第19話 傷だらけの頃

風斗は、事務所内にばら撒かれたお金を拾いはじめた。



その姿星蘭は見つめていた。



愕然とし、祐二は部屋から出た。


祐二を追いかけた星蘭は、祐二に謝ろうとしたが、、、



祐二はその場に、しゃがみ込んでしまっていた。



祐二は泣いていた。



星蘭は胸が締め付けられる思いがして、祐二の肩にそっと手を置くと、祐二は星蘭に向かって言った。



俺は、……君が

もう、分からないよ、しばらく

考えたい。』



フラフラと立ち上がる祐二を

見つめながら、星蘭は祐二の事を切なく思った。



こんなにもを傷だらけにしてしまったんだ。



私は……私は……。



星蘭の胸は張り裂けそうに辛かった。祐二が行ってしまう!


止められない。



私には、無いんだ……。


星蘭は、去っていく祐二の背中を見つめ、小さくなった祐二に



とても申し訳ない事をしてしまったと後悔した。


たくさんの愛情を与えてくれた祐二には、もう


2と何となく思った。





それからの祐二は、見ていられなかった。




酒を飲み歩き、酔った客とケンカをし、自分の不甲斐なさに


深く傷付いていた。


それほどに星蘭を愛していたのだが、


いつしか、祐二は






と、自覚し始めたのだ。


星蘭の家の前に、ベンツを止めて

星蘭の部屋に灯りが付いている事を確認すると、



祐二は星蘭に御礼を独り言の様に伝えた。




僕は、とても君を

苦しめて、ゴメンな?』



祐二は、毎日毎日

星蘭の家の前にベンツを止めながらも、独り言を呟いていた。



お前は、今何してるんだ?抱き締めたいよ。星蘭』




祐二は、お酒を飲むことを辞めた。何故ならやはり星蘭を忘れられなかったからだ。



そして……ある日の事、

祐二は勇気を振り絞ると星蘭の部屋の前まで向かった。




()



ベルを鳴らそうと、祐二は指を出すが。なかなか勇気が出ない。



指が震えてくる。



怖かった。失ったモノが余りにも大きすぎて、



祐二は星蘭の部屋の前で、立ち尽くしていた。



深くため息を漏らして、祐二がその場を去ろうとした。



と、その時……。ガチャガチャと音がして扉が開いた!




祐二は、ゆっくり振り向くと、




星蘭がこちらを見て、驚いた表情を浮かべながらも涙を流していた。





祐二は、震える。久しぶりの星蘭の美しさに震えていた。



『祐二くんっ。私は……私は……貴方のこと』



祐二は、たまらなくなり、走り出した!




祐二はなぜか逃げてしまった。




ホントは、心の底から星蘭の事を愛しているのに。




慌ててベンツに乗り込むと、

祐二はハッとした。


星蘭が、追いかけてきたのだった。フロントガラスの前に星蘭が両腕を広げて、



祐二の車を、発射させない様にしていた。



祐二は、涙がこぼれ落ちる。



ハンドルを握りながらも星蘭に

怒る。





私にはダーリン!!



祐二は、途端にエンジンを切ると

車から降りてきた。



一直線に星蘭の方へと向かって

祐二は、星蘭の事を

思い切り抱き締めた…………。




祐二は、泣いていた。そして、



『星蘭、俺の全てを捧げても構わない。俺と……結婚してくれ?君じゃないとダメなんだ。』





星蘭は、久しぶりな胸の温もりに身を任せると。


小さな声で…………。

『はい。』と返事をしたのだった。



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