第5話 イブキは王様の前に現れていた


『もうそなたたちは、勇者ではない。エクスカリバーがその答えを出した。この中にこの剣を抜ける者はおるか!』


『カーズよ、栄光の導きよ、勇者とは救国の騎士である。カーズよ、勇者とは誰もが恐れる困難に立ち向かい偉業を成し遂げる者である。勤めを忘れ、快楽に身を任すものの称号ではない』


『カーズよ、お前が始めてワシの前に立ち、ワシの前でエクスカリバーを抜いた時、お前は、魔物によって命を失う、女、子供たちを、弱きものを救いたい、魔物を率いる魔王を倒し、理不尽な暴力に殺されない、平和な世の中を築きたい、そう申しておったな』


『この目的を忘れ、この目的があるからこそお前達を支援していたワシを愚弄した罪は問うまい』


王は周りを睥睨する。


『勇者に取り入り、勇者を利用し、自分たちの利益を最大化しようとした輩の罪も問うまい』


 会場は静まりかえっている。領主と栄光の導きの汗が止まらない。


『皆に改めて問う!このエクスカリバーを抜ける者はおるか!』


 一人が前に出た。そこには、横に色彩が捉えられない鳥らしき魔物と、影の中から生え延びる犬らしき魔物と、赤い大薙刀を背負い、52と刻印が入った魔物らしき首を持つ者がいた。


 領主が叫ぶ。


『ひかえおろー!無礼者、国王の御前であるぞ、抜き身の武器を携え、魔物のみならず、魔物の屍をも持ち込むとは何事だ!ええーい、ヒレ伏せい!』


 カーズが叫ぶ


『国王さま、あ奴こそ、勇者パーティーの務めを忘れ、和を乱し、各方面の禍討伐の準備の邪魔をし、追放したものです、あやつこそ、勇者パーティーの目的を乱した不届きものです!イブキ、血迷ったか‼』



『静まれい!』


 国王の声が響く。


『その首はなんだ』


「魔王の首でございます」


『イブキよ、その魔物達はなんだ』


「私のパーティーメンバー、フェンリルとフェニックスです」


 会場がざわつく。皆どうしていいかわからない。国王とその近衛兵団のみ静まりかえっていた。


『お前達、この者を、無礼者で不届きものと申したな。本当にそうであるか、この首が魔王か、このワシにもわからん。但し、国の禍、魔王を倒したものは勇者である、それには異存あるまい。そして、その者が、勇者であるかどうか、判定できるものが、そこにある』


『イブキよ、その言葉、偽りなければ、そのエクスカリバーを抜き放て!』


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