第18話 その頃
事務所まで走っていた星蘭は、
息が上がっていた。
『もっと、もっと早くしなきゃ!!』
焦れば焦るほどに、足がもつれる。倒れそうになる。
星蘭は、その頃複雑な心境だった。
(慰謝料なんて?風斗君が
どう変わってしまったの?!)
星蘭はようやく事務所へと着いた!
【はぁっ、はぁっ、ふぅ。】
勢い良くドアを開けると、、、。
菅本と風斗が、向かい合わせで座りながらも怒鳴り合っていたのだ。
星蘭は、その光景に驚きを隠せなかった。優しかった風斗が
別人の様にお金を請求している。
もはや、星蘭は風斗に対する愛情すら、わかなかった。
風斗は、星蘭の姿を見るなり、
『よぉ!!』と声をかける。
星蘭は、逆に不気味に思えた。
(私ったら、とんでもない事を?)
星蘭の手には、汗が滲み出ていた。風斗は星蘭に近づいてくると
『お前さぁ、何逃げてんの?』
『俺が居ながらも、早速彼氏見付けてんの?!』
『心外だなぁ。俺は本気だったんだけどなぁ。』
『こうして逢いに来てやってんだからさ~。また遊ぼうよ!な?』
風斗の後ろでは、菅本がため息を漏らしていた。
そして……
『諦めてちょうだい!!』
『事務所まで来るなんて。あなた頭がどうかしてるわ?』
菅本は、冷たく風斗をあしらっていた。が、その対応も風斗にとっては、慰謝料請求になる理由付けとして捉えていた。
星蘭は勇気を振り絞る!
『わたしっ……今の風斗君の事
好きでも何でも無い!!!』
『私は、寂しかっただけなの。』
『顔だけの貴方では。私を変えられないし、私も貴方のこと愛せないわ!もう帰って!!払うから!』
星蘭は、悔し涙を流した。
そして……
『慰謝料払うから!!!』
その後、思い切り星蘭は泣いた。
自分の軽率な行動に後悔をしていた。そんな星蘭を見た菅本は
事務所の奥からアタッシュケースを出してきた。
『ちょっと、お待ちなさい』
『これ、五千万入ってるわ!?
持っていって、良いから。2度と目の前に現れないでくれるかしら?』
『ふぅん。取り引きってヤツね?クックックッ』
『五千万かぁ。悪くないね?』
風斗は途端に機嫌良くなった。
その光景が、さらに星蘭を
傷付けた。
(もぅ、誰も信用しない)
星蘭は、泣きながらも菅本に謝っていた。
菅本としては、星蘭には
パパラッチは、今の星蘭には
危険だわ。と判断していた。
事務所の外が騒がしい。
あゆむが祐二を連れて、一緒に勢い良く入ってきたのだ。
祐二の手には、何か紙を持参していた。
星蘭は、祐二の姿を見るなり
全て終わった。と落胆した。だが祐二は、風斗に一目散に向かって行くと、
風斗の襟元を締め上げて、
渾身の力を込めて、怒りの声を振るわせ出していた。
『貴様?!貴様には10億くれてやる!!
その代わり!!国外追放にしてやる!!!お前の家族みんな、親戚も、関係者全て!!!
分かったか!!!?
俺の目の前に2度とその
ナメた面を見せんじゃねぇ💢』
祐二は風斗に10億を顔に向けて
投げ付けた。
星蘭は、初めて見る祐二の姿に
言葉が出なかった。
祐二は、それでも星蘭を愛していた。
祐二の手には、
婚姻届があったのだ。
それは、いつしか星蘭の事を
幸せいっぱいにしてみせる。と
内緒にして、星蘭を驚かせるつもりで、指環もダイヤモンドの
何十カラットの指環をポケットに
忍ばせていて、
ロマンチックな場所で
プロポーズを再度するつもりが?
こんな騒ぎに、なってしまい、
不本意ながらも、
祐二は星蘭を誰にも、渡さない!!!と
強く強く思ったのだった。
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