(その21)


ふたりの間の正方形のワゴンテーブルのガラス板の上に、銃身の長い拳銃が置かれていた。

「さあ、はじめようか」

山城社長は、拳銃を取り上げ、回胴を跳ね上げると、弾倉に収まった6個の銃弾を掌に落とし、銃弾が装填されていないのを堀内に見せてから、改めて銃弾を1個だけ装填した。

「さあ、先攻後攻どっちにする」

と山城社長はドスのきいた声で堀内にたずねた。

堀内の手は、恐怖のあまり小刻み震えていた。

「こっちからやろうか」

口のきけなくなった堀内を見た山城社長は、レボルバーの回転胴を掌で勢いよくこすり上げてから銃身の尖端を右の耳の上に当てた。

「ああっ、こんなことを・・・、止めて!」

目を見開いて頬を手で押さえた綾子は、悲鳴を上げた。


「カチッ」

という音こそ聞こえなかったが、山城社長がレボルバーの引金を引いた。

綾子は目を閉じ、胸を抱えてうずくまった。

しかし、画面の中では、何事も起こらなかった。

恐る恐る顔を上げた綾子は、呆けたように画面を見やった。

次は、堀内の番だが、山城社長がテーブルのガラス板の上を滑らせたレボルバーを取ろうとしない。

いや、恐怖のあまり、からだがすくんでしまったのだろう。

堀内はようやく銃床を握って持ち上げ、右耳の上に当てた。

しばらくそのまま動かなかったが、観念したように、やっと引金を引いた。

・・・だが、銃は暴発しなかった。


慣れというものは恐ろしいもので、拳銃に銃弾など装填されていないと無理に思い込んだように、ふたりは交互に2回、合計4回引金を引いた。

・・・6連発のレボルバーなので、残りはあと2回だけだった。

にやりと笑った山城社長、さりげなくレボルバーを取り上げた。

綾子は胸の前で両手の指をからめ、必死に祈った。

手を強く握ったせいで、指先が真っ白だった。

山城社長が引金を引いた。


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