想い、託して 4

「エリー様! おやすみなさぁい! ユニコーン様の祝福と共に!」

「うん。おやすみ。ユニコーン様の妙なる調べの元に」

「ユニコーン様の祝福を。エリー様、よい夢を」

「ありがとう。コッチャもユニコーン様の調べを聴けますよう。おやすみなさい」

 モエギ族の面々がめいめいエリーに挨拶を告げ、自身の天幕に入っていく。天幕は基本ひと家族に一つとしている。家族がいない者は、男女に分かれた上で、複数人で共同で使う。

 エリーも自身の天幕に入り、寝床の上に座る。エリーはまだ相手を見つけていないため一人ではあるのだが、長ということもあり、一人で一つの天幕を使用していた。うっすらと漏れ聞こえる一族の声に、エリーの口元は笑みを形作った。

 大きな天幕で一人きりというのは時に寂しさを誘うが、エリーはこうして皆の声を聞いているのが嫌いではなかった。

 大好きなモエギ族の音に包まれ、エリーは考える。一族の未来について、これからの旅路について、ユニコーンの誕生や行方について、今日の子どもたちの言葉について……ソウとリンヤについて。


   ――俺はソウ・エヴァルト。どこにいたって、    

     それは変わらない。俺はエリーと双子だ。


 ソウはそんな言葉を言ってくれた。


   ――なら、俺らが仲良しだってことも、変わら 

     ないね。


 リンヤはそこに、その言葉を重ねた。

 何年経っても、色褪せない。彼らと他愛もない話をした時間。彼らが助けに来てくれた瞬間。彼らのおかげで大切なことに気づけたこと。彼らから貰った大切な、言葉。

 エリーの中で彼らの存在はこんなにも大きい。きっと一生かけがえのない友人だと思うのだろう。たとえ会えずとも、それは変わらないと思っていた。だからこそ、会えずとも大丈夫。だがそこに少しの意地と決意と責任感も混ざっていた。エリーの選んだ道は、会えないではなく、会わないだったと、今更ながら気づいた。

 届くはずのない手紙を飛ばしてまで、懐かしんでいるくせに、もう会ってはならないとどこかで思っていたのだ。そして会ってしまったら、弱さを見せてしまう。甘えてしまうのではないかと。

 そんな情けない部分を、未来ある子らの言葉で気づかされた。

 耳を澄ます。どこかの天幕で、楽しそうにはしゃぐ子どもの声が聞こえる。寝たくなくてぐずる声も聞こえる。兄弟喧嘩が始まってしまった声だって聞こえた。当たり前で、愛おしい日常の音だった。

 エリーは微笑み、未来を思う。

 モエギ族の子どもらが健やかに育って、相手を見つけ、また子どもが生まれる。どこかでユニコーンを見つけ、その行く末を見守る。いつかきっと訪れる未来は、エリーの心を温めてくれる。

 そしてその未来に、自分の弱さも全て認めたエリーと、彼らが再会する――そんな光景を追加しても、いいかもしれない。

 エリーは静かに、穏やかに、そう思った。

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