第2話 イブキは愚痴を言っていた


『やあイブキ、なに時化た顔して歩いてんだい』


 道具屋のカグラが声を掛けてきた。

 彼の店は、ギルドの下請けで、武器、防具、薬等、冒険者用の道具を扱う。私達が駆け出しの頃からお世話になっている道具屋だ。私達だけでなく、この街の駆け出しの冒険者みんながお世話になる店で、高級でキラキラした武具は置いてないが、安くて、造りのしっかりした武具を扱う。最近勇者パーティーの皆は、有名な高性能ブランドの道具屋とスポンサー契約して乗り換えたが、私はカグラのしっかりした、安心できる造りの剣が好きで、ずっと使い続けていた。


「カグラ!ちょっと聞いてよ!私 “栄光の輝き” 追い出されちゃった」


『そうみたいだね。もう噂になってるよ、これからどうするんだい』


「どうもこうもないわよ、そうだ、あんたの道具屋の二階に空いてる部屋あったよね。そこに住むわ」


『おいおい、独りぼっちになった若い娘が、イケメン独身でこの界隈のお姉さまのアイドルの僕の店に転がり込むってのはやばくないかな』


「イケメン独身アイドル店主だったらね」


『はは!そりゃそうだ』


「いい!ちょっとギルドに寄って今後のこと相談してくるから、部屋掃除しときなさいよ!」


『わたっかよ。待っているからね』


◇◇◇


『イブキさんは “栄光の導き” をご退会され、ぷぷっ、追い出されましたので、あの、Fランクになられました。ぷぷっ、なので、この上位冒険者のためのこのギルドは、お手続きできません。ぷぷっ、郊外の下位ランカーのギルドに、あの、汚い、ギルドでなく酒場?、底辺のたまり場?、の方へどうぞお行き、ぷぷっ!行ってください!』


 いつもカーズにべったりな、愛想のいい、笑顔の可愛いギルド受付のお姉さんは、本性?を現わして180°のご変貌ぶりで私に言った。


“追い出されたって”

“カーズさまにはねぇー”

“じゃじゃ馬の称号あるらしいわよ”

“街からも追放されるんじゃない”

“人間の男寄せ付けず、魔物とやってるらしいぜ”


 うがー、聞こえるか聞こえないかの微妙な声で、くそー、真っ赤になっているのが悔しー。ギルドを出て、またとぼとぼ郊外に向かう。私が出たら、ギルドから大爆笑? いくつもの笑い声が聞こえた。

みんな、人の不幸が楽しそうだね・・・・・・・。

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