12 潜在意識と顕在意識
翔琉はふと目が覚める。そこは見たこともない真っ白な空間だった。
「あれ? ナグナスは? シュラは?」
ナグナスと戦っていたはずだ。シュラと自分に【
それよりも、
「ここはどこだ? 俺は死んだのか?」
すると、今まで誰もいなかった目の前に人影があるのに気付く。だが姿はなく、ただ形作られた人のシルエットが立ち尽くだけだ。だが口だけがあるのが分かる。異様な姿に翔琉は警戒し眉を潜める。
「なんだ、お前?」
するとその目の前の者がしゃべった。
「我は力だ」
「は? 意味わかんないんだけど」
「ここはお前の魂の中だ。人間で言えば潜在意識の中と言えばよいか」
まったく理解不能だと翔琉は頭をかく。
「潜在意識? 余計にわからないんだけど……」
「我は神がお前に与えた力の源」
「それって時を司る神様がくれた力のことか?」
「そうだ。力とは物質ではなく意識の集合体。我がお前の潜在意識の中に加わり、我が認めればお前に力を与える」
今自分がどのような状態にあるか分からない翔琉は困惑する。
――それは認められれば力が使えるようになるということか? ってことは、今俺は時を司る神様の力は使えてないということか?
考えても分からないため、目の前にいる者の説明から、認められれば力が使えるのだろうと勝手に位置付けをする。
「じゃあ、もし認められなければどうなるんだ?」
「我が顕在意識に出る」
「顕在意識? また訳わからねえ言葉が出てきたぞ」
首を傾げる。まったく分からない。もっと勉強しておけばよかったと場違いにも後悔する。
「お前の分かるように言えば、我とお前の意識が入れ替わるということだ」
「!」
翔琉は目を見開く。
「入れ替わる? 入れ替わったら俺はどうなるんだ?」
「我とは違い、お前のその意識は潜在意識の中では存在出来ない。だから存在自体がなくなる」
「なんだよそれ。そんなの嫌に決まってるじゃねえか!」
「お前の感情論は関係ない。我を受け入れた時点で、それは決定事項」
「は? そんなの知らねえよ! 力は時を司る神様がくれたんだ! くれたんだから、お前は俺の言うことを聞くのが普通じゃねえのかよ!」
言い方は悪いが、勝手に神がくれた力だ。翔琉が欲しいと言った訳ではない。それで乗っ取られたらたまったもんじゃない。
「お前のその考えは顕在意識での考えだ。潜在意識ではお前は我を欲していた。だから我を受け入れた。潜在意識とはお前という魂の九割以上を占める。お前の感情論は一割も満たない顕在意識での考え。すべての決定権は潜在意識にある。もし我を欲していなければ、お前の中に我は入ることは出来なかった。入れたということは、お前の本心は我を欲しているということだ。よく考えてみよ。お前は我の力を欲しなかったか?」
翔琉は黙る。欲していなかったとは言えば嘘になる。
「確かに欲しかった力だ。それは認める。でもなんで普通にお前は俺に力を貸してくれねえんだよ。おかしいだろ」
「何もおかしくはない。我の力はお前よりもはるかに強く、本来ならばお前の中に入った時点で我がお前よりも勝るため顕在意識に出るのが普通。それをしないのは、神がお前を見定めて決めろと言ったからだ」
「!」
この交渉は、力という目の前の存在にとっては時を司る神からの命令であり、翔琉にとっては試練だということか。
「なるほどな。確かにそうだよな。姿を見ることが出来ないほどの偉大な神様の力だもんな。普通なら人間の俺が扱える力じゃないんだよな」
「――」
「それを時を司る神様は俺に使えと渡してくれたんだ。そりゃあお前だって嫌だよな。こんな何も力もない人間の中に入るなんてさ」
「――」
「でも俺はお前に負けるわけにはいかない! もし俺がいなくなったら絶対あいつはまた悲しむ。もうそんなことはさせたくない。させないと決めたんだ」
「それはお前の感情論だ」
力の源の抑揚のない話し方がそう思わせるのか、自分の考えを全否定されたような気持ちになり、怒りが湧き上がる。
「そうだ! 感情論で何が悪い! 俺は人間だ! 人間っていうのは感情論で動くんだよ! お前には分からないだろうけどなー、大事なやつが目の前で悲しむ姿がどれだけ嫌なことか! どれだけ悲しいことか……。もうそんな思いを俺はあいつに、シュラにさせたくないんだ! だから今回で終わらせるんだ! あいつの! シュラの笑顔をずっと見ていたいんだよ! だから俺は戦うんだ!」
「お前の我がほしい理由は、シュラの為か」
「ああそうだ!」
「くだらない理由だ」
「なんとでも言えよ」
翔琉は、小さな子供のようにふてくされたようにムっとする。
「だが、そんなくだらない理由を、我は見てみたいと思う」
「え?」
「もしお前が自分のために我を欲したのであれば、我はお前を容赦なく滅しただろう」
「め、滅するって……」
背筋に冷たいものが走る。
「お前のそのくだらない願いを叶えるために、我は力を貸そう」
翔琉は、大きく目を見開く。
「それって俺を認めたってことか?」
「そうだ。だがもし誤った道を行った時は容赦なくお前を滅する」
翔琉は、両端の口角をあげる。
「そんなことするわけねえだろ!」
「行く末をしっかりと見させてもらう」
「ああ! しっかり見とけよ!」
すると翔琉の姿がだんだんと消えていく。
「え? どうなってるんだ?」
「戻るだけだ。精進しろ」
「ああ。ありがとな」
翔琉は笑顔で手を振った。翔琉が消えた後、力の源はふっと笑う。
「なるほど。よい少年である。我との会話が記憶には残らないのが少し残念だ」
――――――――――――――――――――――
『時渡り』をずっと読んでいただきありがとうございます。m(_ _)m
この前始まったばかりだと思っていたら、あと残ること2話になってしまいました~! 早い~!
私的には、けっこう『時渡り』好きでして、もう自分が好きだから書いているって感じです~(*^_^*)
最初、ちょっと特殊なので、説明が多かったことをちょっと反省したりしましたが、まあ分かってくださるだろうとポジティブ思考で行くことにしました( ̄∇ ̄)
そんな私の拙いお話をここまで読んでいただき感謝しかございません。
ありがとうございます。
あと2話ですが、どうぞよろしくお願いします~m(_ _)m
ちなみに、順序逆ですが、『時渡り2 ー水の神と子狸編ー』は、本編の後のお話になっております~。
もしよろしければ、っていうか! ぜひ!ぜひ! 読んでください~(>_<)
こちらを読んでくださった読者様なら、すぐ分かると思います~♡
あ、こちらが終わってからでいいですから~w
少しでも面白いと思っていただけたなら、ブックマーク、♡、コメント、☆をしていただけるととても嬉しいです(≧∀≦)
頑張るモチベーションにもなります。お願いします~。
よろしくお願いしますm(_ _)m
碧心☆あおしん☆
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