04 再会
「未桜! 言われた通り迎えに来たぜ!」
翔琉達の姿を見て未桜の胸に熱いものが流れる。
――来てくれた!
泣きそうになるのを誤魔化すようについ悪態をつく。
「遅いわよ!」
「いや、こっちではそんなに時間経ってないだろ」
まじめに応える翔琉に、「いや、そういう意味じゃないんだけど」と亘達は心の中で突っ込みを入れる。
ナグナスは未桜の前に出ると酷薄な笑みを浮かべた。
「やっぱり来やがったな」
「サラ! 大丈夫だから。こいつは私に――」
ナグナスは未桜の言葉を遮るように未桜の目を隠すように自分の手を翳す。すると未桜はすうと意識を失いその場に倒れた。
「余計なことを言うんじゃねえ」
その様子を見たサラが発狂寸前の声をあげる。
「未桜!」
そんなサラに苛つきながらナグナスは吐き捨てるように言う。
「ぎゃーぎゃーうるせえなあ。騒ぐな。ただ眠らせただけだ」
サラはキッとナグナスを睨む。
今は殺されていないが、今まで何人もの人間をためらいもなく殺してきた
どうにかして早く未桜をナグナスから取り返したいサラは、未桜へと駆け寄ろうと前へと踏み出す。だが、それをリュカがサラの腕を掴んで止めた。
「よせサラ。やられるのが関の山だ」
腕を払おうとしてもリュカの手はびくともしないため、振りほどくのを諦めサラはナグナスへ叫ぶ。
「未桜を返して!」
そんなサラをナグナスは、さも面白がり酷薄な笑みを浮かべる。
「どうしようかなー?」
「ふざけるな!」
そう叫んだのは翔琉だ。するとナグナスは笑顔を消し、憎悪の目を翔琉に向ける。
「やっぱお前は胸くそ悪いぜ。反吐が出る!」
するとシュラも翔琉の前に出て
「その言葉、そのまま返すぜ。お前を前にすると無性に怒りがこみ上げてくる!」
シュラが今までに見せたことがない怒りの気を纏う。過去の色々な出来事がシュラの中で渦巻いているのだろう。
「うるせえ! 黙れシュラ。お前も目障りだ!」
ナグナスは
「瘴気か」
リュカはサラの腕から手を離すと剣を出し、翔琉の前にいるシュラの横へと移動しながら、サラへと言う。
「サラ、瘴気を消せ」
「はい」
サラは胸の前に両手で玉を抱くような仕草をする。すると、そこに光の玉が現れた。それを瘴気に向かって放つと、一瞬にして充満していた瘴気が消滅した。
「ちっ! 浄化するか。うぜえ」
ナグナスはサラへと黒呪金剛杵を振り下ろす。刹那、サラは吹き飛ばされ壁に激突した。一瞬の出来事に皆驚く。
「サラ!」
すぐにトスマが駆け寄りサラを抱き起こす。
「大丈夫か?」
「は、はい」
だが、サラは体を強打したため立つことが出来ず顔を歪める。
するとナグナスはまた黒呪金剛杵を振った。今度は魔障と共に無数の黒煙の固まりが飛び散り、コウモリのような羽の生えた目が真っ黒な歪な生き物に変形する。それを見た翔琉はつい叫ぶ。
「げ! キモ!」
するとその生き物は翔琉達へと襲いかかってきた。だがトスマが防御結界を翔琉と亘にかけ防御。
シュラとリュカは、襲いかかってきた生き物を
「なんで斬れねえ!」
「どういうことだ?」
すると、トスマが叫ぶ。
「シュラ、リュカ、あれは
「
シュラとリュカは眉を潜める。初めて見るものだ。
「意識を持った呪いと言ったところじゃ。呪鬼を神気で斬るのじゃ」
「なるほど」
「そういうことか」
シュラは
すると3人の影がシュラとリュカの周りに現れた。トスマの部下で八将神のジエラ、クルラ、キサラだ。
「シュラ殿、リュカ殿、加勢する」
ジエラが代表して言うと呪鬼を次々と斬っていった。越時を怪我させたことへの復習と言ったところかとシュラとリュカは理解する。
「ありがてえ。頼むぜ」
「え? 誰? あいつら誰?」
始めて見るジエラ達に翔琉は驚き、首をキョロキョロさせる。
「うるさい翔琉! 早くこいつらをどうにかしろ! ナグナスが逃げるぞ!」
シュラの声ではっとしナグナスを見ると、意識のない未桜を脇に抱え裏口から外へと逃げようとしているところだった。
「未桜!」
翔琉は両手で複雑な印をふみ呟く。
「【
するとナグナスが光の縄で縛りあげられた。その拍子に未桜は脇から地面に落ちる。その隙にシュラがナグナスへ攻撃をし、リュカが未桜を抱き上げ後ろに飛び退いた。
「くそ!」
ナグナスはシュラの攻撃が届く前に束縛を外し黒呪金剛杵を振る。するとそこから大蛇が現れ、シュラへと口を開け襲いかかってきた。
「!」
シュラはすぐに剣を縦に構え、大蛇の口へ押し当て噛まれるのを回避する。だが大蛇の力を止めることは出来ず後ろに押し出され壁に激突。そのまま小屋の壁を破壊し大蛇と共に外へ放り出された。
「シュラ!」
リュカが叫ぶが、後ろから殺気を感じ振り向くと、ナグナスがリュカ目がけて剣を振り下ろしている姿だった。リュカはすぐさま頭の前に剣を突き出し防御。カキンと剣と剣がぶつかる音がした瞬間、リュカの脇腹に後ろから剣がグサっと音をたてて貫通、剣先がリュカの体を貫いていた。
「!」
何が起ったのか分からず首を後ろへと向けると、ナグナスが剣を持って後ろからリュカを刺していた。どういうことだとリュカは目を見開き、もう一度目の前で剣を交えている者を見る。そこには影だけのナグナスがいた。影で実体を作っていたようだ。
「分身か……」
「ふっ。その小娘は渡さねえ」
ナグナスは、リュカから未桜を奪うと剣を抜き一気に離れる。だがすぐ横目に光るものを感じたナグナスは振り向きざま剣を向けるが、腕ごと斬り落とされた。
「!」
切り落とした人物を見ると、亘だ。すぐに後ろに飛び退き間合いを取る。
「なぜ?」
ナグナスは困惑する。まず普通の人間がナグナスの腕を落とすほどの力はないはずなのだ。だがすぐにその理由を理解する。
「神通力の力か」
亘の細剣を見れば一目瞭然だった。剣がシュラ達と同じく白く光り、そして亘の目も光っているのが何よりも証拠だ。
「よくもリュカをやってくれたな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます