第6話 イブキ 1/5
会場の隅の小部屋に道具屋の店主カグラがいた。
『ユキ、白狐、レイヤーG、イベント終了まであと数秒だよ、ユキと僕と白狐の阿頼耶識のシンクロ率92%大丈夫だ。カウントダウン開始、9、8、7、6、5、4、3、2、1、ゼロ』
イブキがエクスカリバーを抜いた瞬間、その空間がぐにゃりと歪み、世界に白い光が放たれた。そして、元に戻った空間には、イブキとは似ても似つかない金髪の男性がエクスカリバーを掲げていた。
『勇者だ、新しい勇者が誕生した、勇者シャルロットに栄光あれ!』
◇◇◇
アルベル・ルーベル国、またの名をスミレの国、その神社の奥に横たわるイブキと、傍にユキとカグラ、小さな女の子姿の白狐、宙に浮いた赤ん坊、ナナセがいた。
『白狐、どうですか、魂はもどりましたか』
『ユキ、戻りました。イブキちゃんの1/5は確かに戻りました。ただ、この状態ではまだ、イブキとしての意識はここでは覚醒しないでしょう』
宙に浮く、ナナセがしゃべる。
『分割された一つの魂を取り戻すと、他の魂も元に戻る、この仮説はだめだったのが証明されたね』
カグラが言う。
『アガレスとの闘いで、奴の次元魔法、無限のレイヤーとして存在する五次元へイブキの魂が5分割されて飛ばされてから3か月、飛ばされたレイヤーは今回特定できた、その内の一つを取り戻した。これは大きな成果だと僕は思う』
ユキが言う。
『これで、そのレイヤーのイブキちゃんの魂が必要だった何かのイベントがあり、そのイベントを完結させる特異点でジャンプできることもわかったわ』
『既に次の候補のレイヤーにはお父さんがジャンプしているね』
『私達も、ナナセが計算した候補レイヤーにジャンプしましょう。次はカグラがここでコントロールしてね』
ユキは、意識を戻さない横たわったイブキに声を掛ける
“イブキちゃん、もう少し待っててね”
ナナセは目を開けないイブキに心で言う。
“ったく、世話がやける叔母だぜ、待ってな”
カグラが空間に大きな座標軸を発生させる。カグラの阿頼耶識とユキ、白狐、ナナセの阿頼耶識が同調していく、その座標は4次元軸が無限の螺旋状にねじ曲がった。
ナナセが探しだしたそれぞれの候補点。
ユキがジャンプした
白狐がジャンプした
ナナセがジャンプした。
5次元軸はカグラがモニタリングしていく。カグラはその座標に現れた特異な歪みを見逃さなかった。
『ゲンジだね。とうとう見つけたか』
“イブキ、必ず取り戻すからね。僕たちを信じて待っているんだよ”
カグラは意識のない横たわったイブキの頭に手を添えた。
レイヤージャンパーズ 第一章完
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