第168話 集結⑩

「ほ、本当なのかそれ!?」

「はい。リン様ご自身、非常に優れた建築の技能と【土】魔法の使い手でして…ご自身で経営されている施設も全て、リン様ご自身がお作りになられたものです。さらには、そのリン様がオーナーとして出資されている建築業者もおり、そこの職人の方々もかなりの腕前です」

「す、すげえ……しかし、土地は……」

「ご心配なく。土地は我がジャスティン商会が店舗として最適な場所を確保致します。それが決まり次第、リン様もしくはお抱えの建築業者に、店舗の建設を依頼することとなります」

「!!ジャ、ジャスティン商会まで動いてくれるのか……」

「あと、今はご自身の家をお持ちでしょうか?」

「え?いや、さすがにそんな余裕はなくてな…安宿で宿泊してるよ」

「でしたら、店舗と併せてあなたのご自宅も提供致します」

「!!マ、マジで!?」

「はい。そのご自宅の場所は、リン様の元で働く他の従業員も住んでいる場所ですので」

「!!え?え?ってことは、ここじゃなくて他のところで店やることになるのか?」

「いいえ。提供するご自宅からわずかな時間で、このチェスターに作る店舗に移動が可能です。それも、リン様の技能によって可能となる話です」

「!!あ、あの坊ちゃん、神様か何かか?すげえ、なんてもんじゃねえな…」

「串焼きのお店で使われる食材は全て、リン様が提供してくださいます。今お使いのフォレストブルはもちろん、ボアの肉もリン様は大量にお持ちですから、レパートリーを増やしたいのでしたら、ご相談頂きましたらお使い頂けるように致します」

「!!い、今までおれが狩りで肉は調達してたんだが、それも不要になるってことか!!」

「はい。売上の配分についてですが…五割をリン様に還元。ただし店の維持と食材、必要な資材は全てリン様が負担となります。ですので、残りの五割は全てあなたの利益となります。加えて、リン様が経営される施設の無料利用権、販売スペースでの割引優待もついてきます」

「!!そ、そんな好条件で、おれに店やらせてくれるのか?」

「はい。リン様は常に従業員の幸せを第一に考えて下さるお方ですから」

「!!ね、願ってもねえ!!おれああの坊ちゃん…リン様に一生ついていくぜ!」

「快い回答、ありがとうございます。あと、これはお願いになりますが…」

「?まだ、なんかあんのか?」

「あなたの串焼きで使われている、あの特製のタレ…あれを大量に作ることは可能でしょうか?」

「ああ…あれか。あれは結構手間かけてるからな…材料と設備さえ揃えば一気に作ることもできるが…そうでないと難しいな…」

「それでしたら、あのタレを作る設備も作りましょう。材料はリン様がお抱えになっている食材・食品の種類は非常に豊富ですので、そちらを一度ご確認頂ければ揃うかもしれません。リン様は農業の技能もお持ちで、今ですと日に数十トンもの作物の生産が可能ですし、戦闘能力も非常に高く、魔物の狩りもお手の物です。おまけに解体の技術は超一流…揃わない食品はないと思われます」

「!リ、リン様はどこまで凄ければ気が済むんだ?本当に神様じゃねえのか?」

「そうですね…私は本当に、この世に顕現してくださった神様だと思っております」

「だ、だよな?」

「話を戻します。もしあなたがよろしければ、設備を整えて増産が可能となったタレを、リン様がオーナーとなられます、宿屋の食堂とレストラン、冒険者ギルドの食堂で使わせて頂ければ、と思っております。加えて、製造量が十分であれば、それ自体を商品として販売させて頂ければ、非常にありがたく思います。もちろん、製造者はあなたであることを刻印し、あなたの権利として主張致します」

「!マ、マジか!?お、おれ一人の為に、そこまでしてくれるのか?」

「それだけの価値があると私は思っておりますし、なにより、リン様があなたとあなたの作る串焼きをとてもお気に召されたのです。あ、言い忘れてましたが、経営の管理自体は私含むリン様の業績管理部隊がさせて頂きますし、後は販売スタッフとして常勤が可能な店員を雇わせて頂きます。ですので、あなたはあのとても美味しい串焼きとタレを作ることに専念して頂けるかと」

「!い、至れり尽くせりすぎる!これを袖にするなんて正気の沙汰じゃねえ!リン様!イリスさん!こんなの、こっちからお願いしてえくれえだ!よろしく頼みます!」

「ふふ…こちらこそ、よろしくお願い致します」

「ぼ、ぼく、お、おじ、さん、が、お、お店、し、して、くれる、の、す、すっごく、嬉しい、です。あ、あり、がとう、ご、ござい、ます」

「!!(なんて…なんて心の奇麗な優しいお方なんだ!!おれあぜってえこのお方についていく!!このお方の為なら、何だってやってやる!!)とんでもねえです!!おれの方こそ、ここまでしてくれて嬉しいですぜ!!リン様の為なら、串焼きもタレもいくらでも作りますぜ!!ありがとうございます!!」


リンのジャスティン商会の支店行脚の最後の支店となるチェスター支店。

王都の、しかも王城が間近にある店舗と言うことで、他の支店よりも規模が大きく、総合商社としてのイメージが強くなっている。


そのチェスター支店にいくつかある応接室の一つで、まず先にこのチェスター支店に来るまでにリンが出会った串焼き屋台の主。

その手で作ってくれる串焼きも、人柄もリンはとても気に入り…

その彼の為に店舗を作りたい、と自ら主に提案する。


その一言に戸惑う主に、リンの専属秘書となるイリスが今後の詳細を詰めていき…

聞けば聞く程破格の条件に、主は戸惑いつつも乗らない手はないと、二つ返事で承諾の意を示す。

主が自分の提供する店舗で串焼き屋をやると宣言してくれて、リンはとても嬉しそうに微笑み、お礼の言葉まで贈る。

その笑顔と言葉に主はますます感激し、これからはリンの為にいくらでも串焼きとタレを作っていこうと、その心に誓う。


「イ、イリス、さん」

「?はい?」

「ぼ、ぼく、の、か、代わり、に、お、おじ、さん、に、お、お話、して、くれて、あ、あり、がとう、ご、ござい、ます」

「!いいえ!私、リン様のお役に立てて本当に嬉しいです!これからもこのイリス、リン様の専属秘書として粉骨砕身取り組ませて頂きます!」


そして、コミュ障で言葉がおぼつかない自分に代わって、屋台の主と話をまとめてくれたイリスにも、リンは笑顔でお礼の言葉を贈る。

リンが喜んでくれているのが嬉しくてたまらず、イリスは花が咲き開かんばかりの眩い笑顔を浮かべて、喜ぶのであった。




――――




「会頭!!お話はすでに伺っております!!」

「このチェスターに近い支店の職員が、わざわざこのチェスター支店まで訪れて、事の次第を全て連絡してくれております!!」

「我が商会にとって大恩ある賓客のリン様が、我が商会の職員をもリン様がお作りになられた世界に住まわせて頂ける、と!!」

「あたし達はすでに引っ越しの準備はできております!!この支店は家持ちの職員はおりませんので、全員が宿暮らしですから!!」

「月に金貨一枚程の天引きで、天国のような世界に住まわせて頂けて、持ち家まで頂ける…おまけに、サンデル王国中にある我が商会の支店のどこにでも行き来が可能になるとか!!」

「リン様の世界を活用させて頂いた、他の支店の施策も聞いております!!商会の専門部隊の力をより活かしつつ、さらに売上も伸ばせていると!!」

「先に設置して頂いた、リン様の収納の魔道具のおかげで、支店の業務は驚く程改善されて経費は大幅に削減、売上は増大!!」

「ここは王都であるゆえ、他国の商人も多く訪れる商機のチャンスだらけのところ!!リン様の高級商材も、我々が主催するオークションで毎回驚く程の高値で取引されております!!」

「このチェスターでは、多くの情報を得ることができます!!リン様に有利になる情報は常に確保しております!!」

「会頭!!すぐにでもこのチェスター支店に、リン様の作られた世界への出入り口を!!」


リンとイリスが、串焼きの屋台の主と店舗を出すことに関して詳細を詰めている最中…

先にリンの生活空間に誘導された、チェスター近辺の支店の職員が、ジャスティンが今回決断した施策について全容を詳細に連絡してくれており、チェスター支店の職員はもう全員がリンの生活空間に引っ越すことを心に決めている。

そして、今後はリンの生活空間を活用した施策で支店をさらに盛り上げると同時に、大恩あるリンの為に、リンに有利になる情報も常に確保し、チェスター支店で主催するオークションも、よりリンの高級商材を高値で取引していこうと、活気に満ち溢れている。


「驚いたな…まさかすでにリン君の生活空間のことについて聞いていたとは」


まさか自分達が来るよりも先に、チェスター近辺の職員がこのチェスター支店に連絡してくれていたとは露ほども思わず、ジャスティンは驚きつつも商会の職員の結束の強さに顔が綻んでしまう。


しかも、チェスター支店の職員は人口が多くて住宅区に空き地が少なく、しかもあったとしても土地も高い為、全員持ち家がなく、宿暮らしをしていることもあり、すでに引っ越しの準備として自分達の荷物を、リンの収納の魔道具が設置されたことでまるまる空いている地下の倉庫に運び込んでいる、とのこと。

これなら、イリスにその荷物を収納してもらうまでもなく、リンがその地下の倉庫に生活空間への出入り口を開き、そこからそのまま各自で生活空間に運び込んでもらえば引っ越しはすぐに済むだろう。

各自宿暮らしだったのなら、そこまで荷物は多くはないはずだし、多いようならイリスが借り受けている収納の魔道具で運べばいいだけ。


「しかも、このチェスターの商業区で評判の串焼き屋台!!」

「あそこの店主を、リン様が直々にスカウトされて、リン様所有の店舗を作られるとか!!」

「肉の焼き加減が絶妙で、しかも店主特製のあのタレが絶品なのよね!!」

「一人でも多く食べてもらいたい、という店主の信念もあって、ほとんど原価と言えるような価格で販売していたとか…商売人としては誉められたものではないが、人柄は本当に素晴らしい!!」

「リン様がオーナーとなってくださるなら、絶対にいい店舗になる未来しか見えませんな!!」

「ははは…今そのことについて、イリス君が話をまとめてくれているよ。イリス君はリン君の専属秘書だからね」

「イリスさん羨ましいです!!わたしもリン様の専属秘書になりたいです!!」

「あたしもなりたいです!!」


後はリンが、このチェスター支店に生活空間への出入り口を開くだけ。

それを待ちながら、このチェスターの商業区で評判となっている串焼き屋台の件について、わいわいと話し合っている。


実はこのチェスター支店の職員も、その串焼き屋台をひいきにしており…

多いと毎食分買って食べている者もいる程。


一体どんな内容で話がまとまるのか。

それが楽しみで仕方なくて、うきうきとしている職員の様子に、ジャスティンは苦笑を浮かべている。


「会頭、串焼き屋さんとの話がまとまりました」


そこに、リンを連れたイリスが姿を現す。

相変わらず、必要もないのにリンの小さな左手を、自身の右手で指を絡めて握っており…

自分は、リンの専属秘書であることを地味にアピールしていることが伺える。


「おお!そうか!それで、どのような内容になったのかね?」

「はい、それは――――」


イリスは、串焼き屋の主人とまとめた話の内容を、丁寧にジャスティンに説明していく。


それを横で聞いていた職員達は、その破格の内容に驚きを隠せなくなってしまう。


「す、すげえ!!リン様って、本当にすげえ!!」

「もうこれで串焼き屋さんは安泰ね!!」

「しかもあの絶品のタレ…増産に成功したら、それ自体を商品化して販売するとか!!」

「てことは、またリン様のところから売れ筋間違いなしの商品が!!」

「ああ~!!また商品のラインナップが増えるの楽しみ~!!」


間違いなく、今よりも遥かに好待遇で、しかも串焼きのラインアップも増えるであろうその内容に、職員達はこれから串焼き屋で買って食べるのがますます楽しみになってしまう。

しかも、売れているにも関わらず、いつ経営破綻で屋台を畳んでもおかしくない状況だった為、確実にしかもかなりの利益が確約されていることには、本当に安心してしまう。

さらには、あの絶品のタレそのものを商品化、と言う話まで出てきており、それがジャスティン商会の支店でも取り扱えるようになるなら、間違いなく売れ筋の商品となる未来しか見えず、職員達はわいわいと喜びを隠せない。


「こ、このお方がリン様…」

「リン様!!この度はわたし達ジャスティン商会の職員を、リン様の作られる世界にお招き頂き、誠にありがとうございます!!」

「リン様が卸してくださる商品はどれも素晴らしく、大繁盛しております!!」

「リン様は、我が商会をこれ以上ない程に豊かにしてくださっております!!我ら一同、リン様のお役に立てるよう、今後とも精進してまいります!!」

「リン様!!あたしもイリスさんのように、リン様の専属秘書になりたいです!!」

「リン様!!リン様は我が商会唯一の賓客であります!!我らはリン様を最愛の家族のようにおもてなし致しますので、ぜひご自宅だと思って、気軽においでくださいね!!」


そして、商会の連絡網で話そのものは知っていたが、実際に会うのは初めてとなるリン本人。

職員達は、思っていたよりも幼く小さく華奢なその姿に驚きつつも、ジャスティン商会をこれ以上ない程に豊かにしてくれた恩人中の恩人に会えたことに感激し、誰もがリンを称え、最大級のおもてなしを以て接しようと心に誓う。


「ぼ、ぼく、み、皆さん、が、よ、喜んで、く、くれて、す、凄く、う、嬉しい、です」


コミュ障ゆえのおぼつかない口調で、チェスター支店の職員がとても喜んでくれているのが嬉しいことを、リンは可愛らしい笑顔と共に伝えてくる。


そんなリンが、まさにこの世に舞い降りてきた天使としか思えなくなってしまい…

職員達は、感激のあまりリンのそばでリンに跪いて、リンに絶対の忠誠を誓ってしまう。


「うふふ…リン様は本当に誰からも愛されますね…こんなにも愛されて…私、嫉妬しちゃいそうです♡」

「ははは…リン君は我が商会の誰にも認められ、愛されているなあ…リン君はまさに我が商会の救世主であり、天使だよ」


あっという間に、この時初めて会ったばかりのチェスター支店の職員に、これでもかと言う程に愛されているリンを見て、ジャスティンもイリスも笑顔が浮かんでくる。


「さて…ではリン君。この支店は地下に倉庫があるから、そこにリン君の生活空間への出入り口を開いてもらって、いいかな?」

「は、はい。わ、わかり、ました」


そして、ここまでの支店行脚でやってきたように…

チェスター支店の職員の案内で地下の倉庫に移動し、ジャスティン、イリス、支店の職員が見守る中…

リンは、自身の生活空間にある、ジャスティン商会職員の居住地への出入り口を開く。


そして、驚きと興奮を抱きながら、リンの先導で全員が生活空間へと入っていく。


「お、おおお…」

「な、なんて澄んだ空気…それに雰囲気も穏やかで…」

「しかも、まるで一つの町になっているじゃないか!」

「おまけに、商会の経理・事務関連の施設に会議室…医療部隊の研究所に護衛部隊の本部…しかもあれって、全店共通のバックヤードか!!」

「あたし達、こんな素敵な世界にお家をもらえるのね!!」

「ここと同じように、いくつも出入口が開いてる…あそこから、他の支店にも行けるってことなのね!!」

「みんな凄く活気付いてて…積極的に意見交換までしてる!!」

「しかもここ、リン様の技能で作られた世界ってことは…日頃からリン様のお護りを頂けるってことか!!」


すでに千数百人規模の町となっている居住地…

それも、商会の有用な関連施設がいくつも作られていて、すでにここに住んでいる職員達が、とても楽しそうに仕事をしているのを見て、チェスター支店の職員は感動を覚えてしまう。


居住地を護るかのように聳え立つ、自然の恵みが豊富な山に、そこから流れてくる清浄な川。

とても住み心地がよさそうで、ここに自分の自宅をもらえるなんて、これからの生活がとても楽しみになってくる。


「お!チェスター支店の職員の方ですね!」

「あっし達、リン様お抱えの建築業者の者です!」

「ジャスティン商会の建築部門の方々から、依頼と設計を頂いてるので、わし達が皆さんの家を建てさせてもらいますわ!」


そして、すでにチェスター支店の職員がこの居住地に来ると言う連絡を受けていた、リンの建築業者の職人達が、ここで暮らす為の家を建てようと準備万端の状態で待ち構えていた。


そして、もらっていた設計を元に、手早く家の建築を始めていく。


「わあ~…凄いスピードで家が建てられていくわ!」

「それも、見てるだけで凄くしっかりした造りなのが分かるし!」

「リン様のところには、こんな凄い職人さんの集団もいるのね!」


自分達がこの居住地で暮らす家が、職人達の手によって普通なら考えられない程の速度で作り上げられていくのを見て、ここに来たばかりのチェスター支店の職員達はまたしても感動を覚えてしまう。


完成した家から中も見せてもらい、とても利便性が高く住み心地もよさそうで、職員達は嬉しい笑顔が絶えないでいる。


これで、ジャスティン商会の職員全てが、この居住地に集結したことになり…

リンのジャスティン商会の支店行脚も、これを以て終了となる。


「ぼ、ぼく、く、串、焼き、の、お、おじ、さん、を、ぼく、の、じゅ、従業員、さん、の、住んでる、と、ところ、に、あ、案内、して、き、きますね」


そしてリンは、ジャスティンとイリスにそう断りを入れ、そそくさと串焼き屋台の主を自身の商業施設で働く従業員の居住地に招き入れに行く。




「お、おおお…こ、ここで住まわせてもらえるなんて…」


リンの誘導で、リンの生活空間にある、リンの商業施設の従業員が暮らす居住地に入ってきた串焼き屋の主は、自然と清浄な空気に満ち溢れ、一つの都市クラスにまで大きくなっている居住地を見て、感動のあまり震えてしまっている。


純粋な人族のみならず、亜人含む多くの種族が手を取り合って、とても幸せそうに楽しそうに生活しながら、リンの商業施設での仕事に勤しむその光景。

これから、自分もこの輪の中に入れてもらえると思うと、串焼き屋の主はとても楽しく幸せな未来しか見えなくなってくる。


「あ!リン様が新しい人、連れてきたわ!」

「リン様が直々に連れてこられたんだ!凄くいい人なんだろう!」

「ようこそ!リン様の元で働く者達の居住地へ!」


しかも、こちらに気づいた従業員達が、とても嬉しそうに自分を迎えてくれて…

優しく居住地にある施設や農場、住宅区や設備のことも教えてくれて…

串焼き屋の主は、まるで天国に入り込んだかのような錯覚すら覚えてしまう。


そして、王都チェスターで串焼きの屋台をやっていること。

それを食べてくれたリンが絶賛してくれて、自分の人柄も気に入ってくれて、自分に串焼きの店舗を作ると言ってくれたこと。

そして、この居住地に自分を迎え入れてくれたことを、自己紹介として伝える。


「リン様が絶賛なんて、凄く美味しそう!」

「僕達でよければ、いくらでも手伝うよ!」

「スタトリンにはフォレストブルはもちろん、ボア系統の魔物も非常に多く生息しておるからのう!リン様がオーナーとなる冒険者ギルドでは常設依頼とされてて、所属する冒険者達が狩ってくれるから、いくらでもあるぞい!」

「農作物はここにある農場に、スタトリンにある農場、後はこの世界でリン様のお住まいがあるところにも農場があるから、種類も量もめちゃくちゃあるよ!」

「あ、ありがとうございます!これから、よろしくお願いします!」


この居住地に住む誰もかれもが、とても優しく温かく接してくれて…

串焼き屋の主は、自分も彼らの為に目いっぱい働こうと、喜びが心に溢れてくる。


「け、建築、ぎょ、業者、の、み、皆さん、が、い、今、いない、ので、ぼ、ぼく、が、お、おじ、さん、の、お家、と、く、串焼き、の、為、の、せ、設備、を、つ、作り、ますね」

「!リ…リン様が自ら…あ、ありがとうございます!」

「あ、あと、お、おじ、さん、と、特製、の、タレ、を、つ、作る、た、為、の、せ、設備、も、つ、作る、んで、ひ、必要、な、も、もの、お、教えて、も、もらって、も、い、いい、ですか?」

「!分かりました!何から何まで、本当にありがとうございます!」


そして、建築業者の面々が全員、ジャスティン商会の居住地の方に出払っているので、串焼き屋の主の家、そして串焼きとタレの製造に必要な設備はリンが作ることになった。

この空間を店舗のバックヤードとし、普段はここで店に出す串焼きを作ってもらう形で運用してもらい、店は収納の魔道具を置いて販売スペースとし、たまに主も顔を出せるようにすればいいかな、とリンは考える。

そのリンが瞬く間に家と串焼き用の設備、そして自分と相談しつつタレの製造設備を作り上げてくれて…

串焼き屋の主は盛大に驚きつつも、リンに最上の感謝の念を抱くので、あった。

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