貫く想い 2

「おつー」

「ああ、お疲れ」

 待ち合わせ場所に行くと、ソウもちょうど来たところだった。ソウは今や市長だし、リンヤはその右腕だ。互いに忙しい身分だから、休日も休日でなくなることはある。だから遅刻の可能性は大いに考えられる。だが目が合って、そうではないと、改めて感じる。

 澄んだ薄紫色の瞳を見て、それからまた空を見る。先程の鳥がまた見えた気がした。

 ソウとリンヤは特に会話をせず、どこへ行くともなく街の中を歩き出した。ソウとは時々、こうして行く場所を決めずに、街を歩く。あえて目的を示すなら、街の様子を見るためなのかもしれない。

(市長、こんにちは)

「ああ。こんにちは」

 リンヤも範囲に入れ、脳で挨拶をしてきた市民に、ソウは口で返す。

 今では口と脳、両方使う生活が当たり前になっている。せっかくの技術だ。どうせならどちらの手段も有効に使っていこうと、グローリーシティから脳会話はなくならなかった。

 変わっていく。皆、変わっていく。今はリンヤも、その流れについていっている。少しずついい街になってきている、このグローリーシティは。

 穏やかな心地で、街を進んでいく。だがそんな時間も長くは続かなかった。休日くらい静かに過ごしたいというのに。

「そういえばさ、今日、鳥を見たんだよね」

(裏通り四番。敵影)

 口と脳、両方でソウに声をかける。こんなことのために、口に出すつもりはなかった話題に触れなければならないのは、いやになる。

「ああ。俺も見た。ここら辺にはいない種類だったな」

(誘い出す)

「でしょー。それでね、懐かしくなったよ」

(りょーかい)

 おそらくどんな街でも、トップを暗殺しようとする人間はいる。グローリーシティだって例外ではない。

 ソウの施策はあくまで穏便なものだ。民を縛り付けることはしない。市民は自由意思で自らの未来を選べるようになった。ダストリーシティとも、戦争ではなく交流を図り、互いの街にないものを輸入しあうようになった。それが近隣都市にも広がり、ここら一帯にもう戦争の心配はない。

 だがそれでは恨みを消せない者はたくさんいる。かつて復讐を果たしたリンヤにはよくわかる。それでもソウは、ソウとリンヤは止まることはできない。

「久々に森……行くか」

 ソウの言葉に頷いた。

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