第167話 集結⑨

「これはこれは、ジャスティン会頭!」

「ご無沙汰しております!」


関所でのチェスター入りの待ち合いをしていたリン達一行。

その待ち時間も終わり、ついにリン達の手続きの番となる。


ジャスティンの姿を目の当たりにした衛兵達は、それまでがピリピリとした雰囲気だったのが、それがまるで嘘だったかのように愛想のいい笑顔を浮かべて、対応に入っている。


「ジャスティン会頭でしたら、あちらの方で手続きをさせて頂きましたのに!」

「何も、ここでお待ちにならなくてもよかったのですよ?」


この王都チェスターの関所は二つあり、一つはこれと言った身分を持たない平民用。

もう一つは、貴族などの権力者専用がある。

こちらは、国から発行されている貴族籍や王籍の証明書…

また、非常に稀ではあるのだが有力貴族や王族からの紹介状があれば問題なく通ることができる。

手続きも平民と比べて非常に簡素に済ませられることもあり、待ち時間もまず発生しない。


ジャスティンは貴族籍を持たない平民の枠の人間ではあるものの…

国の経済の活性化と言う、非常に大きな貢献をしてきたと言うことと、今後もよき関係を築いていきたいと言う思いから、国王であるマクスデル直々にジャスティンに対して、自らの署名入りの紹介状を発行している為…

権力者用の関所で手続きをしても何の問題もない。


「ははは…一介の平民に過ぎない私が、これと言って急ぎでもないのにあそこを使うのはやはり気が引けるからね」

「何をおっしゃいますか!ジャスティン会頭!」

「会頭のような我が国の貢献者であればこそ、国王陛下が直々に紹介状を発行してくださったのではないですか!」

「我々も、王命としてジャスティン会頭を公爵クラスの貴族として扱うように頂いております!」

「会頭はいわば国賓そのものなのですから!」

「ささ!不肖ながらこの私めが、会頭とそのお連れ様方をあちらにて手続きさせて頂きます!」


自分は平民であり、特別な存在ではないと言う思いが強いジャスティンは、むやみやたらにその紹介状を使うことをよく思っておらず…

王族や貴族からの至急の呼び出しや交渉の席など、急ぎの要件でなければ普段は平民用の関所に並ぶようにしている。


だが、王命としてジャスティンを貴族として扱うように徹底されている衛兵達は、そんなジャスティンを見る度に貴族用の関所に丁重に案内し、手続きをするようにしている。

衛兵達も、たった一代で国の経済を活性化させられる程の大商会を築き、今なお国内でもトップの牙城を崩すことなく、右肩上がりの経営を続けているジャスティンを心から尊敬している。

加えて、一介の衛兵に過ぎない自分達を来る度に労い、時には土産物までくれるからなおのこと慕っているのだ。


「あの人が…ジャスティン商会の会頭…」

「貴族と同等の扱いされてるのに、全然偉ぶってないし…」

「噂に聞いてた通りの人格者だな…」


ジャスティン一行の後方に並んでいる民達は、実際のジャスティンを目の当たりにして、噂で聞いていた通りの人格者だと称賛し始める。


実際、ジャスティン商会は経営破綻必至の状況まで追い込まれた商会や個人経営の店舗を、自商会の系列にしたり、どうにもならない場合は一度店を畳ませてから商会の職員として雇用するなどして、幾度となく救ってきた。

もちろん、それをするのは会頭であるジャスティン自身がその人を見極め、お客様の為に最善を尽くしてくれるであろう人格を備えていることが条件となるのだが…

それでも、そんなジャスティンに救われてきた商会や商人の方が圧倒的に多い為、商業界ではジャスティンはまさに救世主とされているのである。


「む…目立つのは好ましくないな…手間を取らせて申し訳ない。それではよろしくお願いするよ」

「は!では、こちらの方に!」


ジャスティン自身も自己顕示欲や承認欲求と言ったものからかけ離れた性格をしており、目立つことを好まない。

この場で無闇に目立ってしまっているのと、そのせいで関所の仕事が滞ってしまうのはよろしくないと思い、ジャスティンはすぐに切り替えて貴族用の関所で手続きをすることにした。


そして一人の衛兵が、ジャスティン達を貴族用の関所に丁重に案内する。


「会頭、お連れ様ですが…もしやこのチェスターに来るのは初めてでしょうか?」

「ああ、そうなんだよ」

「やはりそうでしたか…これ程の美人でしたら、忘れたくても忘れられないでしょうから」

「ははは…彼女は我が商会の有能な職員でね。彼女にはこの私も随分助けられているよ」

「!なんと!美人な上に有能とは…さすがはジャスティン商会の職員ですな。して、もう一人の少年は…」

「ああ、彼は我が商会にこれ以上ない程の利益をもたらし、大いなる貢献をしてくれている、筆頭の取引先だよ」

「!!な、なんと……失礼ながら、まだ十歳程にお見えするのですが…」

「彼は少し実年齢よりも幼く見えるからね…それでもまだ十四歳なのだが」

「!それでも、まだ成人に至ってすらないのですか…」

「彼は非常に優秀でね。詳細は話せないが、ありとあらゆる分野で飛びぬけた能力を持っていてね…我が商会では私はもちろん、どの職員も彼を称賛し、敬意すら抱いているよ。だから、我が商会唯一の賓客として、最上の扱いをさせてもらっているんだ」

「!!そ、それ程のお方なのですか!?」

「そうだよ。ちなみに彼に寄り添っている彼女は、日頃のお礼の一部として、我が商会から専属秘書として派遣しているんだ。日々多忙な彼の支えになってくれるようにね」

「!!あ、あの美人が……せ、専属秘書……」


貴族用の関所に案内中の衛兵は、世間話がてらジャスティンが連れているリンとイリスについて聞いてみることにした。


イリスがこの王都チェスターに置いても、人の目を惹く美人であり、しかも会頭であるジャスティン直々に有能だと聞かされて、感嘆の声をあげてしまう。

そして、ぱっと見十歳程のみすぼらしい少年にしか見えないリンが、あのジャスティン商会に最大級の貢献をしている筆頭の取引先であり、商会唯一の賓客であると聞かされ…

衛兵は、その思考が驚愕の渦に巻き込まれてしまっている。

さらに、極上の美人であるイリスがリンの専属秘書として、商会から派遣されていると聞き、驚愕の渦がますます激しくなってしまう。


リンに寄り添っているイリスが、決して嫌々リンの専属秘書になっておらず、むしろ溢れんばかりの好意を抱いていることが、とても幸せそうな微笑みまで浮かべてリンの手を指を絡めて握っている様子ですぐに分かってしまう。


「会頭の紹介状を確認させて頂きました…国王陛下の署名が本物であることも確認致しました」

「では、通ってもいいのかね?」

「はい!あと、お連れの方々のお名前を頂戴してもよろしいでしょうか?」

「はい、私はイリスと申します」

「女性の方がイリス様、ですね…ありがとうございます。で、そちらの方は…」

「ぼ、ぼく、リ、リン、って、い、言います」


瞬間、手続きをしていた衛兵の時が止まる。

リンの名前を聞いた途端に、まるで身体の全ての機能がオフになってしまったかのように。


「……ま、まさか……あ、あの!リン様とおっしゃいました、よね?」

「は、はい」

「も、もしかして、ス、スタトリンから、来られたのでしょうか?」

「?は、はい。そ、そう、です」

「も、もしや、け、建築などを嗜まれていたり…」

「ぼ、ぼく、け、建築、も、で、です、けど、も、物作り、ぜ、全部、だ、大好き、です」

「………………」


符号が、合い過ぎる。

万が一の為に、マクスデルが関所の衛兵にも伝えていた人物像と、目の前の少年が。


コミュ障で、人との会話が苦手な為、口調がおぼつかない。

スタトリンを拠点とし、そこで多くの便利施設や設備、サービスを構築している。

そして、その人物が持つ、リンと言う名前。


国王マクスデルが、探し求めている人物と、何もかもが一致している。


「?……どうか、したのかね?」


そんな衛兵の様子をおかしく思ったジャスティンが、未だ固まったままの衛兵に声をかける。


「……!い、いえ!し、失礼致しました!」

「?……リン君に、何か問題でもあるのかね?」

「いえ!何も問題など、ございません!会頭が身分を証明してくださるのでしたら、なおさらです!」

「そ、そうか……それならばいいのだが……」


リンのことに気を取られて、ジャスティンがかけてくれた声にも反応が遅れてしまった衛兵。

しかし、そこからはなんとか立て直し、何事もなかったかのように応対をする。


「そ、それでは、全ての確認が終了致しましたので!どうぞ、お通り下さい!」

「あ、ああ…ありがとう」

「お勤め、ご苦労様です。ありがとうございます」

「お、お疲れ、様、で、です。あ、あり、がとう、ご、ござい、ます」


全ての手続きを終え、衛兵はリン達一行を王都チェスターへと招き入れる。

先程の明らかにおかしい様子に、ジャスティンは腑に落ちない感覚を覚えながらも、そのままチェスターに入っていく。

そのジャスティンにイリスもリンもついて行く。

手続きをしてくれた衛兵に、丁寧にお礼の言葉を贈って。


衛兵は、そんな三人を笑顔で見送り…

自身の視界から三人が見えなくなった、その瞬間――――




「…これは、大至急陛下に報告せねば!!」




血相を変えて、大慌てで国王であるマクスデルに報告しようと動き始める。


国王が今、是が非でもと探し求めている、三人の人物。

その内の一人であり、その中でも最も重要度の高い人物。


未曾有の大氾濫からたった一人でスタトリンを救い、多くの施設、設備、サービスを構築して急激に発展させた…

スタトリンにとっては英雄であり、神のような存在。

その存在が、この王都チェスターに姿を現した。


緩やかに衰退を続ける、このサンデル王国の救世主となるであろう人物。

国王からは、万が一この王都に姿を現したならばすぐに報告し、国賓を迎えるつもりで丁重に扱え、と厳命を受けている。


リンのことを国王に伝えるべく、衛兵はすぐさま詰所に戻り、国王への報告書を作成し始めるので、あった。




――――




「わあ~………」


十四年と言う、リンがこの世に生を受けてからの年月。

その年月の中で、チェスターのような広い都市に来るのはまさに初めて。


今でこそかなり整備されたものの、それでもまだまだ田舎の町、と言う雰囲気が抜けきらないスタトリンに比べ…

このチェスターは広く整備された街道と、美しく規則的に並べられた、芸術品とも言える建造物がまさに圧巻となっている。


都市の中心に聳え立つ王城から東西南北の四つに区画がされており…


北が、貴族などの有力な者達が暮らす貴族区。

東が、商会や店舗などが立ち並び、商売が活発に行われている商業区。

南が、一般の民達が暮らす住宅区。

西が、鍛冶や魔導具の製造、錬金による製薬や素材の開発が行われている開発区。


この四つに、分類されている。


ちなみに、国内の冒険者ギルドの総本山となる本部は、チェスターの商業区にあり…

ここで冒険者ギルド全体の統括がなされている。

最も、今の冒険者ギルドは有能な職員のほとんどと、登録済みの冒険者の大半を失っており…

百五十あった支部もどんどん閉鎖されてしまって、とうとう半数を割る七十にまで激減してしまい、ギルドの機能の大半が麻痺状態に陥っていて、このままではギルドそのものの崩壊は避けられない状況にまで、追い込まれている。


リン達一行が目指す、ジャスティン商会のチェスター支店もこの商業区にあり…

今はそこを通っている。


その中で、所狭しと並ぶ様々な店舗にリンはとても興味津々となっており…

きょろきょろと、周囲を楽しそうに見回している。


「ははは…リン君がとても楽しそうにしてるね」

「リン様、楽しいですか?」

「は、はい!は、初めて、み、見る、もの、ば、ばかり、で、す、すごく、た、楽しい、です!」

「そうかそうか…リン君がそんなにも喜んでくれてよかったよ」

「ああ…リン様がこんなにも喜ばれて…私、とても嬉しいです♡」


子供らしい無邪気な笑顔を浮かべて、とても楽しそうにチェスターの商業区の街並みを眺めているリンがとても可愛らしくて、ジャスティンの顔に微笑ましいと言う笑顔が浮かんでおり…

イリスはリンが喜ぶ姿があまりにも嬉しくて、ついつい自分の右手で恋人つなぎをしているリンの左手をきゅっと強く握ってしまう。


「お!そこの可愛い坊ちゃん!フォレストブルの串焼きはどうだい!?」

「!わ、わ~…お、美味し、そう…」

「うめえぞ~!おっちゃんが作った、特製のタレをたっぷりつけてるからな!」


そんなリンに、武骨だが愛想のいい笑顔を浮かべている中年男性から、自身の屋台への呼び込みがかかる。


屋台の主が販売している、フォレストブルの肉を一口サイズに切って、食欲をそそる匂い漂うタレにつけて串焼きにしているもの。

リンはそれを目をキラキラとさせながら見つめている。


屋台の主も、とても素直で純粋そうなリンに好感を抱いているのか、愛想のいい笑顔を崩すことなく話しかけている。


「うむ…せっかくリン君が欲しがっているんだ。主人、三つもらおうか」

「!これはこれは、ジャスティン商会の会頭さんじゃねえですか!毎度御贔屓にしてもらって、ありがたいですぜ!」

「いやいや、ここの串焼きは本当に美味しいからね。私も商会の人間に勧めたくなるんだよ」

「いや~!天下のジャスティン商会の会頭さんにそんなこと言ってもらえたら、めちゃくちゃありがたいですわ!そこの美人さんは、会頭さんのとこの職員さんで?」

「はい。イリスと申します」

「さすがは会頭さんのとこの職員さん!いや~、惚れ惚れする程の美人さんだね~!」

「まあ…お上手ですこと」

「いやいや!あんたみてえな美人さんが来てくれるなら、もういつでもおまけしたくなっちゃうよ!」

「ふふ…ありがとうございます」

「がはは!ちなみにこの坊ちゃんは、もしや会頭さんのお子さんで?」

「残念ながら、そうではないんだよ…この子は、我が商会の賓客であり、筆頭の取引先なんだ」

「!!??え!?この坊ちゃんが!?」

「ああ。詳細は言えないが、この子はありとあらゆる分野で飛びぬけて優秀なんだ。我が商会のメインの商品も、今はこの子が提供してくれるものが大半になってるよ」

「はあ~~~~~~~!!!!坊ちゃん!!あんたこんなに小せえのにすげえんだな!!ジャスティン商会の会頭さんがここまでべた褒めするなんてな!!そんなすげえ坊ちゃんなら、お近づきのしるしってやつで一本サービスするよ!」

「!あ、あり、が、とう、ご、ござい、ます!」

「ははは!!よかったら今後もおっちゃんの屋台、贔屓にしてくれよ!!坊ちゃんがお勧めしてくれたら、うちはすっげえ繁盛しそうな気がするよ!!」


屋台の主が笑顔で渡してくれた串焼きを、無邪気な笑顔で受け取るリン。

そんなリンが可愛いのか、屋台の主の顔に心からの笑顔が浮かぶ。


「はむ……!こ、これ、す、すっごく、お、美味、しい、です」

「そうかそうか!!坊ちゃんがうめえって言ってくれたんなら、繁盛間違いなしだな!!」


受け取った串焼きを一口食べた瞬間、リンの口の中に甘辛い美味が溶けるように広がっていく。

肉の焼き加減も絶妙で、柔らかすぎず硬すぎずの程よい噛み応えとなっており、主特製のタレがその肉のよさを最大限に引き出している。


「うむ…やはりこの串焼きは絶品だな」

「まあ…本当に美味しいです。お肉の焼き加減も絶妙で…このタレがもっと食欲をそそります」

「ははは!天下のジャステイン商会の会頭さんと有能美人さんにまでお褒めの言葉をもらえたなら、今後繁盛間違いなしでさあ!」


ジャスティンとイリスも、串焼きをとても美味しそうに頬張っており…

それを見て、屋台の主はますますご機嫌になっていく。


「しかし主人…これ程の串焼きが出せるのなら、屋台ではなく思い切って店舗を構えてみてはどうかね?」

「あ~…そうしたいのはやまやまなんですがね~…」

「?何か、問題でもあるのかね?」

「おらあ、この串焼きを一人でも多くの人に食って、喜んでもらいてえんでさあ…だから…」

「なるほど…こんなにも絶品なのに妙に安いとは思っていたのだが…この価格設定、かなり無理してるみたいだね」

「ははは…おらあ金勘定ってやつがどうも苦手でして…」


こんなにも美味しい串焼きを出せるなら、店舗を構えても成功の可能性の方が高い。

そう思ったジャスティンからの、何気ない一言だったのだが…


主が利益をかなり度外視して、お金のない者にも食べてもらえるようにと、相当に価格を抑えて販売している、と言うことが発覚。

その心意気は素晴らしいのだが、商売人としては致命的な欠陥を抱えてしまっていると言うことが、ジャスティンにも分かってしまった。


「…お、おじ、さん」

「?どうした?坊ちゃん?」

「お、おじ、さん、の、く、串焼き、す、すっごく、お、美味し、かった、です。ぼ、ぼく、だ、大好き、に、な、なり、ました」

「!そうかそうか!坊ちゃんがそこまで気に入ってくれて、おっちゃんすげえ嬉しいよ!」

「だ、だから――――」




「――――お、おじ、さん、の、お、お店、ぼ、ぼく、が、つ、作り、ます」




リンのその一言。

それを聞いた瞬間、主は自分が何を言われているのか、まるで分からなかった。


店を、作る?

この、小さい坊ちゃんが?

一体、何を言ってるんだ?


疑問で、頭がぐるぐる回って混乱してしまう。


「ははは…全く、リン君は底抜けに優しいなあ…」

「リン様…ここからは専属秘書の私にお任せくださいませ」


リンの一言に、ジャスティンは微笑ましいと言わんばかりの笑顔を浮かべ…

イリスはすかさず、リンからこの件の説明と交渉をすべく、屋台の主の向かい合う。


「…え、え~と…こ、この坊ちゃん、一体何を言ってるんだ?」

「そのまま、言葉通りです。リン様は、あなたの串焼きと人柄が本当に気に入られたので、あなたのオーナーとして、店舗を提供するとおっしゃられております」

「!!ほ、本当、なのか?…」

「はい。リン様はすでに宿屋、農場、レストラン、鍛冶・衣料品店、診療所など…いくつもの施設の経営をなされており…しかもそのどれも大繁盛しております」

「!!そ、そこまですげえ坊ちゃんなのか…」

「…おそらく閉店には少し早い時間かもしれませんが…よろしければ、この件の詳細を詰めさせて頂きたいので、お時間を頂戴できますでしょうか?我が商会のチェスター支店で、リン様も交えてお話を進めさせていただきたく思います」

「!!だ、大丈夫だ!!実はあんたらに出したのが、今日の最後の串焼きだったんだ。だからもう店じまいするだけだったからよ!!」

「でしたら好都合です。それでは、まいりましょう」


おぼつかない口調ではあるものの、とても純粋で奇麗な心の持ち主なのがすぐに分かる少年。

その少年に自慢の串焼きをサービスしたら、まさか店舗を作ってもらえるなんて。

しかも、オーナーとして出資までしてくれるなんて。


店舗を構えたい主としては、突然舞い込んできた、千載一遇のチャンス。

ましてや、少年がやり手の経営者だと言うのなら、なおのこと乗らない手はない。


主は、すぐさま屋台を片付けると、ちょうどチェスター支店に向かうところだったリン達一向に着いていった。

その心に、子供のような希望に満ち溢れた、わくわくとした気持ちを抱えて。

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