レイヤージャンパーズ

@METAIBUKI

第1章 イブキはパーティーを追い出されていた 

第1話 イブキは追い出されていた

『イブキ、お前は、このパーティーから出ていけ!!』


 え!なんで、私はSランクの勇者パーティー “栄光の輝き” の特攻役として、常に前線で命を張って頑張って来た。この “栄光の輝き” は伝説の剣、エクスカリバーを抜いた勇者カーズが率いる勇者パーティーだ。みんな孤児院にいたころからの幼馴染だ。そのカーズに唐突に出ていけって言われた。


「なんで!なんでなの? わ、私はいっつも一番前でみんなのために命はって切り込んで、頑張っているのに、なんで出て行かなきゃいけないの!」


 カーズの後ろには、火炎系魔法使いのローズが私をみてニヤニヤ笑っており、回復系魔法使いマルガリータが俯いている。盾役のアンダーソンは私と目をあわせないように明後日の方向に目をやっている。


「み、みんな、みんなも同じ意見なの?」


 ニヤニヤしながら、ローズが言う。


『当然じゃない!あんたみたいなパーティーの和を乱す、役立たずでコミュ障なメンヘラ女、本当はもっと早く出ていって欲しかったわよ。けど、マルガリータやアンダーソンが庇うから、今までカーズも我慢していったんだけど、もう我慢の限界だわ!』


『がんばっているっていった? 私達、パーティーなんだけど。あんた一人で前でちょこちょこ手出しして大概倒しちゃうから、経験値全部持っていくじゃない、この盗賊女!』


「けど、それは “経験値共有” のスキルでパーティーにきっちり5等分に分配してるじゃない」


『どうだか、あんたのスキルでしょ。本当に同じ様に経験値が分配されているかなんて、あんたしかわかんないじゃない。その証拠に、なんか最近あんただけレベルの上りが速くない?、同じに分配されているなら、レベルの上りは皆一緒のはずよ』


「だから言ったじゃない、いつも鍛錬しないとって。最近みんなおかしいよ。S級のヘビモス倒して、Sランクになって、有名になってから業者や貴族のお呼ばればっかり行って、ちやほやされて、昔はみんなで訓練していたじゃない。経験値はモンスター倒しても入るけど、訓練でも上がるのは知ってるでしょ、私は、私はみんなが飲み食いしている間もずっと、変わらず訓練しているからじゃない」


「アンダーソン、あんた首のキスマークくらい隠しなさいよ!なに昨日もお持ち帰りしてんのよ、たるんでるわよ、最近特に、なんであんたまで訓練に参加しなくなったの!」


「マルガリータ、あんたもよ、貴族の次男に口説かれてお手手繋いでデートもいいけど、神様との精神問答の時間とれてるの!」


「カーズ、あんた勇者でしょう。勲章もらって、貴族になってって、それは勇者の務めを果たしているからでしょうが!最近のあんたは街に籠って、ダンジョンに籠らず、モンスターに対峙せず、貴族に対峙してケツを舐めて、何なの!みんなどうしちゃったのよ。まだ私たちの目標である魔王は倒していないのよ!」


 マルガリータは赤くなり更に俯き、アンダーソンは私を睨んできた。カーズはため息をついていた。


『もういいだろう』


カーズが言った。


『僕たちは決して鍛錬を怠っているわけではない。勇者パーティーは国民に支えられて成り立っている。その国を支えている皆さんと交流することは大事な仕事だ。マルガリータもアンダーソンも我々を支えている社会に溶け込もうと、一生懸命に努力しているんだろうが!それを投げだし、いつまでも昔と同じように、やれ鍛錬だ、やれ挑戦だ、やれ魔王だ、なんて、俺たちは貴族のパーティーだぞ、もう昔とは立場が違うんだ!それがわからんお前はもう “栄光の輝き” のメンバーじゃない、魔王討伐?それは勇者である僕の使命だ。お前の使命じゃない! これは十分準備をして、計画を立てて、お国の皆さんと打ち合わせをして合意を得て、初めてできることだ。そのためみんな頑張っているのに、それを横でギャーギャーギャーギャー、僕の大事なパーティーのメンバーをけなすお前はもう必要ない!出ていけ!』





 勇者パーティーに用意された高級ホテルから追い出され、とぼとぼと歩く。どうすればいいのだろう。故郷に帰ろうかな。孤児院の先生も私が悪いって言うのかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る