02 フードの男
「4人だと?」
「ああ。4人だったぜ。一番後ろを走っていたやつはフードをかぶってたから顔は見えなかったが人間じゃなかった。シュラ達は見えてるだろ?」
「いや。俺らにも見えてない」
リュカの言葉に四天王達は頷く。
「リュカやシュラはともかく、僕とトスマに気付かれずに
ユウラは真剣な顔をして誰だと考察するように考え込む。
「なあユウラ」
「はい。なんですか? 翔琉」
「さっき俺らにしたのって、俺らがいることをばれないようにしたんだよな」
「はい。気配と姿が見えないようにしました。それが何か?」
「そのフードのやつが一瞬こっち見たような気がしたんだよな」
翔琉は他の者と格好が違う一番後ろを走っていたフードの男が気になり見ていた時、少し顔をあげた。暗さとフードで目はもちろん顔の表情もまったく見えなかったが、何故か目が合った気がしたのだ。
「そんなことはまずないと。僕のはリュカ達にも分からなく出来るほどのものです」
「じゃあ気のせいかもな。悪かったなユウラ」
「いえ。あちらも見えなくする能力が
翔琉は苦笑する。気を使ってユウラは言ったのだろうが、なぜか子供に気を使わせている感じがして変な気分だ。
ふと隣りのシュラを見ると、真剣な面持ちで下を向いている。こういう時、すぐに揶揄してくるものだと思っていたため意外だと首を傾げる。
「シュラ? どうした?」
「ん? あ、ああ悪い。考え事。気にするな」
「?」
すると
「じゃあ俺らも後を追うぞ」
そして皆、『ブラックカイト』が逃げて行った方へと歩き出す。
『シュラ。フードの男は……』
リュカがテレパシーでシュラへと話しかけてきた。
『リュカも思ったか』
『ああ。思い当たるのが1人しかいないからな』
『いるわけがない。あいつは300年前に俺が消したはずだ』
『だが能力が合致している』
『あいつは俺が
『本当は生きていたとしたら?』
『あれ以来目撃はされていない。いるはずないんだ』
『それは翔琉がいなかったからだとしたら? あの者は翔琉しか見ることが出来ないのだ。気付かれないのは当たり前だ』
シュラの顔が険しくなる。
『それに翔琉と目が合ったと言った。俺達がいることも翔琉がいることも分かっているということだ』
『――』
『お前の気持ちも分かるが、翔琉がこの世に生を受けたことを考えれば、あの者が動き出したことも頷ける』
シュラは拳を握り奥歯をぎっと噛む。
『もしあいつだとしたら――』
『シュラ。今は怒りの感情を抑えろ』
『だがまた!』
シュラの感情に気付いたトスマが加わってきた。
『シュラ。感情がむき出しだ。冷静になれ』
『――』
『焦るのではない。まず成り行きを見定めることだ』
『…………』
『また同じことを繰り返さないためにも見定めなくてはならぬ』
シュラは大きく深呼吸をし流行る気持ちを落ち着かせる。
『そうだな。悪かったな。で、トスマ』
『なんだ?』
『本性が出てるぞ。言葉使いが素になってるぜ』
するとトスマは、気付かなかったようで目を見開く。
『おっと、わしとしたことが。柄にもなくわしも冷静さを欠いておったようじゃ』
『そのじじいキャラ、いい加減やめたらどうだ?』
『同感だ』
リュカも呆れ気味に賛同する。だがトスマは首を横に振る。
『それは聞けぬな。けっこうわしは気に入っておるのじゃ』
『そうかよ』
『悪趣味だな』
しばらくすると、鬱蒼とした森を抜け、辺りが開けた場所に出た。そこは窃盗犯が逃げ込んだと思われる村が一望出来る小山の頂上だった。翔琉達は見つからないように這いつくばり様子を伺う。その光景を見て翔琉は目を細める。どう見ても廃墟だったのだ。
「誰も住んでないよな? 戦でもあったのか?」
崩れかけた家屋や動物を飼っていたであろう小屋、放置されたままの農道具、ほとんどの場所は荒れ放題で草も生え人一人住んでいる様子がまったくない。だが火災があったわけでもなさそうだ。
「あの村は疫病が発生したのだろう」
越時は村の状況を見て言う。
「疫病ってウイルスとかか?」
「ああ。この時代で疫病が発生すれば、瞬く間に村全部に広がる。ウイルスというものが存在することも知らない時代だ。ましてや治す薬などない。悪魔や妖怪の類いの仕業だと皆思っている。だとすれば、もし原因不明の症状が現れれば、この村は呪われているとなり隔離され、一切村の外にも出してもらえず水も食料も与えられない。そうなれば、自然と病気か飢えで死ぬしかなくなる。最後はあのように廃墟化するんだ。そして1度疫病が流行った村など誰も近寄らない。家具や金になる物など取りたい放題だ。窃盗グループにしてみれば格好の隠れ家だな」
すると越時の目が銀色に光る。翔琉は驚いていると、亘が説明した。
「親父の透視能力だ」
「俺の
「ちゃうわ。あほ」
シュラがすぐさま突っ込む。
「越時のは物を透かす能力だ。遠い場所も透視が出来る特技もある。お前のは物や人の本質を見ぬく力だ。まったく別物だ」
「越時、気をつけるのじゃ。下手に近づけばフードのやつに気付かれる」
トスマが越時に言う。
「ああ。分かってる。気付かれないように遠くから探るだけだ」
少しすると越時の透視が終わったようだ。
「あの一番大きな屋敷跡に4人いたな。翔琉の言う通り一人はフードをかぶった男だ。遠くからしか確認出来なかったから顔とかはわからなかった」
「親父、どうするんだ? 計画変更か?」
「そうだな。変更したほうがいいな。さっきフードのやつを見たが、翔琉の言う通りあれは人間ではない」
「おっちゃん、やっぱりそうだよな? あれ人間じゃねえよな?」
翔琉は自分の考えが正しかったことに声を弾ませる。
「ああ。だがトスマ達守護神の天部の部類ではない。だが悪魔の
「両方?」
「ああ。だからフードのやつの対処を考えなくてはならん。トスマ、リュカ、シュラ、亘、ちょっとこっちに来てくれ」
越時は前衛隊だけで会議だと言って翔琉達から離れた。
そして越時はシュラ達守護神へと尋ねる。
「トスマ、シュラ、リュカ、あのフードは何者だ」
いつもと違う神経を尖らせ睨みをきかせた越時に亘は眉間に皺を寄せる。
「親父?」
「翔琉達の前では言えなかったが、ありゃ今まであったやつの中で一番危険だ。俺の本能が警告鳴らしてるんだよ」
そして越時は睨むようにシュラ達見渡す。
「それに、あのフードの男、お前ら知ってるだろ。答えろ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます