第3話 電話
――その翌日 夜。
編集部の方から電話がかかってきました。
「あなたの作品が佳作に選ばれました」とおっしゃる。
えっ。
えっ?
最終選考に残ったという連絡だと思い込んでいた私は、突然の「佳作」という言葉にビックリしました。え、いきなりの結果発表? 佳作なのですね? やったあ……? ありがとうござい……ます……? そんな感じのリアクションの薄いお返事をしてしまいました。申し訳ない。もし受賞したことが先にわかっていたら、心の準備ができていたでしょうから、「いやっほうー!! 選んでいただき感謝ぁぁぁぁ!」などと電話口で叫んだだろうと思うんですが、このときはとても驚いちゃいましてテンションが低くなってしまいました。
いろいろな事務連絡のあと、感想を聞かせていただきました。というか、べらぼうに褒めていただきました。
自己肯定感が爆上がりです。
電話では、
「コミック化する可能性は高い」
「担当がつくことになるだろう」などと言われて、喜びつつも、心のどこかで「またまた……騙されませんよ、私は」という気持ちでした。こういうのは話半分で聞かないといけないのです!
ところで、漫画原作のコンテストで受賞したのは、実は二度目です。
別のところが主催するコンテストで賞をいただいたのです。
しかし、結局コミック化はしていないはず(もしかしたらしているかもしれない。わからない)。
理由は、私が逃げ出したからです。
言い訳となってしまいますが、やりとりしているうちに、ちょっと無理な感じの話になってしまったのです。
漫画用の脚本を書いてほしいと言われたのです。
脚本!? 寝耳に水でした。
その上、ほかの原作作品のコミカライズの脚本も私がやるという話になり、いやいや、私は漫画のシロウトですよ、そんなんできませんと辞退したのです。いやだって、ほかの作家さんの小説やエッセイのコミカライズ脚本を私が書くの? 無理じゃない?
仕事の進め方の見本も見せていただいたのですが、漫画の描き方についての知識がないと厳しいように思えました。
報酬の提示も受けました。魅力的ではあったのですが、できないものはできないのです。自分の作品だけなら脚本を書けたかも……いや、どうかなあ。趣味でやる創作と、他の人(漫画家さんとか)への責任が生じる商業は別物だろうし。むむむ。
なんともほろ苦い受賞の思い出です。
そういう過去があるからこそ、今度は逃げ出さずに、いい思い出にしたい。何にでも挑戦したいと思っています。
……が、まあ、本当にコミック化の予定があるかどうかも怪しいですから。
リップサービスだろうという気がする。すごくする。
簡単には信じないっ! とか言いつつ、ちょっと期待しちゃう自分もいました。
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