11 曼荼羅魔法陣



『翔琉、お前今俺が見えているのか?』

「!」


 そこにいた者全員驚き翔琉に視線を向けた。

 シュラ達守護神は現代では基本姿は見せない。幽霊の類いと違ってシュラ達は翔琉達がいる空間と違う天部に近い空間にいるのだ。だから普通は姿が見えないはずなのだ。


「え? ああ。最初は見えなかったから見えるようにしただけだけど。みんな見えてないのか?」


「あんただけよ。普通見えないわよ。サラ達がいる空間は違うんだから」


 未桜は目を眇めて得体の知れない生き物を見るように翔琉を見る。


「え? そうなのか?」


『だからですわね。さっき私と目が合ってましたから、そうなのかと』


 サラは片手を顎にあてて首を傾げ微笑む。


『へえ、やるじゃねえか。さすがだな』

『なるほど。翔琉も強ち【きのえ】の順位を上げた要因のようだな』


 シュラとリュカの呟きは翔琉には聞こえていなかったため意味が分からず眉間に皺を寄せる。


「おまえら何ぶつぶつ言ってるんだ?」


「お待たせー」


 すると、ちょうど奥の部屋から越時えつときが僧侶の格好をしてやってきた。


「おっちゃん、なんだ? その僧侶の格好は」


 首には大きな数珠をつけ錫杖を持っている。どうみても怪しい僧侶だ。


「高貴な僧侶に見えるだろう」


 どうだという感じで腰に手をあて自慢げに胸をはる。


「ただの怪しい僧侶にしか見えねえけどな」

「確かに。偽物感が半端ないわ」


 未桜もさすがにその格好はどうなのかと翔琉に賛同する。


「お前ら分かってないなー。この時代の高貴な僧侶の格好はこれなんだよ」

「なんで僧侶の格好? うち神社だよな」

「何かと修行僧というていの方が動きやすいし怪しまれないんだよ。お前らは高貴な俺の弟子という設定だ。だからお前らもほれ、香里奈から数珠もらって首にかけるなり手につけるなりしろよ」


 翔琉達は香里奈から数珠を受け取り首にかける。


「翔琉、きのう渡したスマホは持ってるな」

「ああ」


 翔琉は袴のポケットからスマホを取り出す。これからは普段からこのスマホを使えと、先週越時から渡されたのだ。言われた通り今まで使っていたスマホからデータを移行した。


「なんでこのスマホにしないとだめなんだ?」


 見た目や機能的には今まで使っていたスマホとなんら変わりがない。


「これはスマホの機能の他にタイムスリップ発動装置の機能がついている」

「この曼荼羅のアプリがそうか?」


 スマホの画面にある曼荼羅の柄がかかれたアプリらしきものを差す。押しても何も反応しないため気にはなっていたアプリだ。


「そうだ。この曼荼羅のボタンは魔法陣を自動で出現させるものだ。現代では緊急以外は使わない。時渡りをするには特殊な曼荼羅魔法陣を描かなければ過去にも行けないし現代にも戻って来れない。行きは元々書いてある曼荼羅魔法陣を使えばいいが、帰りは毎回複雑な魔法陣を書いてはおれない。でだ、この曼荼羅のボタンを押せば曼荼羅魔法陣が簡単に現れる仕組みだ」


 だから亘が江戸時代に迎えに来た時スマホを操作していたのかと今になってやっと理由が分かった。


「じゃあそろそろ行くぞー。こっちだ」


 そして隣りの部屋――ご神体の真下になる部屋へと入る。そこは何1つ置いてない殺風景な部屋だった。ただ床に魔法陣のような図が書いてあり光っていた。これがさっき言っていた曼荼羅魔法陣なのだと翔琉は理解する。


「この曼荼羅魔法陣と時を司る神の力を借りて過去へ行く。基本行きはここから行く」


 そう言えばと翔琉は自分が時渡りをした時のことを思い出す。


「なあ、俺が一人で時渡りした時は亘はここからきたのか?」

「いや、あの時は急を要してたからな。あの場からこのスマホを使って飛んだ」

「行きも? ボタン押せないのにどうやって行くんだ?」

「この曼荼羅のボタンを長押しして画面上で五芒星を描くと発動する。だがこれは本当に緊急時のみ使うものだ。この場所の曼荼羅魔法陣は時を司る神の力が作用しているから俺らへの負担はない。だがスマホでの往復移動は時を司る神の力がない状態のため自分自身の時渡りの力を使っての移動になるため負担が大きいんだ。だから緊急を要する時のみ使うのが基本だ」

「だからあの時亘は、現代に戻ってからふらついていたのか」

「ああ」

「なあ、でもよく場所と時間がわかったな」


 そこまで言ってあることに気付く。時を司る神から許可をもらっていない翔琉の場所と時間は正確ではないはずだ。


「どうやってわかったんだ?……」


 恐る恐る聞く。嫌な予感しかしない。


「分からなかったさ。まあそのスマホを持っていたからある程度の場所と時間は分かった。そのスマホには年代位置情報システムが付いてるからな。後は小さな村だったから1軒1軒回って見つけたってやつだな」

「じゃあずっと……」

「ああ。村中探し回ったなー」


 亘は翔琉を見つけるためずっと探し回っていたのだ。すぐ帰れたということは3時間は経っていたということになる。ならば相当疲れていたはずだ。だがそれを表には出さず翔琉にも一言も文句を言わなかったのだ。感極まり翔琉は亘に抱きつく。


「お、おい。翔琉?」

「ありがとな。亘。それに悪かったな」


 理由はともあれ自分のせいで亘に負担をかけてしまったことに罪悪感を感じずにはいられない。


「気にするな。少しふらついただけだから。分かったから離れろ」


 亘は強引に翔琉を自分から離す。


『亘だからあのくらいですんだが、他の者なら気を失っていただろう。今度から気をつけろ』


 リュカが感情のない声音で言うのを見て翔琉は背筋に冷たいものを感じる。


「リュカの目が据わってるし言い方もきついのは気のせいかな」


 いや、どうみておもリュカの機嫌が悪いし殺気立っている。


『よく分かったな。リュカは亘の守護神だ。こいつ、亘を危険な目に遭わせるやつは徹底的に敵視するからな。まあ今回は翔琉がわざとじゃないことも分かっているから面と向かって文句が言えないだけだ。怒りと理性が入り交じっている状態ってとこか』

『シュラ、うるさいぞ』


 リュカはシュラを睨む。否定しないということは図星か。


「ご丁寧に説明してくれてありがとう、シュラ」


 余計なことを教えてくれなくてもいいのにと翔琉は抗議の目をシュラに向けるが、シュラはクスクス笑っている。楽しんでいるのが丸見えだ。


「じゃあ行くぞ。定位置がある。翔琉が北、昇は西だ。亘は東、俺が南西、未桜が南東の場所だ」


 皆、定位置に立つ。


「何で場所が決まっているんだ?」

「お前達の守護神四天王が守る方角だ。その場所に立つことによって時を司る神からの力を受け取りやすくなる」


 確かに翔琉達と重なるようにシュラ、リュカ、ユウラ、トスマが重なって立っていた。


「じゃあ行くぞ」


 最後に越時が立った時が発動開始だった。

 曼荼羅魔法陣が光りだし、同時に見えない上空から光りが降り注ぐ。その光こそが時を司る神からの力なのだと翔琉は分かった。刹那、翔琉達はその場から消えた。





――――――――――――――――――――――――――――――

 こちらを見つけていただきありがとうございます。

 そしてここまで読み進めていただきありがとうございます。


 今回で第1章が終わりです。

 

 特殊だったので、ちょっと説明ぎみになってしまい反省。


 ですが、第2章からはトントン拍子で話が進んで行く予定です。

 続きも読んでいただけたら嬉しいです。


 少しでも面白いと思っていただけたなら、ブックマーク、そして☆評価やレビー、コメントをしていただけると、キャホーと飛び上がるほど嬉しいです(≧∀≦)


 どうぞよろしくお願いします。


    

              碧心☆あおしん☆

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