06 越時の考察①
「くそ! なんだ! 動けん!」
ナグナスはなぜこの状況になったのか分からず困惑する。
トスマの部下の者も現れては不利だと感じたナグナスは、
そして逃げれないように結界が張られていることも分かっていた。だから外に出たと同時に結界を破り逃げる算段だった。
案の定外に出ると、強靱な結界が張り巡らされていた。だが外し方は分かっている。
少し前に
術や結界など1度見れば外し方も分かる。ナグナスの得意技だ。翔琉がかけた拘束する術【
だから今回も結界を難なく外したはずだった。
だが反対に束縛された。
外にいる者には姿が見えないため捕まえることは不可能なはずだ。それなのに拘束された。
どういうことだと首を巡らせると、こちらを見て印を結びながら笑っている越時に気付く。
――あいつか!
「お前の考えはお見通しなんだよ」
それを見た昇とユウラは驚く。
「すごい……。本当に捕まった」
翔琉達がナグナスがいる建物に入った後、越時が昇とユウラにあることを頼んだ。
「昇、ユウラ、お前達に頼みがある。今から俺がナグナスを捕まえる罠をしかける。それを昇の【
言われた昇は困惑する。
「でも【
「基本はな。だが罠にこれだ」
越時が取り出したのは5ミリ程度の小さな玉だ。すぐにそれが何かユウラが気付く。
「水晶ですか?」
「そうだ。これに俺の時渡りの能力【分身】を施した俺の気が入れてある。これを使えばお前の【
「でもナグナスには僕の【
現に今までばれているのだ。すぐにばれるに決まっている。
「普段ならばれるかもだが、今回はあいつはそこまで気が回らないだろう」
「え?」
越時は、にやりと悪戯な笑みを浮かべる。
「ナグナスは結界を外すことしか考えてないはずだ。なんせこうなることを予想して計画を立てていただろうからなー」
◇
越時が負傷して入院している時だ。ベッドに横になりながら姿は見えないが近くにいるトスマに話しかける。
「なあトスマ。ナグナスはあの屋敷の結界を外すことが出来ないために、盗賊1人をあの屋敷に捕まらさせ、俺らが来るように仕向け、利用して外させたんだよな」
『ああ、そうじゃ。ナグナスもそう言っておった。あれは特殊な結界だったからのう。何か気になるのか?』
「まあな」
越時は、この一件についてずっとひっかかっていたことがあり、入院中考えていたのだ。
「なぜ俺に外させた?」
『それはお前が結界を外すのに長けていたからだろう』
「なぜ俺が結界の解除に長けていることをナグナスは知っている?」
『?』
「俺はあいつの前で解除をしたことねえし、あいつとの面識はこの前が初めてだぜ」
『確かにそうじゃな』
トスマはあったことがあるため越時達が初対面ということに気付かなかった。
「どこかで俺のことを見ていたのなら分かるが、翔琉が来てから結界を解除したのはこの前が初めてだ」
『確かにそうじゃな』
あの時の結界は、確かに特殊であり、簡単に外せるものではなかった。だがどうもひっかかる。
『では翔琉を狙うためではないのか?』
「それも考えたが、翔琉が必ず過去に来るなんて分からなかったはずだ。現に翔琉はいなかった。そんな賭けみたいなことするか? しないだろ。だとすれば、あいつの目的は他にあったんじゃねえのか?」
『他にじゃと?』
「ああ。目的は2つ。1つはあの
『!』
「シュラの話だと、ナグナスは翔琉を殺すことに執着はしているが、過去何回か自分が危険だと判断すればすぐに逃げている。だとすれば、この前の戦いで今世は苦戦することは分かったはずだ」
ナグナスが相手にするのは翔琉とシュラだけではない。四天王と【きのえ】の者達がいるのだ。多勢に無勢のため、そう簡単にナグナスが強いからと言って必ず勝てる保証はない。だとすれば逃げることも考えているはずだ。だがその時、越時達が逃がさないように結界や拘束をかけてくることは容易に想像がつく。
「ナグナスはユウラも初めてだった。だとすれば結界や拘束を得意とするユウラと俺と昇の能力を把握し、逃げ道を見い出す目的だったと思えば、辻褄が合うと思わねえか?」
『確かにそうじゃな』
結界や拘束は術者によって十人十色だ。同じ結界でも改良を重ね、より強靱なものを作り出す。力が強ければすぐに外せるが、そうでなければ簡単に外すことは難しい。用意周到なナグナスならば、事前に見て対処法を考えるのではないかと越時は考えた。
『それならば、あの時ユウラ達を殺した方がナグナス的にはよかったんじゃないのか?』
「昇とユウラが殺されなかったのは、ユウラが思っていたより防御に長けていたのと、時間が無かったからだろうよ。あのまま戦っていたらトスマ達が来て戦いになり、長引けばナグナスは現代に戻ることが出来なくなる微妙な時間だったんだろう。だから昇達を殺さず、現代に戻ることを優先した。そう考えるのが自然だ」
現にナグナスは、「時間がない。これを逃すと現代に戻れなくなっちまうからな」と言っていたことから、この考えは正しいと越時は確信する。
「だが予想外なことが起きた。未桜が過去へナグナスを送ったことだ。ナグナスは焦ってたと思うぜ。せっかく現代に戻れたのに、また過去に送られたんだからな。だがすぐに俺達が来ることも分かっているはずだ。だとすれば、翔琉を殺すことに重きを置くか、それとも逃げるのに重きを置くか、そんなの俺だったら逃げて現代に戻る方法を見つけることに専念する」
『じゃあ今度は未桜のスマホでか?』
「それも考えたが、それはまずないだろう。未桜はスマホを亘の車に置いていた。過去に持って行っていない」
『では無理じゃないのか?』
越時は、にぃっと笑う。
「1つあるだろ。サラは未桜はナグナスだけの時間を戻したと言った。ならば、そこに装置を持っているやつらがいるだろう?」
『!』
「ナグナスは盗賊のやつに仲間が死んだから戻れないと言った。死んだとしても時渡りの装置は残っているはずだろ?」
殺したから帰れないと思っていたトスマは、その考えがあったとはっとする。
「帰れない理由は、仲間が死んだからじゃない。現代に戻る装置がなくなったからじゃないのか?」
そこまででトスマは越時が言いたいことが分かった。
『じゃあその装置を盗んだのは!』
「そうだ。今未桜と一緒に過去に渡ったナグナス本人だ」
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