第14話 伊吹は目つきの悪い男と対峙しました


『よう、こんな時間の俺を呼び出せる奴は、この街に一握りだ。その中にお前は入っていないはずなんだがな。アヤノという俺にとってのキラーワードを持ってきたと聞いて、出てきた。そして、この街で、この言葉を出して俺を呼びだす危うさをこの界隈の奴は知っている。生半可な繋がりであれば、あんた、片腕は覚悟しな』


 おー怖!私も目が座る。こんなキャラじゃないはずなのに。


「東の国から来たイブキだ。冒険者の登録をしに来た。アヤノとは縁があって、ギルドに行くときはシンジという奴と会うことを勧められた。それだけだ」


「・・・・・・・・・・」


 暫くにらみ合う。ギルドのフロア全体が凍り付いていく気配を感じる。

 こんな度胸がいつの間にか私にあったんだろう。なんか彼と会ってから、180°キャラ変してる。以前の私はこんなの怖くてできない。


「私の腕はまだ付いているけど、いいのか」


『・・・・・・・・・・』


“ククク” シンジは私を観て笑う。


とたんに人懐っこい顔に変わった。


『いいだろう、アヤノが俺の名前を出したその理由がわかった。登録だったな。じゃあ、入門の時渡されたカード出しな。それと手続きはこの当ギルド、No.1のカウンターレディー、エスワットが俺の知り合い枠で進めてくれる』


フロアにホッとした雰囲気が拡がる。


『エスワットと申します。イブキさん、後は全て致しますので、しばらくあのソファーでお待ちください』


『それと、シンジさん、・・・ シンジ!いつも言ってるでしょう!今はお国が他国のハイランカー集めているって、その時にここのギルド長“シンジ”の名前がでてるって! 折角こちらのお招きした冒険者さん達に対して、ことを荒立てるなって、何回も言いましたよね!』


『そ、そうだったな。いや、そうだ、そうだった』


『言ったでしょう!あなたはこのギルドの顔だって、あなたがいちいち、いちいち、古臭い、性根を見据える、なんてことするから、私達職員まで同じに見られてしまうって!それと私が頼んだ “広域解析師群のビックデータ分析による、新規クエスト設定アルゴリズムの改定” 読んでくれたんですか、対策をギルドとして国にあげてくれたんですか、しょーもないマウンティングやる暇あったら、仕事しなさい!』


『い、いや、そうだった、エスワットの言うと通りだ、よ、読んでる最中だった、あー忙し・・・・』


 シンジはすごすご奥に引っ込んだ。


 エスワットさんにシンジ宛のアヤノの手紙を渡した。中身を読んでエスワットさんは “ニヤッ” とした。


『シンジさんに最初からこれを出さない、イブキさんも大概ですね』


 エスワットに小部屋に案内された。

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