第159話 集結①
「そ、それは本当ですか!?」
「はい。会頭がリン様に直接ご相談されて、決定した内容です」
「あ、ああ…」
「わ、我々が…我々が!!」
「リン様のお住みになる世界で、住まわせて頂けるなんて!!」
リンとジャスティンの間で、ジャステイン商会の全職員をリンの生活空間で住んでもらうと言うことが決定し、その数十分後。
ジャスティンからこの件の責任者として任命されたイリスが、すぐさま本店の会議室に幹部達を集め…
緊急招集されたことで戸惑いを隠せない幹部達に、ジャスティン商会の全職員を、リンの生活空間に住まわせる、と言うことをさらっと伝える。
そのイリスの言葉に、幹部達は一瞬何を言われたのか分からず、呆けてしまっていたのだが…
その言葉の意味を反芻し、理解すると、まるでこの世の幸せが全て訪れたかのような、盛大な喜びを見せ…
会議室は、まるで熱狂的ファンで埋め尽くされたコンサート会場のように盛り上がるのだった。
「イ、イリスさん!ちなみにそれはいつ、実施されるのでしょうか!?」
「リン様がお作りになられた世界への引っ越しなら、我々も準備が…」
「まずこのスタトリンの店舗で勤務している職員から優先的に引っ越しを開始します。職員の皆様にしていただくのは、商会の寮住まいの方は引っ越しに伴って荷物をまとめておいてください。個人で住居を持たれている方は私をそこにご案内して頂きます」
「!りょ、寮の者達も全員ですか!?」
「に、荷物をまとめた後は!?」
「住居へイリスさんをご案内した後は、どうするのですか?」
「私がリン様から、今回の引っ越し用として収納の魔導具をお預かりしております。寮住まいの方は、私が順に荷物を収納していきます。住居持ちの方は、その住居を丸ごと収納して、引っ越しを行ないます」
「!!な、なんと…そんなことが可能なのですか!?」
「はい。リン様の収納空間は無限の容量…スタトリンの職員全員の荷物どころか、住居も丸ごと収納が可能となっております」
「おお……!!」
「リ、リン様はまさに神様のようなお方……!!」
「収納の作業が全て完了次第、私からリン様に連絡させて頂き、この本店含むスタトリンの店舗全てに、リン様の生活空間への出入り口を、地下の職員専用の控室に開いて頂きます」
「!!で、では我々は、この職場からリン様のその、生活空間とやらに行き来できるようになる、と言うことですか!?」
「そうです。これはいざ、店舗に何か災いがあったとしても、その生活空間が確かな安全が保証されている避難先となるからです」
「!!お、おおお…!!!」
「で、では我々は…常にリン様の守護を頂ける…そう言うことですか!?」
「そうです。リン様は私達ジャスティン商会の職員が喜んでくれるならと、二つ返事でこの件を承諾してくださいました。我々は、そのリン様の大恩に報いるべく、リン様を陰から支援致しましょう!」
「は、はい!!」
「リン様、リン様万歳!!」
「そうと決まれば、リン様をお待たせしないように早く準備をせねば!!」
「イリスさん、よろしくお願い致します!!」
この件の責任者となるイリスから、実際の準備と工程を一通り説明を受け、幹部達は喜びに満ち溢れながらも、リンを待たせないようにとすぐに行動を開始する。
すぐさま、幹部達は自身が責任者となる部門、部署の職員達に通達を出し、手の空いた者からすぐに準備をするように促していく。
「リ、リン様の作られた世界に住まわせて頂けるなんて!!」
「あああ…わたしがリン様のお住まいと同じ世界に…♡」
「リン様、ありがとうございます!!」
通達を受けた職員は、すぐさま引っ越しの準備をと言われたにも関わらず…
もはや崇拝の域でリンに心酔している為、誰一人として反対意見は出ず、むしろ一秒でも早く、リンの生活空間に移り住みたいと言う思いでいっぱいになり…
業務の区切りがついた者からすぐに寮に戻り、荷物をまとめていく。
自身の住居がある者も、すぐにイリスを案内して住居を丸ごと収納してもらい…
その住居がリンの生活空間に移設されると思うと、それだけで喜びの笑顔が絶えない状態になってしまう。
「うおおおおおお!!リン様!!リン様!!」
「この我々が、リン様のお作りになる世界で住まわせて頂けるなんて!!」
「リン様!!我ら護衛部隊は今後一層、リン様をよからぬ輩からお護りさせて頂きます!!」
「リン様はこのスタトリンの英雄であり、我々の神様です!!」
「我らの忠誠は、リン様のものです!!」
ジャスティン商会のお抱えとなる護衛部隊の面々は、この通達に全員が涙を流しながら盛大に喜んでいる。
自分達にとって崇拝すべき神であるリンが作った世界に、自分達も住めると言うことが、この世で受ける最高の栄誉にも等しい程の喜びとなったようで…
全員が寮住まいとなる護衛部隊の面々は、すぐさまリンの生活空間に住まいを移すべく、寮に戻って荷物をまとめ、引っ越しの準備を進めていった。
――――
「こ、ここが…」
「リン様がお作りになられた世界…」
「なんと…なんと穏やかで、清浄な空気…」
「近くには、大きな山もあって、そこから奇麗な川が…」
「それ以外は、とっても広々とした草原で…」
「ここに、ここに我が商会の仲間が集う居住地を作らせて頂けるなんて…」
スタトリンに住む、ジャステイン商会の職員達が引っ越しの準備を終え…
イリスからの連絡を受け、リンがジャスティン商会の各店舗と元寮、護衛部隊の詰所など、関連施設に…
自身の生活空間に新たに作った、ジャスティン商会の職員用の居住地への出入り口を開き、そこに職員達を誘導していった。
穏やかな雰囲気。
清浄な空気。
自然の恵みが豊富な山。
その山から流れてくる川。
少し先に、リンの所有施設の従業員が住む居住地もあり、そちらとの交流も可能としてくれている。
水供給設備と排水設備、公衆トイレの転移陣も設置されており、生活の利便性も保証されている。
「さあ!わし達リン様お抱えの建設職人達が、ここに住む人達の家を建てさせて頂きますぜ!おい野郎共!」
「へい!」
「すぐさま建てさせてもらいやすぜ!」
「設計は、我らジャスティン商会の建築部門にお任せを!」
「すでに、職員達の要望を聞いて一通りの設計はしております!」
「こいつはありがてえ!」
「皆さんがすぐにここで暮らせるように、建てていきやすからね!」
「我々もお手伝い致します!」
すでに住居持ちの者は、イリスに収納の魔導具に収納した住居を手頃な場所に出してもらい、寮住まいだった者達も、リンお抱えの建築業者の職人達がすぐさま建築作業に取り掛かっている。
ジャスティン商会の建築部門の面々も、すでに移住する職員達から要望を聞き出し、設計を完了させているので、それを元に建てていくこととなった。
さらに、建築部門の面々も建築作業に加わることとなったので、より作業にスピード感が出ることとなった。
一時間で二階建ての一戸建てを完成させる、と言う速度で、次々と寮住まいだった者達の為の住居が完成していく。
「おお…リン様お抱えの職人の方々がこれ程とは…」
「手作業の速度も精度も非常に高い上に、【土】魔法まで…」
「さすが、さすがはリン様お抱えの職人の方々…」
職人達も、リンから直々に【土】魔法を教わったりしており、さらには個人個人で制御の精度も向上させているので、要所要所で魔法を使って建築を進めており…
【土】魔法を使う前よりも格段に早く、より丁寧に建築作業を行なえるようになっている。
本来であればあり得ない程の作業スピードに、ジャスティン商会の建築部門の面々は驚きを隠せず…
そしてその磨き上げた職人技に、最大級の称賛の意を示している。
「おお!!…寮住まいだった僕が、こんな素敵な家に住めるなんて!!…」
「わあ~…広々してて、キッチンも使いやすそうだし…お風呂もトイレもある~!!」
「家具は商会の方で職員割引があるから普通に買えるから、すぐに揃えられるな!!」
「これからは商会の人達がご近所さんになるのか~…めっちゃ業務の風通しよくなりそう!!」
「リン様所有の施設の従業員さん達も、ここから近いところに住んでるから…そちらとも仲良くさせてもらえそう!!」
住居ができた職員から順に、完成したばかりの家に入り、イリスに寮から収納してもらった荷物を取り出して配置してもらい…
当然ながら寮よりも広く、キッチン、風呂、トイレと一通りの設備があり、とても住み心地のよさそうな家で寛ぎ始めている。
それぞれの家の近くに、職場へのルートが開かれていてすぐに行き来できるし…
居住地の中央に広場を作って、そこで一斉の職員会議をしたりもできるし…
スタトリンの本店と分店で勤務している職員も、これからはサンデル王国内にある、他の店舗での勤務や応援にもすぐに行けるようになるし、その逆もできるようになる。
「スタトリンにある部隊の詰所の全ても、ここにつないで頂いているから…行き来も楽だし、どの詰所へもすぐに向かうことができる…ああ!!リン様は誠の神様です!!」
「しかもここから、リン様の拠点への出入り口もつないで頂いているから、ジャスティン会頭にもすぐにお伺いができる!!」
「それだけではなく、リン様とそのご家族の守護も常にさせて頂ける!!」
「リン様…このゴルド、リン様の為ならばたとえこの身がどうなろうとも、リン様をお護りさせて頂く所存です!!」
護衛部隊の面々も、スタトリン内にある詰所の全てを、この生活空間の居住地につないでもらうことができた為、詰所間の移動も楽になった上に、いざと言う時の隊の集合もいつでもできるようになった。
部隊の幹部達で話し合って、隊長となるゴルドは基本、この居住地に作られる部隊の本部に常駐して、他の隊員達の活動報告のとりまとめに部隊の司令塔、そしてゴルドの戦闘能力が必要な時はすぐに現場に出られるように、と言う役割に変更。
加えて、護衛部隊最強の戦力となるゴルドと、そのゴルドに近い実力を持つ幹部数名が、会頭となるジャスティンやスタトリンの神となるリンを始めとする、このスタトリンの中心となる者達の防衛の要を担当することとなった。
また、今後この居住地とつながれていくであろうサンデル王国内の各店舗にも、護衛部隊の隊員が守衛として回れるようにする方針となる。
その為、隊員の勧誘や育成にも力を入れようと、この居住地に護衛部隊用の訓練場も作り、徹底的に鍛えていくと同時に、魔の森への狩りにも積極的に出て、対魔物戦の経験も積んでいく方針となる。
「リン様!!我らジャスティン商会の者達まで、リン様の庇護下に置いて頂き、誠にありがとうございます!!」
「今のジャスティン商会は、リン様が生産・提供してくださる商材が主力となります!!ですので、今後一層その商材の販売に、尽力してまいります!!」
「リン様がお抱えされている超高級商材も、我らが王国内のオークションや、国外の貿易などでしっかりと捌いて、リン様の利益を確実にさせて頂きます!!」
「リン様!!我々はリン様の元で暮らすことができるのが最上の喜びです!!」
「リン様!!ありがとうございます!!」
ジャスティン商会の職員達が、この安住の地へと誘ってくれたリンに心からの感謝と、これからのリンへの貢献の約束の言葉を声にする。
リンの為に。
それを思うだけで、心が躍って仕方がなくなる。
それを思うだけで、活力が溢れてくる。
今この居住地にいる職員達の誰もがリンを崇拝し、生涯リンに仕える覚悟で…
リンの元へと集結している。
「み、皆さん、が、よ、喜んで、く、くれて、ぼ、ぼく、う、嬉しい、です」
そして、自分達の喜びを我が事のように喜んでくれるリンの笑顔に、全員が心を撃ち抜かれてしまう。
もうただただ、リンが喜ぶことをしたくてたまらなくなってくる。
「リン様…♡」
「リン様…なんてお可愛らしいの…♡」
「リン様…わたくし…リン様の為でしたら…♡」
「はあ…リン様…♡」
「リン様…しゅきい…♡」
美人揃いの本店勤務の女性職員達は、誰もがリンを見つめる目の奥に、その溢れんばかりの愛情を示す形が浮かんできている。
天使のように可愛らしいリンに、その母性本能を大いにくすぐられてしまい…
誰もが、リンのことを抱きしめて可愛がりたくてどうしようもなくなってしまっている。
「リン様が作られた世界…ここで住まわせて頂けるだけでもありがたいのに家付きで、月に金貨一枚の天引きでいいなんて…」
「だって職場はすぐそこだし、職員用のバックヤードをここにすればもっと安全だし、なんだったら自宅から制服に着替えて出てきてもいいくらいだしな!」
「おまけにゴルド隊長率いる護衛部隊の本部がすぐそこだから、いつでも護ってもらえるし、今後は王国内の店舗にもすぐに行き来できるようになるから、そちらでのリサーチも楽になるしな!」
「王都の店舗にすぐに行き来できるようになれば、リン様の超高級商材のオークションも品質を劣化させずにすぐに出せるようになるし!」
「これで月に金貨一枚は安すぎる!大金貨一枚でも安すぎるくらいなのにな!」
職員達は、すでにリンの役に立つ為にと、この生活空間の居住地の活用について、全員が嬉々として話し合い始めている。
一般の職員達は、月の給与から金貨一枚の天引きで住居までついてくるし、仕事をするにしても非常に利便性が高く、情報共有もやりやすいので、破格だと大絶賛。
全店舗の共通バックヤードを、この生活空間の居住地にすることができる。
各店舗は本当の意味での窓口にすることができ、商品の盗難などのリスクをほぼゼロにすることができる。
それ以外にも様々な業務改善ができるだろうし、家庭持ちの職員も家族が安全かつ自然の恵みが豊富な場所で暮らせるのが嬉しいところ。
この地は、本当に幸せだらけの地となるだろう。
「会頭、リン様…スタトリンの店舗に勤務する職員の誘導と引っ越し、全て完了致しました」
「そうか!ありがとうイリス君!」
「あ、あり、がとう、ご、ござい、ます。イ、イリス、さん」
「ああ…リン様が喜んでくださって…私…私…♡」
「ははは…ではリン君、君の手を煩わせることとなってしまって申し訳ないのだが…サンデル王国内の店舗に勤務する職員達も、この地に誘導と引っ越し…お願いするよ」
「は、はい」
「リン様…リン様には会頭とこの私が同行させて頂きますので…よろしくお願い致します…♡」
「わ、わかり、ま、ました」
スタトリンに住む職員の引っ越しが全て完了し…
これから、サンデル王国内の店舗勤務となる職員達を、この生活空間の居住地へと誘導し、引っ越しを行なっていくこととなる。
会頭であるジャスティンと、商会の職員でありリンの専属秘書でもあるイリスが同行して、リンを各店舗へと案内し、作業補助をすることとなる。
イリスはしばらくリンと共に行動できることがとても嬉しくて、その美人な顔には蕩けそうな幸せに満ち溢れた笑顔がほんのりと浮かんでおり、リンのそばでリンのお世話をすることしか考えられなくなってしまっている。
そんなイリスを見て、ジャスティンは苦笑を浮かべつつも、自身の商会の職員をこの安住の地に誘い、一人も欠けることのないようにしていこうと改めて決意を固める。
リンは、ジャスティン商会の全職員が喜んでくれたら嬉しいと思い…
早くここに全員を誘導しようとするのであった。
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