貫く想い 1

 鳥が鳴いている。細く、長く、甲高い声が、グローリーシティを渡っていく。空を見上げ、視界に捉えたその鳥は、この時期ではあまり見かけない種類だった。なんとなくその鳥の姿を追っていく。道行く人は広い歩道で立ち止まるリンヤを、かわしながら進んでいく。時々睨まれたり、文句を言われたりもしたが、感情の露呈や口での発声が自然というだけで、非常に幸福なことだと感じる。

 鳥の姿が彼方に消えていく。リンヤはそこから街の壁へと視線を移す。あの頃、立て直されたばかりの頃は、綺麗に輝いていた壁も、今では少し煤けている。これまでずっと破壊されることもなく、時間の経過だけで汚れた。

 口元に笑みが浮かぶ。

(約束の時間まで、あと五分です。普段の歩行速度では間に合いません。走ることをお勧めします)

 その時、頭の中に無機質な音声が流れ込んできた。

(歩くよ)

(では、遅刻の連絡を入れますか?)

(いいさ。きっとあいつも、同じものを見ていたと思うから)

(かしこまりました)

 リンヤの言葉に素直に従って、音声は終了する。頭に触れる。正しくは、音声を送り込んできた端末に触れる。位置がずれていたのを正しく直して、ようやく歩き出す。

 今から会いに行くあの人物も、今日は遅刻するんじゃなかろうか。予感ではなく、確信に近い思いだった。いつだって進む先は違くとも、見ている先は同じだから。

 リンヤの口元にまた笑みが昇った。

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