてもらうのは申し訳なくなってしまう。


そんなリンの言葉に、セバスとアンは自分達では役不足なのかとショックを受けてしまい、それを見たリンは慌ててそんなことなどなく、むしろ自分に二人のような有能な人物が仕えてもらうのが申し訳ない、と言うのだが…

セバスとアンは、リンが自分がどれ程の存在か自覚がないことを知り、おためごかしなどない、心の底からの言葉でリンがどれ程神様のような存在なのかを、熱くぶつけてくる。


「あ、うう…」

「ははは…リン様。この二人はリン様にお仕えさせて頂けることが幸せでたまらないのですよ」

「そうですわ、リン様。リン様程のお方にお仕えさせて頂けるなんて…わたくしも幸せ過ぎて、どうにかなってしまいそうですもの♡」

「ぼ、ぼく、そ、そんな…」

「リン君。君のその力に、私もどれ程救ってもらったことか…リン君は紛れもなく英雄であり、この世の救世主なんだよ」

「ジャ、ジャスティン、さん、ま、まで…」

「…ほほう、先程から見ていて思ったのだが、ジャスティンはずいぶんとリン様と親しいようだな」

「そうですな、陛下。私は数年ほど前からリン君との縁を得て、今ではリン君の拠点で生活を共にしております」

「!な、なんと…」

「まあ、羨ましい…わたくしもリン様と、生活を共にしたいですわ♡」


セバスとアンの二人の熱にたじたじのリン。

そこに、マクスデルとエリーゼが微笑みを浮かべながら、リンがどれ程の存在なのかを、優しい口調で言葉にしてくる。

さらにはジャスティンまでもが、リンを持ち上げるような発言をしてくる為、リンはいたたまれなくて困った表情を浮かべてしまう。


そして、ジャスティンのリンと生活を共にしていると言う言葉に、マクスデルは驚き、エリーゼは自分もリンと生活を共にしたいと口にしてしまう。


「ジャスティン、リン様の拠点とやらはどうなのだ?とても住み心地がよさそうな印象しかないのだが…」

「どうなのですか?ジャスティンさん?」

「ははは…お察しの通りとても広くて快適で、いつまでも住んでいたいと思える程の拠点でございます」

「おお!やはりか!」

「今はそこにエイレーン殿とリリーシア殿下も住まわれてまして、私を含むスタトリンの代表と、スタトリンの運営に関わる人材が集まり、実質上のスタトリンの運営拠点となっております」

「まあ…とても風通しがよさそう…末端までの連携もスムースに行なえそうで、羨ましいですわ」

「後はリン君が所有・運営する施設、設備、サービス…そして新たに発足した冒険者ギルドの経営・管理の拠点ともなってますので、スタトリンでは非常に重要な拠点となっております」

「!なんと…このサンデル王国で言う、この王城のような存在なのか…」

「その通りでございます。しかも外から探したのではまず見つからず、例え見つかったとして住人以外には出入口を開くことすらできず、その上中位の魔物の攻撃程度では物ともしない強固な防御結界に護られているので、誰もが安心して暮らすことができ…私を含め住人達は日々喜びと幸せに満ち溢れております」

「!そ、それ程の拠点を、リン様は一体…」

「その拠点も、全てリン君が一人で作り上げたものです。リン君の戦闘能力は神の領域と言い切れる程ですが、生産・構築能力も同様に神の領域と言い切れる程です」

「!なんと!…」

「!まあ…リン様は本当に神様のようなお方ですのね…♡」


ジャスティンが何気なしに口にしたリンの拠点について、マクスデルもエリーゼも興味津々となっている。

会話にこそ参加はしていないものの、セバスとアンもとても興味津々。


ジャスティンは、ある程度なら話してしまって構わないだろうと言う範囲に絞って、リンの拠点のことをマクスデル達に伝えていく。

さりげなく、自分はそこに住まわせてもらっていることを強調しているのだが。


ジャスティンから伝えられたリンの拠点のこと…

そして、それ程に快適で高機能な拠点をリンが一人で作り上げたこと…

それらの事実に、マクスデルもエリーゼも改めて、リンがこの世に顕現した神であることを実感させられてしまう。

すぐそばで聞き耳を立てていたセバスとアンも同様にリンがこの世に顕現した神であると改めて実感させられ、同時に何が何でもリンのそばでお仕えしたいと言う思いが強くなっていく。


「さて…リン君」

「?は、はい?」

「どうだろう?国王陛下と王妃殿下は君との友好の橋渡しと言う意味合いも込めて、セバスさんとアンさんを君の傍仕えにしたいとおっしゃっておられる。であれば、君の拠点にセバスさんとアンさんに来てもらうことは、スタトリンとサンデル王国にとっても今後の良き未来につながる、とてもいいことだと思うのだよ」

「!そ、そう、な、なん、で、ですね…」

「ああ。そしてお二人にはこれまでのように、殿動いてもらえるようにする…これはリン君、君ならば可能だろう?」

「!は、はい」

「さすがはリン君だ。さて、ではここからの話し合いは私が主となり、陛下と交渉させて頂こう。君とのやりとりこそこのような気心知れたものだが、私も本心では君と言う神にお仕えさせて頂いている…その思いで常に君の傍にいるのだから…君の為にも、私は直接の交渉役として、君のお役に立たせてもらうよ」

「あ、あり、がとう、ご、ござい、ます」


マクスデル達の様子を伺い、プレゼンは十分だと判断したジャスティン。

ここでジャスティンはリンの方へと向き直り、セバスとアンが傍仕えになることにあまり乗り気ではないリンに、そうすることによってお互いの今後の関係がよくなると強調して話をする。

そして、セバスとアンの二人をリンの傍にのみ置くのではなく、今まで通りマクスデルとエリーゼの傍仕えとしても活躍してもらうようにすることを提案する。


そんなジャスティンの言葉に、リンはおろおろとしていた様子がなくなり、スタトリンとサンデル王国のみんなが幸せになれると思うと自然とその顔に笑顔が浮かんでくる。


天使のように可愛らしい、嬉しそうな笑顔を浮かべているリンを見て、ジャスティンも最愛の息子を見るような微笑みを浮かべ…

改めて、マクスデルの方に向き直る。


「陛下、これは私からのご提案なのですが…」

「む?」

「陛下も王妃殿下も、この国にとってなくてはならない、非常に重要な御身…そして、セバスさんとアンさんは、その御身を傍仕えとして守護すべき重要な人材…いくら今後の発展を願う国交の為とは言え、セバスさんとアンさんを簡単にリン君の傍仕えにするのは、いかがなものかと」

「!む、むう…」

「そ、それは確かに…」


ジャスティンの指摘に、マクスデルもエリーゼも苦い顔をしてしまう。

もうすでにリンの傍仕えになる気でいたセバスとアンは、さらに苦い顔をしてしまっている。


「それでしたら、陛下と王妃殿下のお住まいを、かと私は愚考致します」

「!そ、そのような場所が、存在するのか!?」

「ジャスティンさん、本当なのですか!?」

「はい。それも、そのような場所でございます」

「お、おおお……」

「そ、それが本当なのでしたら、ぜひお願いしたいですわ…」


その身の安全が保証される場所。

国王であるマクスデル、第一王妃であるエリーゼには、たとえ王城の中であろうとそのような場所は存在しない。

敵は、身内にも必ず一定数存在しているからだ。

現にマクスデルもエリーゼも、ここ最近は食事に毒を混入されたり、王城内を歩いていたところに殺傷能力の高い武器が落ちてくる、などと言う事態に出くわしている。

それも、決して少なくない頻度で。


そんな状況に身を置いているマクスデルとエリーゼからすれば、ジャスティンの提案はすぐにでも飛びつきたい…

それ程に魅力的なものとなっている。


「加えて、そちらにセバスさんとアンさんも来て頂ければ、お二人に陛下と王妃殿下の傍で仕えて頂けますし…となります」


そんな二人にジャスティンが付け加えたこの言葉。

この一言の威力は、絶大なるものとなった。


「!と、と言うことは…」

「わたくし達の身の安全が保証される場所…それはリン様もおられる場所、と言うことですか!?」

「いかにも」

「お、おおおおお!!」

「わ、わたくし達も、リン様のおそばにいさせて頂けるのですね!!」


王族である自分達の身の安全が保証される場所。

それが、リンも普段からいる場所だと聞かされ…

マクスデルとエリーゼはもちろんのこと、セバスとアンも心からの喜びをその顔に浮かべている。


「リン君、私が今、陛下と王妃陛下に話した提案の内容なのだが――――」


ジャスティンは、リンの耳元でリンだけに伝わるように…

自分が考えた提案の内容を、丁寧にリンに説明していく。


そして、それが実現可能であるかをリンに確認する。


「は、はい。そ、それは、ぼ、ぼく、で、でき、ます」

「そうか!やはり君は凄いなあ…では、陛下と王妃殿下、そしてセバスさんとアンさんを受け入れることになるが…いいかね?」

「は、はい。ぼ、ぼく、だ、だい、じょ、じょう、ぶ、です」

「ありがとうリン君。君にはいつもこうして助けてもらってばかりだ…このお礼は必ずするから、楽しみにしていてほしい」

「ぼ、ぼく、お、お礼、な、なんて…」

「君にお礼をさせてもらえることが、私にとっての喜びであり、幸せなのだよ。だから、受け取ってくれるね?」

「!あ、あう……」


ジャスティンの説明をきちんと理解し、それが可能であることをジャスティンに回答するリン。

リンの能力を考慮すれば可能だとジャスティンは確信はしていたのだが、こうして当のリンからきちんと返答をもらえると、なおのこと安心できる。


そして、いつもいつもその神を彷彿させる能力で自分を助けてくれるリンに、何が何でもお礼をしたくてたまらなくなり…

ジャスティンは、少し意地悪な言い回しでリンにお礼をすることを宣言、そしてそのお礼の内容をとても楽し気に考え始めるので、あった。

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