05 陰陽師の使役 十二天将
「あれは
「え? 朱雀って鳥じゃ?」
「その朱雀じゃないです。陰陽師が使う
昇はもう一度目を凝らして目の前の者を見る。顔が人間と鳥の合いの子のような顔だ。
「鳥人間?」
「陰陽師自身が作る使役ですので、その者によって姿と強さは違います」
「じゃああの朱雀は?」
「けっこう強いです」
その時だ。【
――どうする!
昇はキッと睨むのだった。
中に入った
「あれは陰陽師の使役の十二天将の
「まさか使役を配置してるとはなー。それに俺ら完璧にばれてるし。予定外だな。こりゃ生か死か2択になるはずだな」
依頼書に書かれていた言葉を思い出し嘆息すると、越時は右手をトスマに出す。
「トスマ、剣」
すると越時の手の平にレイピアのような細い剣が収まる。
「トスマ、あれは人間じゃないから思いっきりやってもいいよな」
「ああ。首を狙うのじゃ」
「了解。あの使役相手はちょっときついかなー。まあ大丈夫だと思うが、トスマ頼むぜ」
「まかせるのじゃ」
「いっちょ暴れますか」
越時はいっきに走り込み目の前の
「ふっ。さすが使役だねー」
越時は一気に
すると
――ち! このままじゃこの場所がやばい。
越時は右手で剣を振りながら左手で印を結ぶ。
「【
すると
そして一気に
「さすがじゃな」
「どうも」
その時だ。外の異変に気付き舌打ちする。
「越時!」
「ああ。外にもいやがったか」
「急げ越時。昇達が危ない」
越時は急いで牢の鍵を壊し、中で目隠しをされ腕を後ろで縛られている盗賊の男へと歩み寄り話かける。
「時渡りの者だ」
「!」
「今から縄をほどく。だが逃げるなよ。外にはここにいた恐ろしいやつよりももっと恐ろしいやつがいるからな。離れたら殺されるぞ」
男は何回も大きく頷く。所々怪我をしていることから、縛られる前に拷問を受けたのだろう。越時は男の手の縄を切り、目を塞いでいた手ぬぐいを取る。男は越時達を見て少し安堵したようで大きく息を吐いた。
「立てるな。一緒にここから出るぞ」
「あ、ああ」
越時を先頭に男が続き、最後にトスマが付いて行く。蔵の外に出ると、昇を背に庇いながらユウラが結界を張って防御に徹しているのが見えた。すぐさまトスマがその場から瞬時にユウラの前に入り込み、持っていた槍で朱雀へ攻撃をしかけた。気付いたユウラが叫ぶ。
「トスマ!」
「よく頑張った。まず怪我を治せ」
トスマの言葉にユウラは安堵し泣きそうな顔になり頷く。昇は驚き見るとユウラは腹に大きな傷を負っていた。
「ユウラ! お腹!」
「大丈夫です。このぐらいは平気です」
ユウらは手を腹に当て治癒する。するとゆっくりだが傷が塞がっていった。昇は安堵し前を見ると、朱雀とトスマの金属同士のぶつかる光しか確認することができなかった。
「すごい……」
見とれていると、何かに体を縛りあげられ塀の屋根の上から引きずり下ろされた。
「昇!」
すぐさまユウラは昇に防御壁をかける。そのおかげで昇は地面に直に叩きつけられることはなかった。ユウラはすぐさま昇を縛っている縄を真ん中から切り、昇の前に立ちはだかり声をかける。
「昇、大丈夫ですか?」
「う、うん」
すると暗闇から叫び声が聞こえ、人影が現れた。
「お前達は誰だ! 盗人か? それとも怨霊の類いか!」
見れば若い男性だ。服装から陰陽師のようだ。昇は両手をまだ縛られた状態のため、印が結べず能力を使うことが出来ない。
「覚悟しろ! 逃がしはせぬ! 成敗してくれる!」
「!」
陰陽師が印を結び紙を投げた。するとそこに二体の式神が現れた。その姿を見てユウラは声を上げる。
「あれは
そしてぎっと歯噛みする。
――2体を1度に! あの陰陽師強い。
それを見ていた越時は舌打ちし、隣の盗賊に言う。
「盗賊! そこを動くなよ!」
越時は駆け出し、昇の拘束を解く。
「【
すると昇の縄が消えた。同時にユウラが昇を抱き抱え、越時の後ろに下がる。
「越時さん!」
「昇、ユウラ、大丈夫か?」
「はい」
「大丈夫です」
「よし」
越時はトスマを横目で見る。まだトスマは
「くそ! さすがに俺でも戦闘に特化した式神2人相手をして3人を守るのは分が悪い。ユウラ! 昇と盗賊連れて逃げろ! 命令だ!」
「分かりました」
「越時さん?」
「昇! 口答えは否だ!」
「……はい」
昇はしぶしぶ納得する。この前で学習したことだ。
越時は左手の人差し指と中指を立て右手で複雑な印を結ぶ。
「【
すると陰陽師と十二天将は硬直し動かなくなった。それを見計らってユウラは昇の腰を持ち抱き抱え、盗賊の元へと走り、有無を言わせず盗賊も抱き抱え、その場に霧を発生させ一気に壁を越えて逃げた。
それを横目で確認し越時は安堵のため息をつく。
「逃げれたな」
そして目線を前に向ける。見れば、陰陽師の十二天将は拘束を外し陰陽師の拘束も外したところだった。それを透視で見ながら越時は奥歯をギッと噛み舌打ちする。
「やっぱ、すぐ外すよなー。まあ、あいつらを逃がすための時間があればよかったからいいけどよ」
ここまで濃い霧ならばユウラ達は逃げ切れるだろう。
「だが、もしもの時のために念は念を入れねえとな」
越時は屋敷全体に外に出れないよう結界を張る。
「!」
それに気付いた陰陽師が外そうとするが外れない。
「悪いな。この結界はある神からの直伝の特殊な結界だ。お前らでは外せねえよ」
すると十二天将達は一気に霧を吹き飛ばした。
「やはり霧も消せるのねー。さすが陰陽師の十二天将」
越時は鼻で笑うと、一気に十二天将の
「ありがてえ」
だがそれもつかの間だった。攻撃が続けば防御壁の強度も弱くなる。相手は疲れ知らずの使役だ。増してや2体。生身の人間の越時では分が悪い。徐々に越時は押され始め、体に当たる回数も増えてきた。そして、とうとう
「くっ!」
――やべえ、肋骨が折れた。
その時だ。目の前に一筋の光が見えた。越時を狙った
――ち! 避けきれねえ!
覚悟した瞬間、
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