第3話 イブキは涙をながしていた
郊外のギルドに入る。
『よう、聞いたぜ、お帰り』
カウンターのシンジが声を掛けてきた。
『おい、イブキが帰ってきたぞ、祝杯だ、このイブキ姉さんの歓迎会だ!』
『今日は俺がもつぜ!』
『こっちあいてるぜ、イブキ!』
酒場のみんな・・・、じゃなくてギルドのみんな。
一通り、野郎共に挨拶したあと、シンジが言った。
『まあ、お前には最初からお坊ちゃんやお嬢ちゃまの世界は無理だったな、カーズたちはうまく溶け込んだようだけど』
『ここだけの話だがな、イブキ。ここでもお国の依頼は扱えるぜ、難易度高くて受けたことないけどな』
『勇者パーティーにも話は行っているはずだが、この街の領主様の優先順位でクエストをこなして、お国のクエストは後回しって話だぜ、さるお国のお偉い方々は、それを快く思っておらず、この街の接待に取り込まれ、国の依頼を受けない勇者カーズを問題視しているらしい』
『イブキ、ソロってことになるが、お前やってみればどうだ。実際、あのパーティーのクエストも大概お前一人でこなしてんじゃないのか』
「・・・・・・・」
「そうだね。あきらめたらダメだね。魔王も倒さないとね」
『お前の新しいFランクのギルドカードだ。ランクシステムは国管理だからこの街の上位ギルドには邪魔されねえ、ここらの皆、この街の山の手の奴らにはいい思いはねえ、俺達は応援するぜ』
◇◇◇
郊外の道具屋に帰ると、カグラが埃っぽい部屋を掃除して待っていてくれた。
カグラから一振りの大薙刀を渡された。
『イブキ、この大業物は“雪様”というネームドだよ。誰も使いこなせなくて、こんな場末に眠っていたんだ。イブキ、ソロになったことだし、君にどうかなって思ったんだけど、どうかな?』
ぼーっと観てしまった。なんだろうこの感覚。まるで家族に再開したみたい。孤児なのに。
◇◇◇
荒野で“雪様“を試す。体に馴染む。私の魔力の通りもいい。ブンブン振り回しながら魔力も注入する。
“飛斬”
斬撃が飛び、向こうの岩が真っ二つになった。
“蛇”
雪様が鞭に変形し伸び、大木を掴んだ。そのまま引っ張り跳ぶ。
“延”
雪様が棒状で延びそのまま地面を突き、私は空中を飛ぶ。
雪様と触れ合いながら、なぜか涙が止まらなかった。なんだろう。なぜだろう。何かが私に伝わってくる。何かが私を包み込む。 私は家族がいない孤児だ。けど“雪様”から忘れてはいけない大事な何かが流れてくる。
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