第165話 集結⑦

「ミリアお姉ちゃん!ボクリーファ!よろしくね!」

「ミリアちゃん!ワタシベリア!よろしく!」

「ミリアちゃん!あたいコティ!よろしくな!」


もはやスタトリンにとって重要な運営基地となっている、リンの拠点。

キーデンで偶然出会い、両親もいない孤児と言うことでリンが家族として迎え入れることとなったミリア。


しかも、ミリアが教会の権威と勢力増大の為にいいように利用され続けてきた聖女であることも判明し…

そのミリアが行方不明になったことで、教会のキーデン支部は間違いなくミリアを血眼になって捜索していることが容易に想像できる。

その為、ジャスティン商会のキーデン支店の職員を、リンの生活空間に受け入れられたこともあり、この日はいつもの拠点にミリアを連れてジャスティン、イリスと共に帰ってきたのだ。


「リーファちゃん!ベリアおねえちゃん!コティおねえちゃん!」


拠点の家族の中で、ミリアと最も年齢の近いリーファ、ベリア、コティがすぐさまミリアと仲良くなり、四人の美少女が実の姉妹のように笑顔で触れ合っている。


ミリアが最も懐いているのはリンで、その次にフェルになるのだが…

この拠点に住む者は誰もが優しくミリアを迎え入れてくれたこともあり、ミリアは教会によって感情を失う程ひどい状態だったのが嘘のように、リンの家族達には心を開いてくれている。


「しかし…教会が歴代最高峰とまで称賛する『奇跡の聖女』まで、リンちゃんの家族になるとは…」

「リン様って、本当に凄いですね…」

「ふん、教会が提唱するような教会に都合のよすぎる神と違って、リンは本物の神々に溺愛されている、このスタトリンの神じゃからな。聖女ならリンについてくるのは必然と言えるのじゃ」


エイレーン、リリーシアはミリアが聖女…

それも、教会が歴代最高峰と称する『奇跡の聖女』であり、それ程の存在がこの拠点に来てくれたことを驚き…

シェリルは、教会都合で提唱された胡散臭い神と違い、本物の神々に溺愛されているこのスタトリンの神、リンがいるなら、それは当然のこととさらっと言い切ってしまう。


「こんな、こんなにも可愛らしい聖女様を虐げるなんて…教会ってなんてところなの!」

「許せない!絶対に返してなんかあげないんだから!」

「ミリア様!わたし達リン様のメイドが、これからミリア様のお世話をさせて頂きます!」

「リン様がそうされるように、私達もミリア様をお護りさせて頂きます!」

「もうこうなったら一日でも早く、リン様を崇拝させて頂く為の教会を起こさないと!」

「このスタトリンだったら、住んでる人全員が入信してくれるもん!」

「で、ミリア様にその教会の聖女様になって頂いて!」

「リン様とミリア様が揃ってくれる教会なんて、希望しか見えないわ!」


そして、とても天真爛漫で可愛らしいミリアを利用し、虐げ続けてきた教会に激しい憤りを感じ…

何があってもミリアを護り、お世話をしていこうと活気に満ち溢れるメイド達。


さらには、ミリアを可愛がろうと優しく交互に抱きしめながら、リンを神として崇拝する教会を新たに起こそう、などと言いだしており…

その教会でミリアが聖女となってくれたら、少なくともこのスタトリンで暮らす民なら誰もが入信してくれると確信が持ててしまう。


「…おにいちゃんがかみさまの、きょうかい?」

「はい!そうです!」

「リン様はあたし達の神様ですから!」

「ミリア様がそこで聖女様になってくださったら、誰もが幸せにしかならないです!」

「ミリア、おにいちゃんがかみさまのきょうかい、ほしい!」

「!ですよね!ミリア様!」

「これはもう、ジャスティン様、エイレーン様、リリーシア様に進言させて頂かないと!」

「えへへ♡おねえちゃんたちすっごくやさしくて、ミリアうれしい!」

「ミリア様…なんてお可愛らしいの…♡」

「ミリア様の笑顔…絶対に護らせて頂きます!」


聖女と言うだけで、ずっと監禁状態にされてきた教会と違い、リンの拠点は誰もがとても優しくて、幸せに満ち溢れている。

ミリアは、もしリンを神として崇拝する教会ができたらと思うと、それはもう天国以外の何者でもないと言う気持ちでいっぱいになり…

リンを崇拝する為の教会が欲しいと、その素直な気持ちを言葉にする。


とても天真爛漫で可愛らしい笑顔を浮かべてミリアがそう言うところを見て、メイド部隊の面々もますますミリアを可愛がってしまう。

リンがジャスティン商会の職員を生活空間に誘導する為、この拠点を留守にしているので、メイド部隊はもちろん、拠点で暮らす者達は新たに迎え入れた家族となるミリアを護ろうとその心に誓うのであった。




――――




「おおお…ここがリン様がお作りになられた世界…!」

「これからは僕達も、ここで暮らさせて頂けるんですね!」

「すでに他の支店の同胞もここで…」


キーデン支店の職員達の誘導を終え、キーデンを後にしたリン達一向は…

続々と他の支店の職員の誘導も進めていっている。


サンデル王国の最北端からじょじょに南下する形で、次々と生活空間への誘導と引っ越しを実施し、各店舗と生活空間の居住地をつないで、居住地から各店舗への移動もできるようにしていっている。




「これからは…我が商会はこの地を拠点に、同胞達と一致団結して商売に勤しむことができるのか…」

「しかも転勤なしで、他の支店の勤務も可能となるとは…」

「その上、我が商会唯一の賓客であり、最大手の取引先となられるリン様とは、会頭自らが直接交渉されて、あの優れた商品の数々を卸して頂けるなどと…」

「王都の支店がこの地とつながれば、リン様がお持ちの超高級商材のオークションも品質を落とすことなく臨むことができるようになる…」

「ああ…リン様は真に神様のようなお方…」

「我らにこの地を貸し出してくださった、偉大なるリン様の大恩に報いる為にも…」

「リン様の商材を多くのお客様に販売させて頂くのみならず、リン様が優位になる情報を一つでも多く仕入れておかねば!」


一つ、また一つと、支店の職員が揃ってリンの生活空間の居住地に揃うごとに…

職員達の団結度が強固なものとなっていく。

愛する家族と共に、この楽園のような居住地で暮らすことができるようになった職員は、より家族との絆も深まっている。

この幸せしかない世界に、自分達を迎え入れてくれたリンを、職員達はまさに神聖視しており…

リンの為に、リンが喜ぶことをしようと心に誓う。


「イリスさんが羨ましいわあ…」

「リン様の専属秘書だなんて…」

「あたしもリン様の専属秘書として、リン様のお役に立ちたいです!」


女性職員達は、イリスがリンの専属秘書として商会から無期限で出向していると聞かされ…

自分もリンの専属秘書になりたいと、心から願うようになってしまっている。


自分達をこんなにも幸せしかない世界に導いて、絶対と言える程の守護を与えてくれて…

しかも、自分達が喜ぶとそれを我が事のように喜んでくれるリンに、心からお仕えしたいと女性職員達は強く望んでいる。


リンの生活空間に増えていくジャスティン商会の職員。

その誰もが、リンの為に何かをしたいと思い…

リンの利益になることは何か、一致団結して考えていくのであった。




――――




「リン君の手料理は本当に美味しいなあ…何度食べても飽きないよ」

「リン様の手料理…とても美味しいです!…はあ…幸せ…♡」


キーデン支店の職員を、リンの生活空間に誘導してから一週間。

それから順調に他の支店の職員の誘導も進めており、サンデル王国の北部の支店の職員は全て、リンの生活空間に移住し、そこから普段勤務する支店の方に勤めながら、これまでまるで縁のなかったスタトリンの本店や他の支店にも、勤務するようになっている。


また、キーデン支店には案の定、聖女であるミリアの行方を追って…

教会のキーデン支部の神官達が問い合わせに来ていた。

だが、そもそもその姿を見たことがないどころか、声すら聞いたことがない人物に心当たりなどないと、支店の職員がきっぱりと答えたこともあり…

教会の神官達は、すごすごと立ち去っている。


この日もジャスティン商会の職員を、リンの生活空間に誘導し終えたリン達一行は…次の支店を目指してある程度移動し、街道から外れた森の中で、リンが【土】属性の魔法で作り上げた簡易拠点で宿を取っている。

キッチンも風呂もトイレもあり、寝室も三人で暮らすには過ぎた広さを持っている為、寄った先の宿屋に泊まるよりも遥かに快適な空間となっている。

当然、この簡易拠点にはリンの【空間・結界】が付与されており、魔物や盗賊などの攻撃などびくともせず、防犯性も極めて高い。

さらにはリンの【闇】属性による隠蔽の魔法で拠点自体を見えなくしている為、なおのこと安全性が高くなっている。


家事全般にはまるで縁のないジャスティン、仕事はできるが実は家事全般が不得意なイリスに、リンはその料理の腕を振るって美味しい料理を作っていく。

今のリンの収納空間には、ありとあらゆる食材が豊富に揃っており、どんなものでも作ることができるので、リンもとても楽しく料理することができている。


この日の献立は細かく切った野菜と肉とコメを、塩と胡椒とショウユをちょうどいい塩梅で混ぜて炒めたものと、リンの生活空間で獲れた魚を塩とショウユで焼いた焼き魚。

シンプルだがその味は絶品であり、ジャスティンもイリスもリンが作ってくれた料理を幸せそうに食べ続けている。


「え、えへへ…お、美味しい、って、い、言って、も、もらえて、ぼ、ぼく、う、嬉しい、です」


二人が自分の作った料理をとても美味しく食べてくれているのを見て、リンはとても嬉しくなってくる。

その天使のようなにこにことした笑顔は、見ている者の心を癒してくれるであろう、そんな力が備わっている。

当然、リンのことが大好きなジャスティンとイリスは、リンのそんな笑顔にもうメロメロの状態となっている。


「いやあ…本当に美味しかったよ。リン君、いつもこんなにも美味しい料理を食べさせてくれて、本当にありがとう」

「リン様…いつもこんな美味しい料理を作ってくださって、本当にありがとうございます♡」

「よ、喜んで、も、もら、えて、ぼ、ぼく、嬉しい、です」


食事を終えたジャスティンとイリスが、いつものようにリンに心からのお礼を言ってくる。

その言葉が嬉しくて、リンはまた嬉しそうな笑顔を浮かべている。


そして、食器を【浄化】で綺麗にして収納空間に収納し、自身の作業空間でミソ、ショウユ、トウフなどの食品や、薬品や金物などの生産に勤しみ始める。

ごみの再生は、作業空間に配置している召喚獣が、収納空間にごみが収納される度に再生作業をしてくれているので、特にリンがすることはなくなっている。

しかも召喚獣は、リンが魔力を供給し続ける限りずっと動いていられるので長時間の作業も問題なくこなすことができる。


「さて…リン君が作業に入り始めたし、私は先に風呂に入らせてもらうとするよ」

「承知致しました、会頭。私はリン様のおそばで、リン様を見守らせて頂きます」

「ああ、よろしく頼むよ」


リンが自身の作業空間を持っていて、その中で生産活動に勤しんでいることは、すでにジャスティンもイリスも知っている。

その為、リンが作業モードに入ったならその邪魔をしない、と言うのが共通認識となっており…

ジャスティンはその間に風呂に入りに行き、イリスはリンのそばでリンを見守ることにした。


こうして、リンとイリスは二人きりの状態となる。


「(うふふ…リン様と二人きり…♡…はあ…真面目な表情のリン様もとても素敵でお可愛らしくて…私…私…♡)」


真剣な表情で目を閉じたまま、自身の作業空間で生産活動に勤しんでいるリンの姿に、イリスは心をきゅうんとさせられてしまう。

そんなリンを独り占めすることができて、イリスはとても幸せな気持ちに浸ることができている。


そうして、イリスがリンを独り占めして幸せな気持ちに浸ること数十分。

リンが作業を終え、その意識を現実の方に回帰させる。


「…うん。今日もいっぱいできた。?あ、あれ?イ、イリス、さん?」

「(はあ…無邪気なリン様の笑顔…可愛すぎます…♡)リン様…今日もいっぱい生産されたのですか?」

「は、はい…」

「よかったです。リン様の生産活動は我が商会はもちろん、スタトリンに住む多くの方々の幸せにつながっておりますから…その活動が円滑で私、とても嬉しいです♡」

「そ、それ、なら、ぼ、ぼく、う、嬉しい、です」


リンとこうして他愛もない会話ができるだけでも、イリスは幸せ過ぎてたまらない。

普段は理知的でクールな美女であるイリスだが、この時は見る者の目を奪う程に美しく、ほわほわとした笑顔を浮かべて喜んでいる。


「お、今日の生産活動は終わったのかい?」

「は、はい」

「そうか…君の生産活動には、私も含め多くの者が幸せをもらっているからね。いつもいつも本当にありがとう」

「え、えへへ…ぼ、ぼく、う、嬉しい、です」


風呂から上がって、この日の疲れも汚れも落としてさっぱりとしたジャスティンも、リンの生産活動には常日頃から幸せをもらっていると、心からのお礼の言葉を述べる。

その言葉に、リンはとても嬉しそうな笑顔を浮かべて喜ぶ。


「さあ、リン様」

「?は、はい?」

「今から私と、お風呂に入りましょう♡」

「!ぼ、ぼく、ひ、一人、で…」

「私、リン様と一緒に入らせて頂けたらとても幸せで嬉しいのですが…だめ、でしょうか?」

「!あ、うう…」

「リン様…私とは、お嫌ですか?」

「そ、そんな、こと、は…」

「私…リン様のお背中、流させて頂きたいです…」

「う、うう……わ、わかり、ま、ました…」

「!嬉しいです!ありがとうございます!リン様♡」


イリスのずるいおねだりに、結局リンは抗うことができず…

イリスと共に風呂に入ることを承諾してしまう。

その承諾に、イリスはこの世の全ての幸せを独り占めできたかのような笑顔を浮かべて喜んでしまう。


「さあ、リン様♡私がお風呂で、リン様のお世話をさせて頂きますね♡」

「う、うう…」


イリスのような美人なお姉さんと一緒に風呂に入ることがとても恥ずかしくて…

リンはその顔を真っ赤に染めてしまう。

そんなリンがとても可愛くて、イリスはリンの手を握って風呂場へと連れて行ってしまう。


「ははは…あのイリス君がここまで積極的になるとはなあ…さすがは、リン君だな」


いくら相手が幼いとは言え、異性を相手にここまで積極的に一緒に風呂に入ろうと促すイリスなど、普段ならまず見られないもの。

それを目の当たりにして、ジャスティンは面白いものを見られたと言わんばかりの愉快そうな表情を浮かべている。


「さあ、リン様♡ぬぎぬぎしましょうね♡」

「ぼ、ぼく、じ、自分、で…」

「だめです♡私が、リン様を脱がせて差し上げたいのです♡」


脱衣所に入り、すでに衣服を脱いで裸になっているイリスが、その見事なプロポーションを惜しげもなく露わにしながら、恥ずかしくて俯いているリンの衣服を脱がせていく。


普段は見られることのない…

リンの小さく華奢な身体。

ぷにぷにすべすべの奇麗な肌。

その小さな背中を覆う長い黒髪。


それらが全て、イリスの視界に映ってくる。


「はあ…こんなに小さく華奢なお身体で…あんなにもお強いなんて…♡」

「ぼ、ぼく…は、恥ず、かしい、です…あ、あん、まり、み、見な、いで…」

「生まれたままのリン様…凄く素敵です…♡…私、もう…♡」


一糸纏わぬ、生まれたままの姿になったリンを見て、イリスはもう蕩けるような表情を浮かべてしまっている。

リンがいやいやをするように恥じらっているのがあまりにも可愛すぎて、イリスの瞳の奥には止めどなく溢れてくる愛情が形として浮かんでしまっている。


「リン様…♡…このイリスが、リン様を奇麗にして差し上げますね♡」


リンを、自分の手で奇麗にしてあげたい。

その思いに忠実に、イリスは恥じらうリンの手を引いて風呂場へと入っていく。


リンの長い黒髪…

リンの華奢な身体…

その一つ一つを、自身がお腹を痛めて生んだ我が子にそうするかのように、イリスは丁寧に丁寧に洗っていく。


スタトリンでも評判の美人であるイリスが、一糸纏わぬ姿で自分を洗ってくれているのがとても恥ずかしくて、リンはイリスに視線を向けられないでいる。

それをいいことに、イリスはリンに自慢の身体を押し付けるようにして、リンをぎゅうっと抱きしめてしまう。


「!!だ、だめ…だ、だめ、です…」

「リン様♡…このイリスの身体は全てがリン様のものです…♡…リン様でしたら、全てを見てほしいです…♡」

「だ、だめ、です……ぼ、ぼく……」

「リン様♡…大好きです♡…イリスは…イリスは心の底から、リン様を愛しております…♡」

「!!~~~~~~~~~~…………きゅう……」


イリスの容赦ない愛情攻撃に、リンはあっさりとその意識を手放してしまう。

そんなリンも可愛くて可愛くてたまらず、イリスはリンを抱きしめながら自身も身を清めると…

気絶したリンを抱えたまま、湯舟に浸かってしっかりと身体を温める。


そして、リンに寝巻を着せて自身も寝巻を着ると…

もう離したくない、と言わんばかりにリンを抱きしめて風呂場から出て、自身がリンと一緒に寝る為の布団を用意し…

そのまま、その光景を見て思わず吹き出してしまっているジャスティンをよそに、リンと共に幸せな眠りにつくのであった。

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